沈黙の世界(1)──マックス・ピカートの『沈黙の世界』
マックス・ピカート著『沈黙の世界』(原著 1948)は、この世界の根源に「沈黙」があると考える哲学書です。
ラジオの登場や都市に騒音があふれるなか、ピカートは慎重に、かつ詩的に「沈黙」とはなにかを解き明かします。
まず、もし沈黙が根源的なものだとすれば、それを言葉で言い表せるのでしょうか。
しかし、沈黙を一つの存在なきもの、一つの空無として解するときにのみ、それは不思議に思われるにすぎない。
だが、沈黙は一つの存在せるもの、一つの生きてはたらいている現実なのであって、