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23.【美術館】と【時計塔】

墨色ワールドにある【美術館】停電病院のように真っ暗な場所。

そんな美術館で始まったある日の夢は……
細い廊下に立っていた。
右側には、奥まで続く大きな窓。
その窓から月明かりのような光が入り込んで、廊下を照らしていた。

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窓越しから空を見上げても月は見当たらない。
街灯や建物からの光でもないようで、何の光なのかわからなかった。

床は朱色をしたペイズリー柄の絨毯。
壁も天井にも同じ材質の布が張り巡らされている。

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廊下の左側には扉がたくさん並んでいて、どれも奥まったところにあった。
床だけじゃなくて壁も天井も同じ色柄のせいか、扉の前にいるだけで圧のようなものを感じる気がする。

恐る恐る扉を開けてみると、その先は小さな部屋になっていた。
部屋の壁も廊下と色違いの仕様になっていた。
正面を見ると大きな窓が二つあって、何だか部屋の大きさとは不釣合いなぐらい大きな窓だった。
その窓からも月明かりのような光が床を照らしている。

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薄暗い部屋の壁にはたくさんの絵が飾られているのが見える。
近づいて見てみると、どの絵も後ろ姿の肖像画ばかりで少し不気味な雰囲気だった。

部屋の奥にも扉がある。
開けてみるとその先もまた部屋になっていて、今の部屋と色違いの絨毯や壁紙になっていた。
大きな窓が一つ。
床にはなぜかたくさんの絵が並べられていた。
全部、さっきの部屋にあったのと同じような後ろ姿の肖像画だった。

ここの部屋の奥にも扉がある。
開けてみると、また色違いの絨毯と小部屋。
窓は小さめなのが二つ。

この部屋に絵は無いのかな……。

そう思いながら見渡していると、上から小さな蜘蛛が糸を垂らしながら下りてきた。
まるで何かの映画のワンシーンのようだった。
そのまま上を見上げてみるとビックリ。
なぜか天井に、物凄い数の絵が貼り付けてあった。
この絵も後ろ姿の肖像画ばかり。

目線を正面に戻すと、また扉があった。
何だかさっきよりも小さい気がする。
少し気になりつつ扉を開けてみると、また色違いの小部屋になっていた。
小さな窓が一つ。
部屋に入ると、左側の壁一面に大きな肖像画が描かれていた。
この絵もやっぱり後ろ姿。
肖像画の周りには、ちゃんと大きな額縁まである。

前を見ると、また小さくなったような扉があった。
恐る恐る開けてみると、今度は正面の壁に大きな肖像画が描かれていた。
窓は無い。
電気も見当たらないから暗いはずなのに、部屋の中がちゃんと見えている。

窓も無いのに何でこの部屋は明るいんだろ……。

そのことに気づいた途端、気持ち悪い感覚に襲われた。
でも、その感覚に負けないぐらい不気味なのが大きな肖像画だ。
他の部屋の肖像画はどれも後ろ姿だったのに、この部屋の肖像画だけほんの少し横向きになっていた。

このまま進んで行ったら、この肖像画が段々と向きを変えるんじゃ……

さっきまでそんなに怖くはなかったのに、急に怖くなってきた。
それでも気になって、ドアノブを見つめながら扉を開けようか迷っていた。

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前にもこんな風にどんどん暗い場所に進んでいく夢を見た気がする。

そう思った瞬間、停電病院で見た夢の映像が頭に浮かんだ。


このまま行けば悪夢になるのかもしれない……。

すぐさま方向転換。
アタシは来た道を急いで戻った。
最初に立っていた廊下まで出ると少しホッとした。
でも、夢はまだ終わらない。
他の扉には入らずに、廊下を真っ直ぐ進んでみた。

十メートルぐらい歩くと、また奇妙な場所に出た。
廊下の先は、中がヤドカリの貝殻みたいな形をした建物だった。

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建物の形に合わせるように、スロープ状の通路が下へ伸びていた。
壁には肖像画がたくさん並んでいる。

花束や扇子を持っている女の人。
本を読んでいるお爺さん。
シルクハットや仮面を被る紳士淑女。
お城のようなケーキを眺める太った子供。
さっきの部屋の肖像画と違って、みんな正面を向いている。
けれど、どの肖像画も手に持っている物などで、自分の顔を隠すように描かれていた。

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通路から下を見下ろすと、一階部分は殺風景で広く感じる。
真ん中には小さな椅子とテーブルが置いてあった。
肖像画を眺めながら一階部分へ向うと、通路の下には廊下と同じようにたくさんの扉が並んでいた。
試しに一つ開けてみると、さっき入った小さな部屋が見える。
静かに閉めて隣の扉も開けてみた。
でも、ここも同じ部屋に思える。

引き返さなきゃ……。

そう思って早歩きで通路を登ると――
さっき出てきた入り口が無い。
廊下が見えるはずの場所は壁に変わり、影のように真っ黒な肖像画が飾られていた。

ヤバい。閉じ込められた?

体が一気にこわばった。
嫌なドキドキを感じながら、他に出口は無いか辺りを見渡していると椅子とテーブルが目に留まった。

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二つは月明かりのような光に照らされている。
光の入ってくる上を見ると、大きな丸い穴が開いていた。

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まるでヤドカリの貝殻の尖がっている部分を綺麗に切り落としたかのような穴。
そこから夜空が見えていた。
通路は入り口があった場所までしかない。
そこからじゃ届かない。
アタシは一階に戻り、どうしようかと椅子に座って悩んだ。
椅子やテーブルも固定されているのか、全く動かすことはできない。

高い場所……高い場所……

テーブルに突っ伏して呟いていたら
17.【XXロード : 天使と悪魔】での映像が浮かんだ。

そっか。また跳んでしまえばいいんだ。

そう思ったアタシは穴の下に立って――

アタシは忍者……跳べる。
猿のように……跳べる。
強く念じてジャンプ! 跳べない。
あの時の感覚をイメージしてみたらいけるかな……。

なんて思って、殺人鬼に追いかけられている場面をイメージしてみた。

最初に浮かんだのは、コツンコツンと響かせて歩く殺人鬼の足音。

……コツン……コツン……

呟くように頭の中でイメージしていたら、どこからか本当に足音が聴こえてきた。
上から聴こえる気がする。
見上げてみると、壁に変わっていた入り口が元に戻っていた。
けれど、出入り口の奥が何だか物凄く暗い。
暗いというよりも黒く見える。

奥を覗こうと背伸びをした瞬間、ヒュンと風を感じた。
後ろを振り返るとーー
壁には見覚えのある細長い物が刺さっていた。

これはもしかして……

それが何か思い浮かべている間に近づいてくる足音。
もう一度上を見上げると、見計らったかのように真っ黒な暗闇から緑色のモッズコートを着た殺人鬼が現れた。
前にアタシを攻撃したボーガンのような武器を右手に持っていた。

「いやいや……。アタシはイメージしただけで、こんなの望んでないよ」

ブツブツ一人で呟いていたら――

ガチャリと嫌な音がして、アタシは反射的に見てしまった。
見えたのは、顔の半分を隠すようにフードを深々と被り、ニヤッと笑う殺人鬼の口元。
その姿はまるで、飾られたたくさんの肖像画の一枚目みたいだった。

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笑ったままの口で男が〝フーッ〟と息を吹いて腕を構えた瞬間――
アタシは壁に刺さった棒を蹴って上へジャンプしていた。
ブワッと跳んで、目の前にあったお洒落な塀に着地。

自分やればできるじゃん……。

なんて自惚れながら興奮していると、足音が聴こえる。
追いつかれる前に近くの家の屋根へ跳んで、少し離れたところから外観を眺めてみた。
さっきの建物は、外から見てもヤドカリのような形をしている。
辺りは深夜のように暗くて、とても静か。
空を見上げると、暗さと明るさのグラデーションになっていて綺麗だった。

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あのオレンジ色の方角に我が家があるはず……。

そんな気がして、道路には下りずに明るい空を目指しながら少しずつ進んでみた。
途中、屋根の上から大きな時計塔が見えた。

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あの高さまで跳べるかな。

突然、無謀な挑戦意欲に駆り立てられた。

時計塔の下まで近づいてから、さっきと同じように跳んでいる自分の姿を強くイメージして、いざジャンプ!
でも……届かない!!
下へ落ちると思った瞬間――
ドンッとしゃがみ込んだような姿勢でどこかに着地した。
痛むお尻を気にしながら恐る恐る目を開けてみると、よくわからない場所にいた。
風がビュンビュン吹いている。

どうやら文字盤の下あたりに着地したらしい。
そこは時計がある部分より少しはみ出ていて、受け皿のような形をしていた。
その場所から更に上へ跳んで、天辺に近いところへ着地できたけれど、風が強くて怖い。
飛ばされないように、アタシは細長い部分にしがみ付いていた。
美術館のある辺りとは違って、時計塔の周りにある街並みは街灯や建物の灯りがキラキラしていて凄く綺麗に輝いている。

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海外の街みたい……。

なんて見とれていたら――カンッと軽い音がした。
またすぐに同じ音。
どうやら文字盤の近くに何かが当たって落ちたらしい。
息をつく暇も無くまた飛んでくる。
今度はアタシが立っているすぐ足元。

なんなの……?

イラッとしながら何かが飛んでくる方を見てみると、屋根の上から時計台を狙ってボーガンを構える殺人鬼の姿。
夢だからか、目が悪くてもはっきり見える。
アタシはビックリして、しがみ付いていた細長い部分から思わず腕を放してしまった。
仰け反るように落ちていく。

そのまま落ちた衝撃に合わせて、バンッとベッドを叩くように飛び起きた。

別サイト初回掲載日:2010年 12月27日



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