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木兎
3年前
1

2021「逆さまになっても優しく」

 母親譲りのぎょろっとした三白眼の大きなこの目。幼い頃、友達から目つきが悪いと指摘されたことがきっかけでこの目をコンプレックスに感じるようになっていた。  陽だ…

木兎
4か月前

果て、ハテ、はて?

 僕らは薄いガラス玉のような存在なんだと思う。本当に些細なことで傷がつき、その傷は薄れることはあれど消えることはない。だからと言って透かして光を乱反射するほどの…

木兎
4か月前

もう、いらないのです。なにも。そう、なにも。だからお願い…

 わたしだって天才に憧れた。天才になれると思ってた。だってみんなと考え方も感じ方もずっと違っていたから。きっと特別なんだと思っていた。そうやって信じきっていた。…

木兎
7か月前

しないしないしない

カーン。カーン。カーン。キーン。  何処かから、工事現場の足場を作るためにハンマーで金属を叩くような甲高い音が頭の中に響いて仕方がない。うるさい、五月蝿い、煩い…

木兎
9か月前

はるの報せ

 夜と朝の寒暖差、広すぎて狭すぎてどこにも行けないこの世界が靄に包まれ、真なる姿を人目から隠すその間際。  それはもうとても長い眠りの中、凍てつくほどに厳しい冬…

木兎
1年前

真似ごと と 想像

 海岸線沿いの電車、ベビーカーに乗った赤子の泣き声、忙しなく歩く人々の群れ、喧嘩別れしそうなカップル、陽の当たるベンチで談笑する老夫婦、駅前で恵まれない子供たち…

木兎
1年前

「私たちだけは許してあげようね。」

 世の中に私たちの将来が保障されるための言葉が生まれて、人々がそれを理解するまでどれだけの時間がかかるのだろうか?10年後、20年後、私が死ぬまで、はたまた太陽の寿…

木兎
1年前

私は一体誰と繋がっているのだろう

 とある博物館は、世界的にも有名な大戦の業火を生き延びたという歴史的な建造物で、今でも当時と変わらずに利用されている。その中に併設されている図書館は、ある女性が…

木兎
2年前
2

指を切ったら

 少し前に「cinema staff」(シネマスタッフ)というバンドについて書きましたが、今回は「österreich」(オストライヒ)というバンドについて書きたいと思います。いつにも…

木兎
2年前
1

あなたのこと、それから、わたしのこと

 ああ…右目を隠すための長い前髪がなくなってしまった。寂しさも弱さも物足りなさも餓えも今この瞬間に芽生える殺意も、鏡に映る私には見えないように、誰かの目に映る私…

木兎
2年前

悲しまないで

 山肌を埋めるかのように所狭しと生える草木、息を吸うたびに心地よい重みを感じるほどに空気は湿っていて、鳥の羽音や森の囁きや風にふかれ落ち葉が舞う音がこの空間を丸…

木兎
2年前
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僕らが正しいと思っている先に醜態や未練などはないと言えるか?

 僕は平常なふりをした化け物であって、常々後ろ指を刺されながら、たくさんの見知らぬ目線に体を射抜かれて、たわいもなく訪れ続ける日々の中を人目のつかない程度の当た…

木兎
2年前

week

 小さな丘の上にあるお城や宮殿のように大きな図書館。私はそこに向かってお誕生日に買ってもらった緑色の自転車を懸命に漕いでゆく。駐輪場へ自転車を止めて急いで図書館…

木兎
2年前
1

擦り切れるまで!

 普段は散文的なものを並べていますが、今日は昔話を兼ねて私の好きなバンド「cinema staff」(シネマスタッフ)と出会うまでの過程を綴ります。  高校時代、毎週聴いてい…

木兎
2年前
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アクター

 多分私はとても出来の悪い映画を飽きることなく何度も繰り返し見ているのだと思う。押し寄せるカタチのない演者の群衆は、律儀なシナリオには到底収まりきらず、生き地獄…

木兎
2年前
2

2021「逆さまになっても優しく」

 母親譲りのぎょろっとした三白眼の大きなこの目。幼い頃、友達から目つきが悪いと指摘されたことがきっかけでこの目をコンプレックスに感じるようになっていた。
 陽だまりのように暖かく柔らかな目を持つあなたはそんなわたしの目を見つめるたび、指先で優しく撫でるかの様に「羨ましい」と高い温度を持った言葉でただただ愛でてくれた。微塵程度に小さく些細な出来事でしかないのだけれど、初めて何かを肯定してもらえたよう

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果て、ハテ、はて?

 僕らは薄いガラス玉のような存在なんだと思う。本当に些細なことで傷がつき、その傷は薄れることはあれど消えることはない。だからと言って透かして光を乱反射するほどの美しさはなく、年を重ねるごとに色はくすみ、いつしか何も映らなくなる。そんな仕組みをつくったのは一体誰だったっけ?思い出せやしない。きっと、いや、間違いなく、その仕組みを作り望んだのは紛れもない僕らなのだろう。そう、愚かな僕らなのだ。

 数

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もう、いらないのです。なにも。そう、なにも。だからお願い…

 わたしだって天才に憧れた。天才になれると思ってた。だってみんなと考え方も感じ方もずっと違っていたから。きっと特別なんだと思っていた。そうやって信じきっていた。
 この世のくだらない事象全てがわたしを認めて、わたしがわたしを好きになれるその日が来ることを考えていたし、そうなると思っていた。いつかのまま愛され続けると思っていた。
 けれど結末はどうだ?結末すら迎えられずにいるではないか。自分で敷いた

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しないしないしない

カーン。カーン。カーン。キーン。
 何処かから、工事現場の足場を作るためにハンマーで金属を叩くような甲高い音が頭の中に響いて仕方がない。うるさい、五月蝿い、煩い、うるさい。
 ガヤガヤ、ガヤガヤ。コツコツ、コツコツ。
 遠くの方から雑踏のようなざわめく声が雨雲かのようにゆっくりと近づいてくる。だめだ、飲まれちゃう、早く逃げなきゃ。どこへ?どこまで?どうして?なぜ?

 カンカンカン。ガタンゴトン。

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はるの報せ

 夜と朝の寒暖差、広すぎて狭すぎてどこにも行けないこの世界が靄に包まれ、真なる姿を人目から隠すその間際。
 それはもうとても長い眠りの中、凍てつくほどに厳しい冬を乗り越えた生き物たちは、はち切れんばかりに大きく膨らんだ蕾に亀裂が入り、優美に花ひらく音を耳にした。氷がゆっくりと溶け出して体温を取り戻すかのように目覚めた彼らの鼓動は、つながり続けるこの地を伝って響いてゆき、彼らが大きく呼吸をすることで

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真似ごと と 想像

 海岸線沿いの電車、ベビーカーに乗った赤子の泣き声、忙しなく歩く人々の群れ、喧嘩別れしそうなカップル、陽の当たるベンチで談笑する老夫婦、駅前で恵まれない子供たちへの募金を呼びかける得体の知れぬ団体。
 私はごくありふれた日常のありふれた情景の中で、誰にも気づかれることなく、ましてや音を立てることもなく、静かに、ただ静かに、指先の方からゆっくりと解けてゆき、繊維よりも細かく柔らかなものとなった時、こ

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「私たちだけは許してあげようね。」

 世の中に私たちの将来が保障されるための言葉が生まれて、人々がそれを理解するまでどれだけの時間がかかるのだろうか?10年後、20年後、私が死ぬまで、はたまた太陽の寿命が尽きてしまうまで。現実はどこまでも酷いもので、誰かを擁護するために生まれたその言葉は、利益のみを求める醜く貧弱な人間の餌食となり、まんまと利用されてしまった。そして、その陰で本質的な部分に縋りながら必死に生きている人々は、当たり前の

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私は一体誰と繋がっているのだろう

 とある博物館は、世界的にも有名な大戦の業火を生き延びたという歴史的な建造物で、今でも当時と変わらずに利用されている。その中に併設されている図書館は、ある女性が命をかけて守り抜いた産物だった。

 穏やかな日差しが差し込む頃、私は博物館の中にある小さな図書館へ配属された。自己紹介の際に両腕を大きく広げ、
「わたしは命をかけてこの図書館を守ります!」
と大きな声で宣言し、強い責任感と共に溌溂とした態

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指を切ったら

 少し前に「cinema staff」(シネマスタッフ)というバンドについて書きましたが、今回は「österreich」(オストライヒ)というバンドについて書きたいと思います。いつにも増してさらに面白くない文章ですが、お許しください。

 高校1年生の秋ごろ。cinema staffに出会う少し前のこと。当時よく聴いていたバンドのプロフィールを探っているとthe cabs(ザ キャブス)というバン

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あなたのこと、それから、わたしのこと

 ああ…右目を隠すための長い前髪がなくなってしまった。寂しさも弱さも物足りなさも餓えも今この瞬間に芽生える殺意も、鏡に映る私には見えないように、誰かの目に映る私には見えないように。そうやって隠すための卑怯な手段を選び続けたからか、ひどい喪失感が影を踏みここから動けなくなってしまった。
 僕らがいる部屋には窓は一つもなく、あるのは外に繋がっているドアのみ。部屋の中は全くと言っていいほど手入れが行き届

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悲しまないで

 山肌を埋めるかのように所狭しと生える草木、息を吸うたびに心地よい重みを感じるほどに空気は湿っていて、鳥の羽音や森の囁きや風にふかれ落ち葉が舞う音がこの空間を丸々飲み込んでしまったかのような崇高な場所。そんな場所にまるで世界から切り取られた逸れものようにポツンと古い一軒の家が立っている。僕はそこで生まれ育った。
 僕の家族は姉ひとりで、父も母も物心ついた頃にはもうどこにいなかった。大部屋の日当たり

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僕らが正しいと思っている先に醜態や未練などはないと言えるか?

 僕は平常なふりをした化け物であって、常々後ろ指を刺されながら、たくさんの見知らぬ目線に体を射抜かれて、たわいもなく訪れ続ける日々の中を人目のつかない程度の当たり前に似た何かを必死に繕い、その化けの皮をかぶりながら過ごしている。確かに、僕が日々感じている苦痛というものは君が言うように勘違いや思い違いや妄想のようなものなのではないかと何度も思っているが、どんなに理解を求めてもただ月日ばかりが流れ、僕

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week

 小さな丘の上にあるお城や宮殿のように大きな図書館。私はそこに向かってお誕生日に買ってもらった緑色の自転車を懸命に漕いでゆく。駐輪場へ自転車を止めて急いで図書館の大きな入り口へ向かうと、その手前で天真爛漫な双子の兄弟、物静かな女の子、眼鏡をかけた賢そうな男の子が私が来るのを待っていた。図書館の中には児童館や託児所のような施設が組み込まれており、私はそこへ通うひとりだった。私を待ってくれていたみんな

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擦り切れるまで!

 普段は散文的なものを並べていますが、今日は昔話を兼ねて私の好きなバンド「cinema staff」(シネマスタッフ)と出会うまでの過程を綴ります。

 高校時代、毎週聴いているお気に入りのラジオがあった。ある日、番組内でパーソナリティの人が「次の曲、cinema staffでニトロ」と曲紹介をすると、とても泥臭いバンドサウンドが流れた。その頃の私は丁度、残響レコードに所属するアーティストの楽曲を

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アクター

 多分私はとても出来の悪い映画を飽きることなく何度も繰り返し見ているのだと思う。押し寄せるカタチのない演者の群衆は、律儀なシナリオには到底収まりきらず、生き地獄のような小さなこの場所でひしめき合い、蹴落とし合いながら、神が悪戯に振り分けて与える"役"を授かるために血眼になって縋ろうとしている。
 私はその光景をかなり近しいどこかで何度もそれはもう呆れるほど見たことがある気がしていた。しかし、記憶を

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