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ソーのこの優しさに憧れる

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2022年3月の記事一覧

【1話完結小説】文化祭(午後原茶太郎シリーズ)

【1話完結小説】文化祭(午後原茶太郎シリーズ)

高校生活最後の文化祭。俺はベタながらお化け屋敷をやりたかった。男子はほとんど俺の味方をしてくれたけど、女子の大半が「メイドカフェをやりたい」と譲らない。

「文化祭と言ったらお化け屋敷だろ!」
「そんな暗いしキモチワルイの絶対イヤ!」
「メイドカフェ、一回くらいやってみたいし!」
「そんなもん女子しか盛り上がんねーだろ!」

意見は平行線で、出し物は永遠に決まらず、明日、改めて仕切り直すことになっ

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【短編小説】「靉靆」

【短編小説】「靉靆」

 都会の夜はどこか寂しく思える。
 青白い空も、いつまでも一人点滅している看板も、遠くで揺らいでいる電波塔も。全部自分のもののようにも思え、また世界の果てのようにも感じる。白い息の行方を目で辿ると、薄明の空が僕の頭上に横たわっていた。――みんなの知らない夜の姿、それを見るために僕は人より早く目を覚ます。
「おはよう、じいちゃん」
「えっと、お前は……たかし?」
「そう、だね」
 僕は目の前から歩い

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もう届かない③【短編小説】

もう届かない③【短編小説】

洗面台で顔を洗っているとき、お兄ちゃんと後ろから声がした。

鏡越しで後ろを見ると、妹の澪が怪訝そうな顔で見ていた。

「どこか行くの?」

「買い物だよ」

「何買うの」

「・・・服」

嘘・・・と持っている手提げ鞄をワザと落とし、大袈裟に反応してみせる妹。

「何、虐め?」

「別に命令されて買ってくるわけじゃない」

「じゃあ何で急に」

「俺もお洒落くらいするさ」

「ちょっと待って。今

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もう届かない②【短編小説】

もう届かない②【短編小説】

3月9日の朝。

結局、一睡もできなかった。

頭の中は明日のことで一杯だ。
しかし同時に「何故」という疑問が消えない。

年に一度、3月9日の0時0分に電話をしよう。

卒業式に山岸からそう声をかけられたのが全ての始まりだった。

最初は、何を言っているのかが分からなかった。

だってそうだろう。
相手は学年一番の人気者。一方こちらは勉強しか取り柄がない日陰者。

高校三年間で同じクラスになった

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もう届かない①【短編小説】

もう届かない①【短編小説】

3月8日午後11時59分。

普段この時間に連絡なんて来ないが、俺は一分後に携帯が鳴ることを確信している。

ベッドの上に置いてある携帯電話を凝視する。

部屋の壁際に置いてある時計の針の進む音だけが聞こえてくる。

俺は一秒ずつ数えていた。57.58.59・・・。

3月9日午前0時に着信が来た。

携帯を取る。
ディスプレイには山岸 里桜と表示されている。

直ぐに通話ボタンを押して電話に出た

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もう届かない④【短編小説】

もう届かない④【短編小説】

3月10日。当日を迎えた。

昨日妹の澪にお勧めされた服装、そしてワックス。ばっちり決まっているはずだ。

「あれ、もう行くの?」

リビングのソファでくつろいでいる妹が、携帯を触りながら聞いてくる。

「あぁ、父さんには帰りが遅くなるかもって伝えてるから。ご飯も冷蔵庫に置いてるから温めて食べてって言っておいて」

「そんなこと私から言わなくても、お父さんもう分かってるでしょ」

携帯をテーブルに

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昔からよく道を聞かれます

昔からよく道を聞かれます

 おはようございます。

 イラストは「みんなのフォトギャラリー」から使わせていただいています。ありがとうございます。

 今回は、私が人に話しかけてもらうことが多いことについて書こうと思います。

 10代の頃から道を尋ねられる

 大抵一人で歩いていると、声をかけられて道を聞かれます。

 多いときは一週間に2回聞かれていました。

 出来る範囲で道案内をします。

 横浜駅でのバイト

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