緊急事態宣言下における小規模Web制作会社のテレワーク運営体制について
新型コロナウイルスに対応した緊急事態宣言発令が4/7に発令され、弊社でも4/8よりテレワーク中心の会社運営に移行しました。
弊社は小規模なWeb制作会社(社員20名弱)だが、BCP策定の一環としてSSL-VPN導入やフルタイムのテレワーカーが一部いた幸運があり、短期間の準備でほぼ全員のテレワーク移行が完了できました。
※以下は以前に公開したテレワーク環境を初めて構築した時の記事です。
小規模Web制作会社のテレワーク運営体制の記録と今後の課題を簡単にまとめてみました。同規模の他社にも少しでも参考になればと思います。
1.運営体制
試行錯誤がありましたが、ここでは最終形のみを記載します。弊社ではスタッフをテレワーク組と通勤組に分けて日常的に運営しました。
◎テレワーク組
ほとんどのスタッフは自宅にてテレワークで、Web制作を継続してくれました。勤務形態は通勤時と全く同様です。(通勤時間がないだけです)
SSL-VPN経由で社内と変わりなく事業を継続してくれました。
◎通勤組
会社でなければできない機能を維持するために通勤してくれたメンバーです。テレワーク組から交代で週に1回通勤してもらいました。また、会社から徒歩圏内のスタッフは自主的に通勤を買って出てくれました。
通勤組はSSL-VPN環境や共有ディスクの管理、リモートアクセスされる端末の調整、電話や宅配対応などを行いました。
◎1日の流れ
朝と夕方に問題点をチーム単位で共有してもらい、その後のリーダー連絡会で解決するという流れを毎日行い、日々、改善しながら進めることができました。
10:00 出勤〜クラウドタイムカード打刻
10:05 Web全体朝礼をGoogle Meetで実施。
10:10 チーム別にWeb会議ツールで朝会
10:15〜20 リーダー連絡会をGoogle Meetで実施。
チーム内の問題点と課題を共有し、その場で解決します。
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13:00〜14:00 昼休憩
休憩に入った際と終了の際はTeamsに各自投稿
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18:00〜18:30 チーム別にWeb会議ツールで夕会
18:30〜45 リーダー連絡会をGoogle Meetで実施。
19:00〜 各スタッフは日報を提出
19:00以降、順次退勤
退勤時はTeamsに投稿
2.制作環境
◎SSL-VPNを経由して、社内環境へセキュアなアクセス
弊社では昨年よりFortiGateを活用して、SSL-VPN環境を構築し、1名のテレワーカーの勤務を支えてきました。そのためテレワーク運用ノウハウが一定蓄積されていました。
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自宅のパソコン→SSL-VPN→社内の自パソコンを画面共有で利用→社内ディスク活用
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というシンプルな形で運用し、大きな問題はほとんど起こりませんでした。
ただ、VPN接続が唐突に不安定になるスタッフもいたりしましたが、仕事の組み立てを考えて進めることで生産性を維持してくれました。
◎パソコンやアプリとネット環境
パソコンは会社から貸与、個人保有の利用の両方で対応しています。またノートパソコンでは疲れやすい、作業しづらいとの声も多かったので、サブディスプレイ(27インチか23インチ)を希望者にAmazonから直送で、貸与しました。
メイン利用するAdobeCCはサブスクリプションなので、社内のパソコンのアカウントをログアウトし、自宅利用のパソコンで使ってもらいました。
ネット環境は、自宅の回線を利用してもらうことができました。速度的にも問題のあるスタッフは少なかったのですが、17時台の速度低下は全国的な傾向だったかもしれません。
また、テレワーク時の自宅のネット利用料、光熱費、場所代を鑑み、テレワーク経費を新設して支給しています。
◎制作データの利用
弊社では制作データは社内のNASに全て保管されています。そのため社外からもSSL-VPN経由でNASにアクセスして、制作を続けてもらいました。
当初は時間帯やデータ量により作業効率が下がることも多かったようですが、習熟につれて、生産性を改善してくれたようです。ただ、NASを中心としたデータ管理をする以上、通勤組の確保は必須になるのが弱点となりました。
◎動作検証
弊社はmacOSが開発環境のため、WindowsでのWeb表示検証が欠かせません。そのため社内のWindowsPCにTeamViewerをインストールし、自宅からでもWindowsの表示検証をできるようしました。
◎アップロード
顧客サーバへデータのアップロードは、固定IPアドレスによるアクセス制限を行っていることが多く、どうしても社内ネットワークからでなければできません。
そのためSSL-VPN経由で社内の自パソコンを画面共有で呼び出し、FTPアプリを使って、アップロードするという単純な方法で解決しました。ただ、万が一の場合は通勤組にアップロードを依頼できるようにバックアップしました。
3. コミュニケーション
◎お客様と・・・
会社にいただいたお電話は通勤組がいったん受け、テレワークスタッフから折り返しさせていただきました。テレワークスタッフは個人のスマホにSkypeを入れてもらい、会社からクレジットを提供し、電話してもらっています。
各自のSkypeのクレジット管理はSkype Managerを活用することで、クレジット残状況や利用履歴もわかり、集中管理が容易かつ安価に展開できました。特に受電が多いスタッフにはSkypeの電話番号の設定も想定しています。
また、会社の電話は、通勤組が少ないこともあり、短縮受付とさせていただき、メール、メール署名や自社サイトなどで告知をすることで、混乱はほとんどありませんでした。
◎スタッフ間は・・・
メッセージアプリにはTeamsを導入し、テキスト/ビデオのチャットを気軽に実施できています。また社内のドキュメント共有はGsuitですでに行っていましたが、関連書類への社内向けリンク集サイトは刷新し、使いやすくしました。スケジュール共有にはGoogleカレンダーの共有機能を活用しています。朝礼やレギュラーの打ち合わせにはGoogle Meetで固定URLをブックマークし、速やかに進める使い分けの工夫も行っています。
ただ、「雑談」のような緩いコミュニケーションは十分ではないと感じています。4月下旬に希望者によるオンライン飲み会を実施して、大いに盛り上がりました。
また、社内アンケートを複数回実施し、テレワークによる状況、課題、工夫を集約し、社内発信も行っています。
4. 広報活動
テレワーク移行下で広報チームが立てた広報目標は、安心感の提供でした。
・テレワーク移行しても弊社は業務を安定してやっています!
・感染予防して元気に仕事を続けています!
という視点で、「テレワーク日記」を7回に渡って発信。非常に好評な企画になりました。
また緊急事態宣言に対応した丁寧なニュース発信や更新も欠かせませんでした。他にも継続的に広報発信することで、いつも以上にお客様に届き、安心感の提供ができたと思われます。
5. 教訓と課題
4/8からのテレワーク移行による感染予防と事業継続の両立は大きな問題はなく、なんとか乗り切ることができました。スタッフ達の意識高い協力を基礎として、テレワーク環境をすでに作っていた幸運も重なりました。もし、一からの準備だと考えると、とても間に合わず、無理やり通勤を継続していたと思われます。
ただ、課題として特に大きなことは、データ管理でした。弊社ではデータ管理を社内NASを複数台活用してきたため、テレワーカーには扱いづらい環境でした。またディスク管理のために通勤組の確保も必須となりました。BCP策定で課題になっていた事項でもありました。
速やかに全面クラウド環境への移行を進めていきたいと考えています。
また、各自の業務が見えにくいとの声も多々ありました。口頭で多くのことが解決できていたのだと思います。そのため「見える化」「標準化」を目的に新しいタスク管理ツールの導入を検討しています。
新型コロナにより、唐突に始まったテレワークは、スタッフに急なストレスも多かったものの、生活の質が改善されたとの声も多く聞かれました。今後は働きやすさの面でも、リスク分散の視点でも、テレワーク&通勤の混在型の会社運営を発展させていこうと考えています。
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