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『ギーターンジャリ(歌の捧げもの)』タゴールの詩(1)敬虔な呼びかけ

インドの詩人であり、1913年にアジアで初めてノーベル文学賞を受賞したラビンドラナート・タゴールの詩を紹介します。

『ギーターンジャリ(歌の捧げもの)』(ベンガル語本)より。
神に捧げられた歌といえます。

わが頭(かうべ) 垂れさせたまへ 君が
み足の 塵のもと
請(こ)はずとも われに賜(たま)はる
虚空(そら) 光明(ひかり) 身 心 生命
日に日に われにもたらす
この大恵みに ふさはしく
われ まま怠り まま離(さか)る
君の道を 目指しつつ──
何時(いつ) 何処(いづく)にも
永遠(とは)の生命(いのち)に親しむ君
ものみな知ります
幸なきに 守りませとは
われ祈らず
わが胸の奥 顕はしませ
奥のその奥
汚れなく 輝きて
麗はしくこそ
愛と生命と歌と香と光明と鼓動(ときめき)に
遍(あまね)く満つる天界地界(あめつち)に
君 新た新たの相(すがた)して 来ませ 生命に
来ませ 香に 色に 来ませ 歌に
来ませ 身に 鼓動の触れあひに
来ませ 心の甘露の笑(ゑみ)に

これは冒頭の一篇から引いています。

インドには多くの神々がおり、宗派も信仰もたくさんの種類があります。そんななか、タゴールは不思議と一神教ように、ただ一人の神の足元にひれふすような歌を歌います。

「新た新たの相(すがた)して」という一節からは、万物の変化──朝日や緑や土の色など、さまざまなもののなかに神の現れを見ている印象を受けます。

敬虔な歌声です。


『タゴール詩集 ギーターンジャリ』渡辺照宏訳 岩波文庫


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