太田初夏

瀬戸内海に面する小都市に住んでます。 詩や散文を中心に配信します

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    自作の散文

  • 妻恋う鹿は笛に寄る(自作の詩と散文)

    瀬戸内海に面する小都市で暮らし、働きながら詩や散文を詠んでいます。情景を言葉として、心で感じたことを情景にして描くことを心がけています。言葉の好きな方と交流できたらいいなと思っています。

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    100文字で作る散文です。

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記事一覧

花屋の少女

一週間に一度だけお店が開く花屋があった。花屋では可愛い少女が一名で切り盛りをしていて、朝一番太陽が昇る時間にお店が開き、お店の花がなくなると店じまいになる。なぜ…

太田初夏
2日前
5

魔法

世の中の武器が食糧に変わる魔法を手に入れたい。武器商人がいくらせっせせっせと武器を作って運んでも、撃てば撃つほど、野菜や花の種子が散らばって、ミサイルからは大量…

太田初夏
13日前
3

破壊的創造力ゼロ地点

自分は無力だ、無知だ、愚か者だ、恥知らずだ、情けない奴だ、考えなしだ ここがスタート地点なので、何かにつまずいたり、凹んだり、うまくいかない時には立ち返る そし…

太田初夏
2週間前
2

バス停で待つ

バス停でバスを待っていると、二人に声をかけられた。 一人目は90歳の誕生日だというお爺さん。近くまで膝の痛みに気をつけながら散歩しているのだそう。見知らぬ人だが、…

太田初夏
2週間前
3

夏の終わり

夕飯を終え、キッチンで、暮れていく夕陽を見ている。夏の終わりの気配のする夕暮れ、盛んに鳴いていたクマゼミはヒグラシへ、そして、陽が落ちると、ヒグラシから秋の虫の…

太田初夏
2か月前
10

正義とは?

<正義とは?>これは妻からの質問です。昔からウルトラマンで、ウルトラマンが負けて、いつも都合よく負けている怪獣たちが勝たないかなという目線で見ていた歪んだ子ども…

太田初夏
2か月前
10

ピーチシャーベット

莫大な財産を積むから、その花を譲ってほしいと言われて、有無を言わせず射殺する夢を見た真夜中に、寝言で喉が渇いたとぼそっと呟いた妻に、土砂降りの雨に打たれながら、…

太田初夏
3か月前
6

漁夫の利

妻の実家の静岡への行き来で新幹線を利用していて、最近多いのが円安需要と政府のインバウンド政策による外国人観光客である。たくさん買い物をし、バイタリティに飛んでい…

太田初夏
3か月前
10

いつか終わりの来る短い命に託して

空に預けた悲しみは堪えきれなくなって、私の代わりに涙を流してくれた。誰かの歌声の響く街かどにいて、夢を物語にして昇華している。 いつか終わりの来る世界の短い命に…

太田初夏
3か月前
10

蝶の舞(第3話)

川の周辺に生物たちが快適に棲める多自然型河川工法を学ぶために大学の専攻をした明日香は、ますますその夢を確固たるものにして、川の氾濫や治水なども総合的に含めた研究…

太田初夏
3か月前
5

蝶の舞(第2話)

傷だらけになった明日香は、一人住まいの自宅に戻り病院にも通った。何があったのかいろいろな人に聞かれたが、多くを語ろうとしなかった。明日香の住まいには研究の為に持…

太田初夏
3か月前
7

蝶の舞(第1話)

(あらすじ) 明日香は多自然型河川工法を学ぼうとしている大学4年生。幼いころから虫も殺さない優しい子どもだった。ある日小さな虫かごに蝶を乱雑に詰め込んだ大学生3…

太田初夏
3か月前
10

夫の矜持

20は手を出さず、30にして悩み、 40にして惑わず、50なら鮮度チェックは必ずする スーパーの割引セール 定価からの割引なので いくら安いかは計算して手に入れる 買い…

太田初夏
3か月前
7

義父の形見

義父が亡くなって、妻が義父所有のカメラなどをこちらに持ち帰ってきた。義父は小鳥を撮影するのが趣味でしたので、かなり大きめの望遠レンズから、スコープ、フィルムカメ…

太田初夏
3か月前
6

天使との対話

傷だらけの天使と出会った。深手の傷を負い、肩で呼吸をしていた。手当をしながら、どうしてそんなに傷だらけなのか尋ねた。 天使たちは、人間の中に棲んでいる悪魔と闘い…

太田初夏
4か月前
3

シルバー

ろくでなし! 彼女にとって、私のFirst impression。 私は弾みで12台連続で横転させた自転車をそのままにして立ち去ろうとしてしまったのだ。それだけではない。大学の講義…

太田初夏
4か月前
5
花屋の少女

花屋の少女

一週間に一度だけお店が開く花屋があった。花屋では可愛い少女が一名で切り盛りをしていて、朝一番太陽が昇る時間にお店が開き、お店の花がなくなると店じまいになる。なぜ一週間に一度かと言うと、そのほかの日は森や野原や自家栽培の畑に花摘みに行くからである。遠いところは往復二日かかるところもあるということらしい。

少女の売るお花はどのお花も瑞々しく、買って帰っても長い時間美しさを保つということで評判だった。

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魔法

魔法

世の中の武器が食糧に変わる魔法を手に入れたい。武器商人がいくらせっせせっせと武器を作って運んでも、撃てば撃つほど、野菜や花の種子が散らばって、ミサイルからは大量の食糧がばら撒かれて、埋められた地雷からは花が咲く。

そんな革命を起こしたい

破壊的創造力ゼロ地点

破壊的創造力ゼロ地点

自分は無力だ、無知だ、愚か者だ、恥知らずだ、情けない奴だ、考えなしだ

ここがスタート地点なので、何かにつまずいたり、凹んだり、うまくいかない時には立ち返る

そして、また一から考え直して思考を組み立てて、補修して、私自身の命の力を引き出して、向き合う

その為には、呪詛や愚痴や独り言や地球の破滅や自分の死まで考えて、ようやく導かれる何かにたどり着く

破壊的創造力ゼロ地点
落ちるところまで落ちて

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バス停で待つ

バス停で待つ

バス停でバスを待っていると、二人に声をかけられた。

一人目は90歳の誕生日だというお爺さん。近くまで膝の痛みに気をつけながら散歩しているのだそう。見知らぬ人だが、簡単にお祝いの言葉伝えると、お兄さんは仕事頑張ったんだね、顔に書いてるよと笑顔で話してくれた。人生は短いから、しっかり働いてしっかり楽しんでなって、足を庇いながらどこへと知れず去っていきました。

二人目は30代前後の女性。いきなり近づ

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夏の終わり

夏の終わり

夕飯を終え、キッチンで、暮れていく夕陽を見ている。夏の終わりの気配のする夕暮れ、盛んに鳴いていたクマゼミはヒグラシへ、そして、陽が落ちると、ヒグラシから秋の虫の音に変わる。尾形亀之助の『美しい街』を読む。闇に紛れて、真っ白な紙面に、筆で染みを落としたような美しい詩は、形をなくしつつあり、私自身も像を失っていく。夏野菜の炒め物の香りも、冷蔵庫のコンプレッサーの音も、気配を失い、詩集をポロンポロンとめ

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正義とは?

正義とは?

<正義とは?>これは妻からの質問です。昔からウルトラマンで、ウルトラマンが負けて、いつも都合よく負けている怪獣たちが勝たないかなという目線で見ていた歪んだ子どもだった私に正義を語る資格があるのかと思うのですが、私なりの解釈で言います。正義とは、そこに悪がないものに正義が宿るのかなと思っています。少年サンデーに、小山ゆう著の「スプリンター」という漫画がありました。その序盤に、お祭りで大多数の大人たち

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ピーチシャーベット

ピーチシャーベット

莫大な財産を積むから、その花を譲ってほしいと言われて、有無を言わせず射殺する夢を見た真夜中に、寝言で喉が渇いたとぼそっと呟いた妻に、土砂降りの雨に打たれながら、ピーチシャーベットを買ってきた。匙ですくって、そっと唇に滑らせて食べさせると、寝ぼけたまま笑顔になった。

烏の住処に転がったガラス玉に逆さまに映る青空は果てしなく深い。縄張り争いの果てに得た場所は孤高の証。廃墟の屋上から真っ逆さまに飛び降

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漁夫の利

漁夫の利

妻の実家の静岡への行き来で新幹線を利用していて、最近多いのが円安需要と政府のインバウンド政策による外国人観光客である。たくさん買い物をし、バイタリティに飛んでいて、陽気であり、日本人の乗客が大人しく乗っているのとは対照的である。

少し気になっているのが、荷物の大きさや多さで、外国人観光客は頭上の荷物棚を占拠していて、自分の頭上エリアを通り越して、反対側にまで置く人も出る始末。こうなるとマナーとい

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いつか終わりの来る短い命に託して

いつか終わりの来る短い命に託して

空に預けた悲しみは堪えきれなくなって、私の代わりに涙を流してくれた。誰かの歌声の響く街かどにいて、夢を物語にして昇華している。

いつか終わりの来る世界の短い命に託して、欲張りな私は詰め込み過ぎて、悲鳴をあげているのかもしれない。花から見て私には名前がないんだろう。静かに微笑んでくれる。

残酷で優しい世界の掟。幸せも不幸もどう感じるかは自分に託されている。どんなに打ちのめされても詩を詠み、世界に

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蝶の舞(第3話)

蝶の舞(第3話)

川の周辺に生物たちが快適に棲める多自然型河川工法を学ぶために大学の専攻をした明日香は、ますますその夢を確固たるものにして、川の氾濫や治水なども総合的に含めた研究を深めていき、成果を上げていった。河川周辺で、人間と営んでいる動植物たちが共生できる場所にする研究がどんどん進んだ。明日香の周りをまとわりつく昆虫たちと、明日香は次第に会話ができるようになっていて、それはテレパシーに近いコンタクトの取り方で

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蝶の舞(第2話)

蝶の舞(第2話)

傷だらけになった明日香は、一人住まいの自宅に戻り病院にも通った。何があったのかいろいろな人に聞かれたが、多くを語ろうとしなかった。明日香の住まいには研究の為に持ち帰った水生昆虫たちの水槽が並んでいたが、研究の為にデータを取れば、必ず丁重に元の場所に水生昆虫や植物たちを返していた。

それ以降、明日香の周りでは不思議な現象が起こるようになった。蚊やブトなどに刺され放題だったのに、茂みに入ってもどんな

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蝶の舞(第1話)

蝶の舞(第1話)

(あらすじ)
明日香は多自然型河川工法を学ぼうとしている大学4年生。幼いころから虫も殺さない優しい子どもだった。ある日小さな虫かごに蝶を乱雑に詰め込んだ大学生3人に乱暴されてしまう。どんな時も凛として自分の意思を通し強く優しく生きてきた明日香に、どんな結末が待っているのか?

<本文>
(第一話)
梅雨が明けた。前線が刺激した線状降水帯が各地で被害をもたらした。明日香の学んでいる街でも、豪雨の爪痕

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夫の矜持

夫の矜持

20は手を出さず、30にして悩み、
40にして惑わず、50なら鮮度チェックは必ずする

スーパーの割引セール
定価からの割引なので
いくら安いかは計算して手に入れる

買い出しを任されている夫の矜持

義父の形見

義父の形見

義父が亡くなって、妻が義父所有のカメラなどをこちらに持ち帰ってきた。義父は小鳥を撮影するのが趣味でしたので、かなり大きめの望遠レンズから、スコープ、フィルムカメラもかなりの数あった。本来ならカメラ屋でメンテナンスかけて使えるようにするか、中古で買い取ってもらうかする予定でしたが、Excelで目録を作りつつ、価値やもろもろについてネットで調べながら片付けていくと、義父の趣味に対するスタンスや、カメラ

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天使との対話

天使との対話

傷だらけの天使と出会った。深手の傷を負い、肩で呼吸をしていた。手当をしながら、どうしてそんなに傷だらけなのか尋ねた。

天使たちは、人間の中に棲んでいる悪魔と闘い、半死半生の目にあわされても、人間が正気を保っていられるように奮闘しているということだった。人一倍強欲で醜い心の私の天使は、さぞかし傷だらけだろうと申し訳ない気持ちになった。

恐るおそる私の天使について聴いてみた。

私の天使は、現在7

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シルバー

ろくでなし!
彼女にとって、私のFirst impression。
私は弾みで12台連続で横転させた自転車をそのままにして立ち去ろうとしてしまったのだ。それだけではない。大学の講義で彼女が風下にいるにも関わらず、おならをしてしまったのだ。それは玉子の腐ったような強烈な匂い。

苦痛に歪む彼女に、ろくでなし!と吐き捨てるように言われてから、30年。私は彼女と結婚して、銀婚式を迎えた。いまでは彼女の私

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