詩の図書館

はじめまして。世界の詩や、詩的な文章を紹介しています。本を立ち読みするように、おくつろ…

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はじめまして。世界の詩や、詩的な文章を紹介しています。本を立ち読みするように、おくつろぎください。 朝には非日常への旅を、夜には心の安らぎを届けたいと思います。

マガジン

  • 中国の知恵『菜根譚』を読む

    中国の明の時代に書かれた、人生訓の書物『菜根譚』の紹介です。現代語訳はオリジナルでつけています。儒教と老荘思想と、唐詩のような風雅な心が一体となった、味わい深い本です。

  • 人間は「考える葦」であると書いたパスカルの世界観

    パスカルは『パンセ』(瞑想録)で有名な17世紀フランスの哲学者です。祖国が内戦をするなかで、人間社会のむなしさに向き合い、そこから真理を求めて「考える」ことに希望と祈りを見出しました。

  • インディアンのハート

    インディアン(アメリカ先住民、ネイティブ・アメリカン)の心を伝える記事を集めます。詩や思想、伝統にかかわる話など。

  • ミヒャエル・エンデの『モモ』- 「時間」を取り戻しに行く

    ミヒャエル・エンデの児童文学とも言われる代表作『モモ』を紹介する連載です。あらすじと印象的な台詞、文章。「時間とは、生きるということ、そのものなのです。そして人のいのちは心を住みかとしているのです。」この物語は現代の危険とそれに立ち向かう創造性あふれる心を描いています。

  • 沈黙の世界──ことばの生まれ出づる処

    マックス・ピカートの『沈黙の世界』は、「沈黙」や静寂の持つ意味を根っこから考え抜いた本です。それはこの世界の奥底に、そして言葉が生まれる苗床として、「沈黙 silence」を置く詩的な思想でした。

最近の記事

ゲーテの大作『ファウスト』 - 努め励む者の冒険

今回は、ドイツの大詩人ゲーテ(1749 - 1832)が残した最大の作品『ファウスト』のあらすじと冒頭、ラストを紹介します。 ファウストの話は、中世ドイツに遡る伝説です。ファウスト博士は悪魔のメフィストフェレスと契約を結び、世界の暗い側面に入っていきます。 これを18世紀〜19世紀に戯曲風の詩作品として、新しい形で完成させたのがゲーテの『ファウスト』でした。 キリスト教の神様から、ドイツの街角、古代ギリシアの英雄たちまで勢揃いする壮大な物語です。 冒頭には、「天上の序

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    • 自然に根ざした生き方の知恵

      1970-80年代にアメリカを放浪し、ネイティブアメリカンに教えを受けた北山耕平さんの本、『自然のレッスン』を紹介します。 自然に根ざした生き方の知恵が具体的に書かれています。初版は1986年。 冒頭、 とあります。日本での日常にも活かせます。 太字は小見出しのように付されたタイトルです。 朝、洗面台で笑うのもよいでしょう。 ミラー・ニューロンの効果で、ひとの笑い顔を見るのはよいそうですから、鏡に映る自分の笑顔だってよいのではないでしょうか。 緑のあるところにで

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      • フランクル医師が見つけた生の転換 - 人生からの問いかけ

        アウシュヴィッツ強制収容所の体験を綴った『夜と霧』でも有名な精神科医、V.E.フランクルのよく知られた言葉を紹介します。 彼はある発見を人生における「コペルニクス的」転回と呼びます。 これは精神科医であり、思想家でもあるフランクルの重要な発見でした。では、どういう意味でしょうか? 少し遡って見てみましょう。 もともと、フランクルは精神科医として仕事をしていましたが、ユダヤ人であり、第二次大戦中には、ドイツのナチスによって強制収容所に入れられます。 その回顧録が『夜と霧

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        • 岡本敏子と岡本太郎、ふたりの『愛する言葉』

          岡本太郎はとくに「太陽の塔」で有名な芸術家です。その妻として、また秘書として太郎の人生に50年間伴走したのが岡本敏子でした。 この記事で紹介するのは『愛する言葉』という本です。この本は、ふたりの著作やインタビューから、素敵な言葉を集めたアンソロジーです。ちなみに、ふたりの甥っ子が編集を務めています。 目次より前の「扉」にある言葉はこうです。 真っ直ぐな情熱に貫かれた本です。 見開きごとに、ふたりの言葉や写真が並ぶのですが、敏子さんの言葉の方が数が多いです。本ではふたり

        ゲーテの大作『ファウスト』 - 努め励む者の冒険

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        • 中国の知恵『菜根譚』を読む
          3本
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        • 人間は「考える葦」であると書いたパスカルの世界観
          3本
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        • インディアンのハート
          1本
        • ミヒャエル・エンデの『モモ』- 「時間」を取り戻しに行く
          16本
        • 沈黙の世界──ことばの生まれ出づる処
          7本
        • 神に呼びかけるタゴールの詩
          5本

        記事

          臨床ってなんだろう? 心理療法家の河合隼雄さんと考える教育

          河合隼雄さんは日本の心理療法家、また臨床にもとづく思想家として第一人者でした。 今回は、河合隼雄さんの著書『子供と学校』から、「臨床とはなにか」「教育ってなんだろう?」を考えてみます。 河合隼雄さんは、子どもに心理療法をするうちに、教育の現場で「心」が軽視され、「問題」が起こったら罰すればいい、となっていることに気づきます。 そこから、ご自分の仕事の意味(今で言うカウンセリングに当たる)を考えます。 それを教育に適用してみると、 しかし、健康や仕事がどうでもいい、と

          臨床ってなんだろう? 心理療法家の河合隼雄さんと考える教育

          大自然のなかの歌 - アメリカ先住民の詩

          アメリカ先住民(ネイティブ・アメリカン、インディアン)に伝わる詩を紹介します。 大自然と日常に根ざした歌です。 これは岩に語りかける詩でした。 下のふたつは詩の断片です。 次の詩は、散文のようですが、神話を語っているようでもあります。 アメリカ先住民には、トーテム(祖先としての動物)を持つ文化があります。 次は「夜明けの歌」です。エスキモー(イヌイット)に伝わります。 また、テトン・スー族のうたより。 アメリカ先住民にとって「石」は、大事なものです。大地とともに

          大自然のなかの歌 - アメリカ先住民の詩

          絵本 らっこちゃん

          0才から楽しめる絵本『らっこちゃん』の紹介です。 ゆるいキャラクターのようにもみえる「らっこちゃん」が、見開きごとになにかしています。 上は貝を食べています。 なにもしていない絵もあります。 しっかりしたタッチで、可愛らしく描かれています。1歳児から楽しめるでしょう。 『らっこちゃん』MAYA MAXX 絵・文 福音館書店

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          セネカの言葉

          古代ローマの哲人 セネカ * セネカは哲学者であり、政治にも関わった。上は哲学的な格言。

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          思考する精神の高さ - パスカル『パンセ』(3)

          17世紀フランスの哲学者、パスカルの『パンセ』(瞑想録)を読む第3回です。 第1回では、「人間は考える葦である」という有名なフレーズを見ました。 その後、パスカルがいかに現世のむなしさに愕然としていたかを見ました。 しかし、その逆境においてこそ、パスカルは真理の探求に踏み出すのでした。 私たちは思考する力、つまり西洋の言う「理性」によって、真理へと歩めます。

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          思考する精神の高さ - パスカル『パンセ』(3)

          思考する精神の高さ - パスカル『パンセ』(2)

          前回は、パスカルの名著『パンセ』(瞑想録)から、有名な一節を見ました。「人間は考える葦である」の言葉です。 さて、パスカルは地上的な救いのなさに失望し、キリスト教の神を求めたのでした。 その信仰に至る過程で、パスカルは現世のこと、社会のこと、そこに見られる人間の「ダメさ加減」を思考しました。 この「考える」ことのつらさと苦しさを通じて、パスカルは信仰を確かなものにしたのでしょう。 「気晴らし」はパスカル哲学のキーワードです。 地上の人間は、むなしい苦労に耐えられない

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          思考する精神の高さ - パスカル『パンセ』(2)

          思考する精神の高さ - パスカル『パンセ』(1)

          17世紀のフランスを生きた哲学者パスカルの『パンセ』(瞑想録)より、引用します。この本は思考の断片を集めた遺稿集です。 まずは、人間を一本の葦(あし)にたとえた、一番有名な言葉から。葦は水辺の草ですね。 人間は、物理的には弱い存在です。また、小さい存在です。しかし、人間は「考える」ことができるとパスカルは説きます。 人間は「考える」ことによって、力ある自然よりも、豊かであり、尊厳を持ちうる、とパスカルは言います。考えることによって、より高く生きることができるのです。

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          思考する精神の高さ - パスカル『パンセ』(1)

          ターシャが思うこと、子供たちへ

          絵本作家であり、ガーデニングで有名なターシャ・テューダーの語りを収めた本、『思うとおりに歩めばいいのよ』から引用します。 実はターシャも都市生活を経験して、絵本作家、挿絵画家、児童文学作家として若い頃から活躍していました。 50代半ばでバーモント州の自然の多い土地に引っ越し、息子の力を借りて古い建築法で家を建て、造園をはじめました。この庭仕事が、日本ではとくに有名になっています。 丁寧な暮らしをしたターシャ一家です。 次の言葉は、子どもたちのことを考えて。 ターシャは

          ターシャが思うこと、子供たちへ

          人生の教えを噛みしめる - 菜根譚(3)

          中国の古典『菜根譚』には人生の知恵が詰まっています。 この本は天地や自然の例えを引きながら、ひとの世の生き方を綴っています。根菜のように味わい深い教え、心身を養う言葉という趣旨で『菜根譚』と名づけられています。 以下、オリジナルの現代語訳で引用します。(訳し方や解説については第1回記事の冒頭をご覧ください。) 宇宙や自然の運行と、ひとの心の奥深さを並列するところに『菜根譚』の特徴があります。この本の面目躍如です。

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          人生の教えを噛みしめる - 菜根譚(3)

          人生の教えを噛みしめる - 『菜根譚』(2)

          中国の古典、『菜根譚』は人生の知恵をたとえ話で説く親しみやすい書物です。それと同時に、たとえ話に壮大さのある柄の大きな本です。 こちら第1回の続きです。「詩の図書館」オリジナルの現代語訳でお読みください。(オリジナル訳の仕方については第1回記事の冒頭をご覧ください。) 努力して時間をかけないと、幸福も知も身にならないということですね。じっくりと人間を磨くように促されます。 こういう処世術も顔を覗かせるところが、『菜根譚』の面白さです。 「独りで籠もって徳を積め」とは言

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          人生の教えを噛みしめる - 『菜根譚』(2)

          人生の教えをよく噛みしめる - 菜根譚(1)

          『菜根譚(さいこんたん)』は中国、明代の古典です。洪自誠という著者が、儒教、仏教、道教といった教えを合わせた人生訓を編みました。 「野菜、根菜をよく噛んで食べるように、栄養のある言葉を味わおう」という考えから、「菜根譚」と名づけられたようです。 では、『菜根譚』から現代語訳で引用します。 (以下の現代語訳は、「詩の図書館」オリジナルです。ただし、岩波文庫の『菜根譚』(今井宇三郎訳注 1975)をおおいに参考にしています。引用に付されたページ数は、岩波文庫に即しています。

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          人生の教えをよく噛みしめる - 菜根譚(1)

          元気が出るゲーテの名言たち - 『ゲーテ格言集』(新潮文庫)

          ドイツの文豪ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ(1749-1832)の名言を引いてみます。 人間のあやまちこそ人間をほんとうに愛すべきものにする。 正しければ愛されるわけではない、ということですね。 人間は、なんと知ることの早く、おこなうことの遅い生き物だろう! ゲーテは「おこない」、つまり行動することを大変、大切にしていました。 誠実に君の時間を利用せよ! 何かを理解しようと思ったら、遠くを探すな。 堅実なあり方です。 財貨を失ったのは──いくらか失ったことだ!

          元気が出るゲーテの名言たち - 『ゲーテ格言集』(新潮文庫)