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海外生活振り返り日記-ニュージーランド前編-#21

Nearly… Almost … 念願の…?

 昔から本屋で何の本だかわからないけどただかわいいとか素敵だなと思う本があると、英語で読めなくても内容がよく分からなくても買ってしまう癖がある。
写真集とかイラスト集とかとにかく見た目で良いなと思うと買って集めてしまう。ただパラパラと眺めるのだけで満足するので、買ってもその後その本が何の本なのか調べることもない。
 もう10年以上前の学生時代、偶然東京の古本屋さんでジャケ買いした文庫本がある。表紙は海辺にピアノが置いてありその上に少女が乗っていて側に黒い服を着た女性が立っている。ちょっと不思議な表紙でピアノレッスンと書いてあった。その時はそれが何なのかすら分からなかったが、ニュージーランドに行くと決めてからニュージーランドについて色々と調べていたら偶然その写真を目にした。それはニュージーランドで撮影された映画の紹介で、そこにあの印象的な表紙と同じ画像が載っていた。これって映画だったんだ、とその時初めて知り、何かの縁だと思ってその映画を借りた。映画の内容はあまり覚えていないが流れている音楽がなんだか切ない感じの美しいピアノの曲で素敵だった。浜辺で白い服を着た女の子が踊っているシーンが印象的で、ただの海なんだけどちょっと行ってみたいなと思っていた。
 後で調べたらその浜辺はオークランドから車で40分くらいで行けるカレカレ・ビーチという場所で、いつかレンタカーでも借りて行けたらなと考えていた。

 前置きが長くなったが、私の通っていた学校には自由参加のアクテビティーがある。学校内に旅行会社が入っていて、学校のパソコン室の掲示板にいつもツアーのチラシが掲載されていた。学校帰りに行って日帰りで帰ってこられる小旅行から1週間程かけて南島を回るツアーまで色々とあり私も在学中いくつか参加した。
 ある日念願だったカレカレ・ビーチの近くのピハ・ビーチツアーが掲載されていた。二つとも隣同士で近いのだがピハ・ビーチの方が有名らしく、カレカレ・ビーチはツアーには入れてないらしい。ホームステイ先のジェーンとグレンにカレカレ・ビーチに行きたかったんだけどなとぼやくと「どっちも同じだよ。ピハの方が大きいし有名だから行ってきな」と言われた。夕方やってるテレビでもよくピハ・ビーチが映っていたし、皆、何でカレカレ・ビーチなんてマイナーな所に行きたいんだ?とでも言ってるかのような口ぶりだ。因みにピハ・ビーチはテレビで観る限りサーフィン向けの海みたいで波が大きくて荒い。とても泳げそうにない海だ。
 そんな感じでちょっと残念な気持ちもありつつ、どっちに行っても同じ同じ!と自分に言い聞かせてそのツアーに参加することにした。ツアーは学校帰りに行ける3時間くらいのもので、小さな白いバスに乗って行くのだがどうやら学生以外にも外部の人達も参加しているようだった。海に着いたら自由行動だ。
 ピハに着くと浜辺の中央辺りに大きなライオンの形の岩があって、そこに登ったり写真を撮ったり浜辺を歩いたりしてのんびり過ごした。浜辺には見た事のない形の海藻が打ち上げられていて波がそれを引っ張ってつけられた跡が抽象画のようで面白かった。小石や貝も波と共に素敵な柄を描いていた。
 ピハ・ビーチもカレカレ・ビーチもそうだが、ここの砂はブラックサンドービーチと呼ばれる黒い砂で有名らしい。オークランドは火山が多いのでその影響で黒い砂浜がいくつかあるらしいが、皆その黒い砂浜が美しいと自慢げに説明していた。しかし私は日本で小さいころから夏になると行っていた海の砂が灰色で水にぬれるとまさにピハ・ビーチの様に黒い砂浜に見える浜辺に慣れていたので、ニューランド人が言う黒い砂浜の魅力がその時は分からなかった。でもその日は雨が降った後で、砂浜が全体的に濡れて水平線の方は霧のようなモヤのような白い蒸気でぼやけ、空には大きな雲が沢山あり、壮大な雲とその隙間からビームの様に広がる夕陽が薄く海の水が張られた黒いビーチに反射して本当に美しかった。
 よく海外の人が「美しい」と言う場所は、そのもの自体が美しいだけではなくその周辺の自然が作り出す雰囲気全体をひっくるめて美しいと言っているのかもしれない。だからただこのビーチを「黒い砂だから美しい」と言っていたわけではないのかもしれないなと思った。

 学校帰りだったので1時間くらい滞在したらもう日も暮れてきたのであっという間だったがこれでツアー終了。小さな白いバスに乗り込んで学校まで帰って行った。

つづく

おまけの写真

波が作る抽象画

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