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人生の教えを噛みしめる - 菜根譚(3)

中国の古典『菜根譚』には人生の知恵が詰まっています。

この本は天地や自然の例えを引きながら、ひとの世の生き方を綴っています。根菜のように味わい深い教え、心身を養う言葉という趣旨で『菜根譚さいこんたん』と名づけられています。

以下、オリジナルの現代語訳で引用します。(訳し方や解説については第1回記事の冒頭をご覧ください。)

ひとの心は、すなわち宇宙である。喜びの心は吉兆の星、めでたい雲。怒りの心は暴風雨と雷。慈しみの心は穏やかな風と甘い露。厳しい心は炎天下や固い霜。どれもなしでは済まない。ただなるがままに起こっては消えていく。そこに障りがなく天空のように広ければ、それは宇宙の根源である太極と同じ。宇宙もひとの心もそうだ。

『菜根譚』岩波文庫 pp.184-185

宇宙や自然の運行と、ひとの心の奥深さを並列するところに『菜根譚』の特徴があります。この本の面目躍如です。

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