僕らが正しいと思っている先に醜態や未練などはないと言えるか?

 僕は平常なふりをした化け物であって、常々後ろ指を刺されながら、たくさんの見知らぬ目線に体を射抜かれて、たわいもなく訪れ続ける日々の中を人目のつかない程度の当たり前に似た何かを必死に繕い、その化けの皮をかぶりながら過ごしている。確かに、僕が日々感じている苦痛というものは君が言うように勘違いや思い違いや妄想のようなものなのではないかと何度も思っているが、どんなに理解を求めてもただ月日ばかりが流れ、僕の中には不純物そのものとして残り続けているし、君の目にはそれが病として映ることはこれまでもこれからも決してない。なによりも僕も君もそれが自己防衛のための代償として自発的に起きてしまったことによる病的な何かを患っているものだと知るはずもない。なぜなら、無知というほどに僕は僕のことをあまりにも知らなさすぎるからだ。
 気から病という言葉が先行する澄み切った社会の中では、僕のような立場の人間はどう考えてもその範疇からあぶれてしまうし、絡みついて剥がれることのない呪いのような簡単な言葉や思考からはどこまで行ったって逃れることはできない。それでも社会の波の中で生き続ける君が言った事に対して間違っているとは思わないし、君もそれを信じて生きていけば間違いなく僕らのような人間にならずに普遍的かつ平凡な生活を一生涯送ることができると信じている。そしてこの世のなによりも心の底から願っている。
 今この時に僕が酒という毒素を体に取り込むことに大きな意味はなく、こうして文字を打ち込んでタラタラと支離滅裂な文章を打ち込むことにも理由はなく、エゴに抗いきれなかったただの弱者の象徴としてこの醜く穢らわしい生き方をこの場所に残すということ以外の意味を成し得ることはない。他者の力に身を引き摺られ、無様ながらに生かされてしまっていることに対して、酷く負い目を感じながらなぜこうして生かされているのかと何度も理由を探してはいるが、それはあくまでも「思っているだけ」であって自らそれについて探求することもなければ、頼り切っている他力的なものすらも僕にそれがなんなのかを教えることはなく、それどころか僕が何かしらの理由のために、そして、誰かのために生きていかなければいけない状況を外部から強いられてるのが現実である。もしも生きていかなければならない理由として、殺してしまった命や壊してしまった人生についての罪を知らしめるためなのであれば、既に十二分に足りているわけで、それなら手早く息の根を止めて罪の清算をして、正しい作法で制裁を下すことがなによりも優先されるべきことだと思うが、神様は憎たらしいほどにお遊びが好きだからなかなか次のフェーズへ進ませてくれない。そんな神様は、こんな生き地獄の中で僕が正しく呼吸をしていくこと自体何かの間違いでしかないということを早く教えてやらねばならないし、知っておくべきなんだと思っている。
 ここまでくだらなく終わりのない戯言を散々吐いておいてやっとわかったことがある。管のように繋がれた全ての事象に対して呆れてしまった。正確に言えば、とっくにくだらなくてつまらないものだと思っていたものに対して、少しの希望を委ねていたがために、意識的に目を瞑って知らないふりをしてきた。もう何にもなれなくていい。もう何にもなりたくない。何一つ笑えないままで、この腐った体を醜い体を恥晒しのこの体を地中の奥深くへ埋めて、楽園のその先の宇宙のその果てで愛を育んでくれたあなたが帰る時を待ち続けていたい。