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10秒で読める小説

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100作書けたので、次の目標は150作!ってことでボチボチ書いていきます。
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2022年5月の記事一覧

【10秒で読める小説】誕生日には欠かせない

【10秒で読める小説】誕生日には欠かせない

「しまった、今日は妻の誕生日だ!」
僕は閉店間際のパン屋に飛び込んだ。ここは品揃えが良く、ケーキも売っている。

無事に買った矢先、アレもいるなと気付いた。栓を抜くと音が鳴るお酒。
名前をど忘れした僕は店員に
「シュッ…パーン!!あります?」
と、ジェスチャー付きで尋ねた。
「ええありますよ」
「良かった」
ホッとしたのも束の間、店員が差し出したのは

「食パン…」

【10秒で読める小説】休載理由

【10秒で読める小説】休載理由

漫画家A先生は、手書きの年賀状を返してくれることで有名だ。友人も返事を貰って喜んでいる。
「お前はT先生に出せば?」
毎年出してるけど、返事どころか漫画も何年も休載中さ。

ところが突如3年分の返事が一気に来た。
そこには
「年賀状の返信を書き終えたので連載再開します」と書き添えてあった。

【10秒で読める小説】切ない別れ

【10秒で読める小説】切ない別れ

どうして急に別れよう、なんて言うんだい?

「私さ、チョコ食べると頭痛がするの。
猫を抱っこするとクシャミ出るし。
好きなものが、体に不調をきたす体質なの。
その点、あなたは大丈夫だったはずなのに、最近あなたといるとお腹を下すのよ!」

涙を拭いながら彼女が駆け込んだ先は、トイレだった。

【10秒で読める小説】うたた寝していると

【10秒で読める小説】うたた寝していると

自分の魂が、肉体から抜けていくのが分かった。
走馬灯のように人生を思い出す。
読書三昧の青春。夫との出会い。子も孫も産まれて。
いい人生だったわ……。
このまま逝っても何の悔いもない。

誰かが来た気配がした。死神かしら?

「焼肉食べ放題行くって。ばぁばも行ける?」
胃がグゥと鳴り、魂が肉体に戻った。

【10秒で読める小説】もうすぐお昼

【10秒で読める小説】もうすぐお昼

我が家にアメリカンボーイのトムがホームステイに来た。
流暢な英語でと自己紹介をするトムを、オカンが遮る。

「どーゆー脳味噌?」

いくら日本語全然話さないからって、酷い!
嗜めようとしたら、トムがYES!と答えた。
「じゃあ、お昼は味噌ラーメンにしよっか」

Do you know 味噌?
だったのね

【10秒で読める小説】齟齬があった

【10秒で読める小説】齟齬があった

うちの美しい猫は、僕のことが大好きだ。膝で丸まる姿はさながら独占欲の強い恋人だ。

でも今日用意した餌には、どういうわけか口をつけない。僕を見上げて鳴くばかり。
そうだ、猫語翻訳アプリを入れたんだった。
スマホをかざすと、

「下僕よ。いつもよくやってる褒美だ。コレ食っていいぞ」

【10秒で読める小説】拡散希望

【10秒で読める小説】拡散希望

先日ペットショップで買った恐竜を遊ばせようと、庭に放したら、あっという間に走り去ってしまいました。
見かけた方はご一報下さい!!!

ただしティラノは、噛み付いてくるので、不用意に手を出さないで下さい。

私も指を三本やられました。

【10秒で読める小説】博士は地元出身

【10秒で読める小説】博士は地元出身

このほど島根県で新種の恐竜が見つかった。
発見者の博士は命名欄に「シマネサウルス」と書こうとし、はたと手を止めた。
苦い記憶が蘇ったのだ。

「島根って砂丘があるよね」
「鳥取と島根、どっちがどっち?」

もう鳥取と間違えられるのはうんざりだ。
博士はこう記した。

「トットリノヒダリサウルス」

【10秒で読める小説】母のためを想って

【10秒で読める小説】母のためを想って

腹筋をしていると、
「100×0って何だっけ?」小学生の息子が尋ねてきた。
「ゼロよ。元がどんなに大きな数でもゼロをかけたら無になるの、ふぅふぅ」
息子は目を輝かせて、お昼に用意したカツ丼の上に寒天をぶっかけた。

「ゼロキロカロリーの寒天を掛けたから、これでカロリー無にできるね!ダイエットはかどるね!」

【10秒で読める小説】浸透圧のせい

【10秒で読める小説】浸透圧のせい

ぽん助と出会って以来、息子はいつも、ぽん助を連れて遊びに行った。
公園へも、お友達の家に行くのも一緒だった。

しかしある日、海へ行った息子は大泣きで帰ってきた。
「ぽん助が、おうちを捨てて逃げちゃった…」
小さな手のひらを開くと、ぽん助の殻。

あー、カタツムリも塩で溶けるんだっけ。