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神に呼びかけるタゴールの詩

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インドの詩人、ラビンドラナート・タゴールの詩を集めました。『ギーターンジャリ』より引用し、テーマごとに紹介しています。
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記事一覧

『ギーターンジャリ(歌の捧げもの)』タゴールの詩(5)旅立ちの歌

『ギーターンジャリ(歌の捧げもの)』タゴールの詩(5)旅立ちの歌

インドの詩人、タゴールの詩を紹介するシリーズ。5回目は旅を思う歌を集めました。

歓喜(よろこび)の海路(うみぢ)より
 今日 寄する沖つ波
皆人よ 今 櫂(かい)取りて 漕ぎ出(い)でな
 皆人よ 出で立たな

浄く真白き帆に孕(はら)む
美(うま)し微風(そよかぜ)

後方(しりへ)に騒ぐ波の音
 高鳴る大空
面(おも)に さし来る 朝日影

船出の情景です。

遠方(をちかた)に 眼を見開き

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『ギーターンジャリ(歌の捧げもの)』タゴールの詩(4)もの思いの歌

『ギーターンジャリ(歌の捧げもの)』タゴールの詩(4)もの思いの歌

インドの詩人、タゴールの詩を紹介するシリーズ。4回目は暗くもの思う歌を集めました。

咽喉(のんど)に 歌を求めて 空し
 言ふ術(すべ)知らに 口吃(ごも)る
 詮方(せんかた)なし わが生命(いのち) 泣く
 君 われに わなをかけ
  われを包む 歌の網に

歌の師である神に呼びかけようとも、歌を編めずに悔やむタゴールです。

わが心 固陋(かたくな)なれば
君 寄りますに相応(ふさは)ねど

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『ギーターンジャリ(歌の捧げもの)』タゴールの詩(3)歓喜(よろこび)の歌

『ギーターンジャリ(歌の捧げもの)』タゴールの詩(3)歓喜(よろこび)の歌

インドの詩人、タゴールの詩の紹介です。

今回は、タゴールの詩のうちでもとくに喜び、遊戯、光について歌ったものを引用します。

師よ 如何(いか)に唄ひたまふや
 口つぐみ ただわれは聴く
歌の光明(ひかり) 地(つち)を 掩(おほ)ひ
歌の息吹 天(そら)に 漂ふ

いざ われも ともに唄はむ

来ませ いざ 天霧(あまぎ)らひ
 雨降らす雲──
翠(みどり)濃き 大恵みもて
 来ませ この生命

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『ギーターンジャリ(歌の捧げもの)』タゴールの詩(2)

『ギーターンジャリ(歌の捧げもの)』タゴールの詩(2)

インドの詩人、タゴールの詩を紹介します。

敬虔な心で、インドの神に深い敬愛の念を示す詩集『ギーターンジャリ(歌の捧げもの)』より、一篇の一部を引用します。

織るや 真薦(まこも)の玉蓆(たまむしろ)
 編むや しうりの花かづら
新草(にいくさ)の 初穂をとりて
 籠(こ)を作り来ぬ
来ませ 秋の女神(めのかみ)
 白雲の車 召し
来ませ 浄き蒼天(あおぞら)より

「来ませ」の呼びかけがくり返

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『ギーターンジャリ(歌の捧げもの)』タゴールの詩(1)敬虔な呼びかけ

『ギーターンジャリ(歌の捧げもの)』タゴールの詩(1)敬虔な呼びかけ

インドの詩人であり、1913年にアジアで初めてノーベル文学賞を受賞したラビンドラナート・タゴールの詩を紹介します。

『ギーターンジャリ(歌の捧げもの)』(ベンガル語本)より。
神に捧げられた歌といえます。

わが頭(かうべ) 垂れさせたまへ 君が
み足の 塵のもと

請(こ)はずとも われに賜(たま)はる
虚空(そら) 光明(ひかり) 身 心 生命
日に日に われにもたらす
この大恵みに ふさは

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