思考する精神の高さ - パスカル『パンセ』(1)
17世紀のフランスを生きた哲学者パスカルの『パンセ』(瞑想録)より、引用します。この本は思考の断片を集めた遺稿集です。
まずは、人間を一本の葦(あし)にたとえた、一番有名な言葉から。葦は水辺の草ですね。
人間は、物理的には弱い存在です。また、小さい存在です。しかし、人間は「考える」ことができるとパスカルは説きます。
人間は「考える」ことによって、力ある自然よりも、豊かであり、尊厳を持ちうる、とパスカルは言います。考えることによって、より高く生きることができるのです。
しかし、パスカルは「人間は思考できるから、とても偉い。万能だ」と言いたいのではありません。
パスカルの根源にあるのはこの畏れでした。それは宗教的な深淵であり、その畏怖から、パスカルは神を求めます。
「それ」と言われているのは、救いであり神でしょう。
パスカルは、キリスト教のジャンセニスム(カトリックの一宗派)を信仰していました。
つまり、「考える」ことができるからと言って、人間は自然や運命よりも偉い、万物の王だとはパスカルは考えません。
むしろ、人間がいかに弱く、もろく、世界は恐ろしいかを知っていたから、思考を通じての、信仰の重要さを実感していたのです。
事実、パスカルが生きたのは内乱の時代でした。
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