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17.【XXロード : 天使と悪魔】

月日はだいぶ経って……
16.【XXロード : 危ない隠し芸】で、散々な隠し芸を披露されたことを忘れてしまっていた頃の夢。

現実の世界でお世話になっている方達とBARのような場所で呑んでいた。
みんなでワイワイ楽しんでいるところに、謎の男が入ってきた。
無言でお店の真ん中ぐらいまで来ると……突然、男が爆発。
気がつくと、男が入ってくる前の状況に戻っていた。

こんな夢、前にも見たな……。

そんなことを思っていたら、男が来る前にお店を出た人を見つけた。
多分、運よく爆発に巻き込まれなかったはず。
さっきは気にも留めていなかったことなのに、その決定的瞬間がスローモーションに見える。
真似して逃げろと何だか言われているような気がして、アタシも急いでお店の外に出てみた。

「どうしたの?」

さっき助かった彼女は、驚いた顔でこちらを見た。

「少ししたらお店に変な男が入って来て、いきなり爆発して、みんなが巻き込まれちゃうんです!」

そう必死で訴えたけれど、「そんなことあるわけないでしょー」と笑うだけで信じてはくれなかった。
信じてくれないのなら、自分だけでも逃げようと思った薄情者なアタシ。
お店の前の道を少し歩くと、広い場所に出た。
辺りを見渡した瞬間、昔見た夢の映像が浮かぶ。

ロボットが落ちてきた場所に似ている。

前の夢でロボットが立っていたような場所。
その奥にトンネルが見える。
赤茶色のレンガが飲み込まれそうなぐらい、先の見えない暗闇が続いていた。

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トンネルの上には線路と小さな駅。
やっぱりここは、あの時の場所だと思った。

そう確信するのを待っていたかのように、トンネルの奥から足音が聴こえてきた。
暗闇から現れたのは、さっきお店で爆発した男。
両手にはサバイバルナイフ。

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トンネルを抜け切ると同時に、近くにいる人達を次々と切りつけていく。
徐々にスピードを上げながら、踊るように近づいてくる男。
アタシは一目散に迷路街の奥へ行こうと走った。

後ろから追いかけてくる足音が聴こえる。
振り向かずに走って……走って……。
気がつくと足音が止んでいた。

どうにか振り切れたみたい。

振り返っても誰もいない。
少しホッとして、呼吸を落ち着かせるために立ち止まった。
内側から聴こえる自分の心臓の音と、それに重なるように聴こえてくる足音。

……アイツだ。

再び走ろうとしたら、足音は前から聴こえる。

ヤバい。先回りされたんだ。

逆方向に逃げようと慌てて振り返った瞬間、目の前に殺人鬼の男が立っていた。
返り血を浴びた緑色のモッズコート。

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目元を隠すようにフードを深々と被り、ニヤッと笑う。
笑ったままの口で男が〝フーッ〟と息を吹くと――
何とも言えない衝撃で体が揺れる。
脇腹を見てみると、血塗れのサバイバルナイフが刺さっていた。
そのまま倒れながら、視界が真っ暗になった。

次に目を開けると、同じ場所に立っていた。
そこは住宅街の中にある真っ直ぐな一本道。

殺人鬼は、絶対にまた現れる。

でも、さっきみたいに前から来るのか。
逃げてきた方から来るのか。見当もつかない。
ふと近くにあった家を見上げた。

これって自分の夢なんだから、飛んだりできないのかな。

鳥のように……とまではいかなくても、強く願えば忍者のように屋根から屋根へ……
それぐらいならできるのではないかと思った。

早速、その場で跳び跳ねてみた。
見ている人なんていないんだから、思い切ってやればいいのに、チキンなアタシは恥ずかしさに勝てなくてグダグタ。

いくら夢でも、やっぱり飛べるはずないよねぇ。

なんて自分を誤魔化すように言い聞かせていたら、聴こえてくる足音。

アイツが来た。

そう思った瞬間、塀を引っ掻きながら駆け上がるようにジャンプ!
ブワッと跳んで屋根へ。

おぉー。跳べちゃったよ……。

驚きつつも興奮していると、突然何かを叩きつけるような大きな音がした。
そーっと下を覗いてみると、さっき駆け上がってきた塀に男が脚立を立てかけていた。

追いつかれると思ったアタシは、明るい場所へ逃げようと屋根から屋根へ華麗に跳んでみる。
途中でツルッと滑りながらも、夕暮れ色に染まる我が家を目指して進んだ。

後、もう少し。

そう思って顔を上げると、見えていた夕方の風景は消えていた。
アタシの目に映ったのは暗い夜の駅前。
視界の端には赤茶色のレンガ。

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なんでまたここに……離れたはずなのに。

状況が理解できず、パニックになっていると――
あちらこちらから足音が聴こえてくる。

どんな形で逃げても殺人鬼に辿り着いてしまう。
こうなったらアタシも応戦するしかない。
その為には、何か武器が必要だと思い動こうとした瞬間――
鈍い音とよろけてしまうぐらいの衝撃。
違和感のある左側の脇腹を見てみると、細長い物が刺さっていた。
アタシは脇腹を押さえたまま崩れるように倒れた。

トンネルの方から足音が聴こえてくる。
ゆっくりと暗闇の中から姿を現した殺人鬼。
手にはボーガンのような物を持っていた。

なんで脇腹ばっかり……。

薄れ行く意識の中、声が聞こえる。

「お~い! 辛いのくれぇ~」

この声は……
最初にいたBARで、みんなと一緒に呑んでいたTさんの声。
目を開けてみると、やっぱりTさんがいた。
辛いのとは、いつもTさんにあげていた物。

「せっかくだから全部貰っていくぞ!」

アタシのバッグから取り出したのか、辛いのを手に持って笑っていた。

「お前の為に他の奴等までやっちまったけど、寂しくないからいいだろ?」

いつもと変わらない口調で、とんでもないことを言い出したTさん。

あの殺人鬼の黒幕はTさんで……アタシは狙われていたんだ。

再び薄れ行く意識の中、ショックを受けていたらーー
突然、誰かがアタシの脚を強く掴んだ。
頭を上げて見てみると、足元にTさんがいた。
目線を戻した先にもTさん。

二人いる?

「まだ死なせはしないぞ! こいつにはまだやらなきゃいけないことがあるんだ。せっかくさっき生き返らせたのに……」

足元にいるTさんが黒幕のTさんに向かって怒鳴っている。
救世主風なTさんを無視して、黒幕のTさんは楽しそうにアタシの顔を覗く。

「もうお前の使命はいいんだよ。上へ帰れ……アシュラ」

そう呟いて笑った。
ショックのせいか、涙が溢れて止まらなかった。
泣きながら黒幕のTさんを見つめていたら、そのまま夢から覚めてしまった。
目を開けると涙がボタボタと枕に落ちる。

その時はアシュラとは何のことなのか、全く思い浮かばなかった。
気になってTさんに夢の話をしてみると
「アシュラ=阿修羅だろ。自分の中に阿修羅を感じ、それを一番退治して欲しい人を登場させたんじゃないかなぁ……って俺かよっ!」

なんて笑って言ってくれたけれど
納得出来たような。出来ていないような。
この夢を思い出す度にモヤモヤしております。


別サイト初回掲載日:2010年 12月22日


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