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小さなWeb制作会社のコロナ禍奮闘記

はじめに

初めまして。Web制作会社プランユーケー代表の川崎と申します。このnoteでは、Beforeコロナ(2019年後半)からWithコロナ(2022年夏)まで、「小さなWeb制作会社のコロナ禍奮闘記」をご紹介します。

2019年末からパンデミックになった新型コロナウイルスは、世界を一挙に変える引き金となりました。
小さなWeb制作会社である弊社から見れば、2020年4月に発出された緊急事態宣言が、コロナ禍による危機の号砲だったと今はわかります。
宣言発出当初は、社内でも「すぐに収まるんじゃないか」という無根拠な楽観論もありましたが・・・

2020年夏が訪れ、コロナ禍の速やかな収束がないことを全世界も私たちも気づきます。コロナ禍は20年秋、21年冬へと断続的に感染拡大を繰り返し、経済危機を引き寄せ、社会混乱を発生させました。

否応なしに私たちは、自らの健康と事業を守り、コロナ禍への適応と事業改革の行動を決意せざるを得なくなりました。

2019年7月~2020年6月(弊社17期)

Before コロナの当社状況(2019年後半)

2019年後半までに弊社ではテレワークをせざるえなくなった社員のために、VPNによるテレワーク環境や労務関連の整備を行なっていました。

コロナ禍到来~初の緊急事態宣言発出

我が国でも2020年3月頃から新型コロナウイルスが危機として騒がれはじめ、社内でも対応について議論を始めていました。

そして、4月6日の朝刊で、翌日には緊急事態宣言の発出を知りました。

すぐに4月6日朝から緊急会議を開き、基本は自宅テレワークとし、会社機能維持のために交代で最低限の出社を決定。
すでにテレワーク勤務の基本整備が済んでいたことが幸いしました。

テレワークになるスタッフの不安が高まることが予想されたので、社内メルマガ「Planuk Letter」を月次で発行開始しました。
社内メルマガでは代表の私が原稿を書き、コロナ禍での会社の情勢認識や方針を毎回、丁寧に発信することにしました。

突然、テレワーク中心の勤務になり、当初は混乱もありましたが、全員が業務の工夫やコミュニケーションに努め、各種ドキュメント整備を進めたこともあり、生産性を大きく落とすことなく緊急のハイブリッドワークを進めることができました。

また、顧客向けを想定して、noteでテレワーク中心の会社の運営が順調であることも広報しました。

4月はスタッフの感染予防第一の運営に集中しました。
5月に入り、まず着手したのは、テレワーク環境でも仕事を安心してできる環境づくりです。
矢継ぎ早にSlack、Todoistを導入し、対面や同期にこだわらずに互いに仕事ができる環境を作り、スタッフの順応を進めました。

自宅で使うパソコンもAppleStoreに買い出しに行き、会社から貸与を進めました。また希望したスタッフには、自宅で使う大画面液晶モニタ、キーボード、マウスを貸与。
当時はAmazonなどの在庫も不安定な中、何とか手配をして自宅へ直送して対応しました。
そうして、徐々に社内には感染予防と仕事の両立ができそうだという確信が共有されてきました。

ただ、経営者である私としては、社員が「当社の事業はコロナ禍でも大丈夫。」と思える、次の戦略立案が急務と感じていました。

そこで、非対面の長期化を前提に、新規顧客開拓のためにインバウンドマーケティングに挑戦してみることを判断。以前に社内学習会をしていたこともあり、基本的な知見が一部社員にあったためです。

コロナ禍で新規顧客開拓に挑戦

では、マーケティング対象をどこに向けるのか? 
小規模会社にとって狭く深い分野が望ましいが・・・
と考えあぐねていた時、ふと以前の調査資料を思い出し、Googleドキュメントを検索。

それは2017年頃に当時の企画提案チームが、新規参入先として「大学・研究室向けWeb制作の可能性」について調査したレポートでした。
当時は市場調査で終わっていたのですが、読み直してみて、数年経った現在もあまり状況が変わっていないことに気づきました。
そのため、参入障壁を突破すれば、後発の我々にも機会がありえると直感しました。

そこで、マーケティングをアカデミア系の方々(大学・研究室・学会)向けに注力することを決定。提案機会の獲得ルートや同業他社との差異化を社内で5月中に考え抜き、6月から立て続けに準備に動き出しました。

まずは後発参入である当社の差異化策として、6月初めにTransUP(トランスアップ)の開発を開始しました。

TransUPは、CMSを設置できない大学提供サーバに置いたWebサイトでも簡単に更新できるサービスです。すでにリリースしているCMS「Informaker」の知見を活用し、開発期間の短縮を目論みました。

6月には神大生協様へ研究室向けHP作成サービス協業を提案。
当時の生協職員様から問題意識を共有いただいたこともきっかけでした。
神戸大学は、弊社からキャンパスへ訪問可能で、大規模な総合大学であることも重要ポイントでした。

神戸大生協様には協業を快諾いただき、学内へのチラシ配布やWeb掲載も許可してくださいました。そこで弊社では学内宣伝準備も進めました。

こうして、コロナ禍にあっても、新規顧客開拓に向け、スタッフがオンラインで議論や準備を進めていく中で、未来に向けた熱量が社内に高まっていくのを感じてきました。もちろん弊社の主要顧客である大学生協様に向け、コロナ禍でのWEB活用提案もかなり忙しくなってきていました。

2020年7月~2021年6月(弊社18期)

弊社の新年度は7月からスタートです。年度開始時には今期の経営方針を説明しています。ただ、この時の経営方針のオンライン説明会では、コロナ禍の影響により売上は先期から減少予想を報告しました。

同時に今年度をポストコロナへ助走の1年と規定し、新規顧客開拓の挑戦の決意を共有しています。

神戸大生協様とのアカデミア向けHP作成事業では、ついに10月に学内チラシを全学に初めて投函開始。
HP作成サービス案内ページも生協サイト内に作らせていただき、あとは注文待ちの体勢となりました。

コロナ禍による行動制限解除が見通せない中、主要顧客である大学生協様でも通学減少に伴い、情報発信強化を検討されていました。
そして、東京地区の大学生協様での導入事例を参考に、東海地区の全会員生協様でもInformakerの一斉導入を決定いただきました。
東海地区の大学生協様は、弊社にとって最も古くからのお取引であり、Informakerで情報発信強化に貢献できることが嬉しかったです。

東海地区でのInformaker一斉導入にあたっては、対面での打ち合わせはせずに、すべてZoomでご相談しながら準備を進行。
2020年12月には、東海地区全てで刷新されたWebサイトをInformakerで運営する現在の形に移行完了できました。

この一斉導入の実現により、離れた場所で働くお客様やスタッフが協働し、大きなプロジェクトも実現できる確信を社内で持つことができました。

12月初旬に大学・研究室・学会向けホームページ作成サービスの自社LPがついに公開できました。

これにより神大生協様、自社の2ルートでWeb制作の受注窓口を持つことができました。自社ルートでも立ち上げ当初からお問合せをいただけ、方向性に間違いがないことを確認できました。

12月には当社初のマーケティング検討のCSプロモーション検討タスクが立ち上がりました。
大学・研究室・学会向けLPの掲載内容は、CSプロモーション検討タスクで一から検討し、練り上げた内容に更新されました。
同時に顧客向けメルマガ開始やアカデミア系向けLPバージョンアップ、Google広告活用など多くの成果をあげることができました。

この期間を「ポストコロナへ助走の1年」と位置付けのもと、マーケティングの実験を多数できたことは、2022年後半以降のポストコロナ下での前進につながっていきます。

2回目の緊急事態宣言が1月8日~3月21日に発出。

アカデミア系事業の目玉サービスであるTransUPの開発は2021年1月にはサービス提供できる形に仕上がりました。
この時点で、すでに研究室のWebサイトを複数受託しており、どちらもTransUP導入が決まっていました。
もちろん年度末である3月初旬までに納品の約束だったので、まさにギリギリの完成でした。

3回目の緊急事態宣言が4月25日~6月20日に発出。

この頃には日々の制作業務において、スタッフがハイブリッドワークによる協働水準を短期間に高めてくれたおかげで、かなり創造的な仕事も可能になっていました。当時のnoteにその時の雰囲気が残っています。

挑戦分野であるアカデミア系Web制作事業は、2021年3月の年度末までに神大生協様経由で複数件を初めて受託。
受託数は多くはないものの、自社で立案したチラシ、Web、自社開発のTransUP、大学生協様連携で切り拓いた成果には手応えがありました。
また、自主ルートでも受託できつつありました。

この時期、ネット上で弊社サービスのプレゼンスを高めるためにnoteを多数投稿しています。(現在も閲覧数がかなりある記事たちです)

そして・・・取り巻く事業環境の厳しさは続いていましたが、弊社の創業25周年記念イベントは予定通り挙行しました。
当初はお客様も招いて・・・と考えていましたが、コロナ禍で断念。
社員たちが自社の未来へ確信を持てる方向に切り替えました。

25周年特設サイトでははじめて社史を編纂し公開しました。社史編纂を通じ、危機は何度も到来する。しかし、苦境は乗り越えられるという確信を、スタッフは感じたようです。

また、スタッフ全員参加の記念イベントを6月と7月に2回開催。
スタッフ参加の企画はすべて非対面、オンラインで実施しました。
記念イベントでは東洋経済の福田記者に「お客様への発信や伝わる文章の書き方」講演をいただき、非対面/非同期コミュニケーションが広がる中、意義ある機会でした。

この期間は、「ポストコロナへの助走の1年」として、様々な挑戦を続け、創業25周年を振り返るなどの共有経験を重ねることで、コロナ禍を突破できる決意をスタッフ一同で確信できたと思います。
また今から振り返ると、かなりの種まきができていたようです。

2021年7月~2022年6月(弊社19期)

4回目の緊急事態宣言(7月12日~9月30日)が発出。
さすがに特に慌てることなく、テレワーク3日・出社2日へ移行し、感染予防と事業を両立できました。

弊社ではこの頃、「コロナ禍により社会のあらゆる階層にWebを活用する意識が浸透している」との情勢認識を持っていました。
そのため、ポストコロナ前からWebへのニーズの一層の高まりに備えることを決定。

組織のフラット化、リーダー層強化により機敏に動けるように新体制へ移行しました。またクリエイティブアドバイザー職の新設により、制作力の底上げも狙いました。

また、長期化するコロナ禍によりオンラインでの新規提案、協働制作が定着していく中で、つぎはぎだった制作業務の一層合理化が必要になっていました。

そこで2022年3月には業務合理化検討タスクがスタート。
業務合理化検討タスクは、2020年春から短期間で制作業務における全般的な環境整備と合理化を進めてくれました。

この頃、徐々にアカデミア系Web制作の実績数と比例して、新規ご相談が増え始めました。
アカデミア系制作実績

note記事の継続発信により、ネット上ででの当社のプレゼンスも高まっていると想像されました。

少しづつですが、手作りマーケティング施策の効果に手応えを感じていました。一方、新しいお客様向けの提案機会増大は、自社内での提案環境の整備不足と、提案経験の偏在も明らかになってきました。

新たに前進すれば組織の弱点が露呈し、改善に取り組むサイクルは、大変ですが、小さな組織の成長には望ましく、コロナ禍効果と言えそうです。

テレワーク環境も継続的に強化していきました。

  • 2022年2月にはnuro光をVPN専用回線として新規で追加導入。社外向けに固定IPアドレスを持つ回線と2回線体制に強化。

  • VPN機材のとネットワークハブなどの機器類を大幅な機能向上版へ切り替え。

  • データ共有ハードディスクを高機能NAS+SSD移行開始。
    以上の回線と機器類の強化により、夕方の接続不調も減少し、VPN経由でのデータやり取りも大きく改善しました。

また、2022年6月にはナレッジセンターを立ち上げ、社内の情報や知見を共有、検索できる拠点をオンラインに開設。

ナレッジセンターを立ち上げるまで以下のような多くの問題があり、ハイブリッドワークをやりづらくしていました。

  • 各自GoogleDrive、社内NAS、Slackチャンネルに社内ナレッジが散逸

  • 保存先が散逸しているため串刺し検索ができない

  • Slackやメールで流れる情報を探すのは記憶に頼っている状況

  • テレワーク時に、社内ナレッジを自ら探せる手段が脆弱

以上の問題解決のために一元的に社内ナレッジを集積できる拠点をナレッジセンターとして立ち上げました。
ナレッジセンターにはエストニア産のKipwiseを採用。

ナレッジセンター導入により、ハブリッドワーク下でのスタッフ単独での問題解決力を上げることができました。

弊社19期(2021年7月~2022年6月)は組織、業務、環境の全面について、ポストコロナ到来準備を前提とした多数の改革や挑戦を実施しました。

スタッフの深い理解と共感により、高い生産性&創造性を実現した組織運営ができたと思います。

マーケティング効果もあり、多くのご相談をいただき、新規Web提案にも果敢に挑戦し、多数の実績を出すことができました。

そして、19期の決算は創業以来、最高の結果を出すことができました。

さいごに

世界、社会ではコロナ禍、ウクライナ戦争など、不安は止んではいません。

ただ、このコロナ禍奮闘記で確信できたことがあります。
当社ではなんとかかんとかコロナ禍対応をきっかけにした事業/組織改革を終了し、「ポストコロナ体制」に移行できているという事実です。

2022年7月から始まる20期は、当社にとってポストコロナ時代への挑戦の年度になります。
最も厳しいコロナ禍にあっても、スタッフ全員が健康に留意し、持ち場を守り、変化を恐れずに挑戦し獲得したスタートラインと言えるでしょう。
ここからポストコロナ時代の新しい組織づくり、新しい事業づくりは、これからも継続していきます。

ここまで、ともに前進を選択してくれたスタッフ全員へ深い感謝と敬意を。

同じくコロナ禍に奮闘されている経営者の皆さんも、そろそろコロナ禍について振り返られてはいかがでしょうか?
ともに頑張りましょう。

この奮闘記はここで終わります。

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