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夢の話

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記事一覧

私は一体誰と繋がっているのだろう

 とある博物館は、世界的にも有名な大戦の業火を生き延びたという歴史的な建造物で、今でも当時と変わらずに利用されている。その中に併設されている図書館は、ある女性が命をかけて守り抜いた産物だった。

 穏やかな日差しが差し込む頃、私は博物館の中にある小さな図書館へ配属された。自己紹介の際に両腕を大きく広げ、
「わたしは命をかけてこの図書館を守ります!」
と大きな声で宣言し、強い責任感と共に溌溂とした態

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week

 小さな丘の上にあるお城や宮殿のように大きな図書館。私はそこに向かってお誕生日に買ってもらった緑色の自転車を懸命に漕いでゆく。駐輪場へ自転車を止めて急いで図書館の大きな入り口へ向かうと、その手前で天真爛漫な双子の兄弟、物静かな女の子、眼鏡をかけた賢そうな男の子が私が来るのを待っていた。図書館の中には児童館や託児所のような施設が組み込まれており、私はそこへ通うひとりだった。私を待ってくれていたみんな

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微笑みを

 八畳の部屋の隅に置いてある黒くて四角いブラウン管のテレビは、毎朝寝ぼけていることを理由に働こうとしない私たちの脳を起こすためのBGMとしてつけられているがそれ以上の意味を持つことはなく、ただただ垂れ流されている。
 白い靄のかかったような思考でぼんやりとテレビを見ていると女子大生の自殺のニュースが取り上げられていた。そのニュースを見たとき、脳を直接揺らされ、殴られたような強い刺激を感じた。小さな

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形を失くしても、尚

 私は近くにある警察署へと転がり込むように駆け込みました。
「あの、すみません。」
私の目の前を横切る青い制服を着た女性警察官に声をかけて呼び止めると、慌てた私の様子を見て、
「落ち着いてください。どうされました?」
と優しい口調で対応してくれました。乱れた息を整えながら、
「あの…。私の大切な人と昨日から連絡がつかなくて。」
そう言うと女性警察官は冷静に、
「とりあえずゆっくりと深呼吸をして落ち

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ここは西の国…戦争があって…それから…

 霧のかかった薄暗い森の奥。顔のない深緑の軍服を着た人たちの前で跪いていた。私の両脇に立つ二人が腰に備えた鞘から剣を抜くと私の首筋に当てる。私の目の前に立つ一人の仲間が合図をすると、グッと力を入れて剣を押し込み始め、二本の鋭い刃は音を立てることなくミチミチと肉を引き裂いてゆく。あぁ、これが死ぬということなのかと思いながらも不思議と痛みや恐怖はなかった。今この瞬間のたった数秒は私の中で何倍にも何十倍

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フローレンスは僕を赦さない

 血の気を全く感じないほどに真っ白な肌、ビー玉のように透き通った青く大きな瞳、毛先まで真っ白な長いまつ毛、綺麗に切り揃えられた前髪と腰まで編まれた艶やかな長い白髪、口角一つ上がることなく、フランス人形のように静かで整った容姿をしたアルビノの少女。そんな神秘的な美しさを持つ少女が大きな戦争を起こした。汚れひとつない真っ白な軍服を見に纏う彼女の姿は、戦いの女神のようでもあり、冷徹な独裁者のようでもあっ

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「深い深いところで私は見たんだ!」

 東の国では大国同士の大きな戦争があり、それによって二つの国が一つに統合された。分厚い灰色の雲が空を覆い、今にも雨が降り出しそうなある日のこと。私は理由もなくその国を訪れていた。レンガ造りの街並みを抜けた先にある大きな広場。その真ん中へと人々が何かを取り囲むように集まっている。何故か街にいるのは女性ばかりで、仕事や家事の最中に外へ出てきたのか、灰色や薄緑やベージュと言った地味な色のワンピースを身に

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多重夢

 耳元で携帯のアラームが鳴り出した。寝ぼけたまま手探りで携帯を探し出し、画面に触れてアラームを止めると、画面には午後四時と表示されている。あと一時間程でバイトへ行かなければならないと思うと憂鬱な気分になり、布団の中へ再び潜り込んだ。
 しばらく布団の中で憂鬱な気持ちと葛藤していると、珍しく、妹がわたしを起こしに来た。いつもはマイペースで他人のことなどお構いなし、自分中心でないと納得いかないと言うほ

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廃病院で私は悪魔を見た

 廃墟と言っても過言ではないほど廃れ果て、人の気配が全くない病院の一階の小会議室のような少し広い部屋に私はいた。部屋には、胡散臭い男性医師と笑顔を張りつけただけのような女性看護師と私の三人がいた。
 私は左足の膝部分にできた大きな腫瘍を摘出するための手術の説明をするためにこの部屋へ呼び出されたことを思い出した。医師たちは当日の日程と手順の説明を始めたが全く話が体に留まらず、右から左へと流れていった

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宝物でもなんでもない

 18世紀のヨーロッパのように洒落ている古びた図書館に私はいました。薄暗いあかりだけが灯り、不気味さが醸し出され、館内は大きな本棚でいくつも仕切られていて、複雑な形をしているとても不思議な空間でした。
 何故なのか、私は幼い頃読んできた宝石に纏わる本の在処を知りたくなり探し始めたのですが、ものを探すことがとても苦手なのでなかなか見つかりませんでした。友達との約束の時間が迫っていたので諦めて約束の場

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少女の微笑みには幼さが残っている

 セピア色の古びた映像を見ていた。草臥れた服を着ている人々が路地をとぼとぼと歩いている。
 突然、後方から一発の銃声が聞こえた。すると、目の前を歩いていた人の頭が弾け飛んだ。血飛沫をあげることなく、まるで空間ごと切り取られたかのように頭部が無くなった。
 ひとり、またひとりと頭が弾け飛んでゆく光景を、私はただ眺めることしか出来なかった。映像が終わると、意識が途切れてしまった。
 意識が繋がると喫茶

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