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ことば展覧会

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#毎日note

言葉

言葉は、記憶。

私の記憶のほとんどは、遠い記憶であればあるほど、誰かの発した言葉を核として、そしてその時の映像が絡み合い、成立している。

私は、つまらない記憶ほど、細かいところまで覚えている。よく覚えているなと、時々、驚かれたりするが、恐らく、言葉、映像、記憶という、私独特のルーチンの中で、脳の中に、あるいは心の中に、ひっかかったものが時間の経過に溶け込まずに沈殿しているのだと思う。

私の記

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指でつぶやく時、ひとしずくの希望がにじんでる。

指でつぶやく時、ひとしずくの希望がにじんでる。

突然の贈り物のようなふいな出来事が好きだ。

人を好きになるのは偶然だ。

それは突然の贈り物なのだと後になって気づく。

好きになるのではなくて、好きになっちゃった。

このなっちゃった感がわたしたちを切なくさせる。

あの人の名前を呼ぶだけで涙がでるとか。

あの人を好きだとあの人のいない場所で声にするとき

ひとしずくの涙がでるとか。

ひとしずくのものが好き。

海の水は、昔のひとのみんな

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言葉って、いつか見た想い出せない夢に似ている。

言葉って、いつか見た想い出せない夢に似ている。

 
透明なガラスのコップのふちにそって、詩が刻まれてる。

内側に液体が注がれてゆくときのように。

右側からも左側からもフィンランドの言葉で紡がれた

いたずら書きみたいな詩とコップの写真をみていた。

<夏はどこもかしこも光にあふれ、白夜の夜は遠くの
気配すら聞こえてきます。水面には静寂が宿り、涼しげで>

誰の作品なのかよくわからないけれど、

訳された言葉を追いながら、まだ訪れたことのない

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ことば遊び

言葉って、不思議。

語尾や、ちょっとした言い回しの違いで相手に与える印象がガラリと変わる。変幻自在で、不思議な存在。

言葉って、繊細。

雑に扱ってしまうと、すぐにボロが出てしまう。丁寧に扱うべき、繊細な生き物。

言葉って、空間。

同じものなど一つもない、唯一無二の存在。一音一音によって織り成される空間は、誰にも邪魔できない絶対領域。

言葉って、思考。

常に頭を駆け回る、年中無休の多忙

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手綱とかゆみ。

手綱とかゆみ。

二十代、僕は馬に乗ってた。

乳児の頃から動物が好きで、物心つくと、馬に乗ってみたいと思っていた。

お金を稼ぐ年齢になり、海が見える乗馬クラブに入った。

最初に乗った馬は、「プレス」という名前の女性の馬。競走馬をしていたらしい。年をとり、引退。そしてここで余生を送っていた。

僕が初めて乗った時。プレスは跳び跳ね、備品を後ろ足で壊しまくった。僕の中のイメージでは、ナポレオンが進軍してるときの、

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