太田初夏
瀬戸内海に面する小都市で暮らし、働きながら詩や散文を詠んでいます。情景を言葉として、心で感じたことを情景にして描くことを心がけています。言葉の好きな方と交流できたらいいなと思っています。
自作の散文
100文字で作る散文です。
20年前から詩を詠んでいます。出会った方とのやりとりの中で生まれた作品たちに、自分自身が育てられて、何とか生きてきました。こうなればいいのにという願いや、胸に抱く形にならない想いを形にする時間を、こよなく愛しています。2021年に作品を通して知り合った人と、コロナ禍の影響もあり、一度も会わずに婚約、翌年に入籍。二人四脚で型にはまらない日常を一緒に生きています。
月も空も山も海も花も そして、人も 美しい季節 輝いていて、影があって 歌がある
右耳を悪くした 鼓膜に炎症を起こしているよう 耳の奥に 海を飼っている ざざん、ざざん 静かに響いている 瀬戸内海のような波 貝殻を聴いているよう 経験したはずの忘れかけていた 失われたデジャヴ 治るまで楽しもう 次の耳鼻科は金曜日 #ひとりごとのようなもの #笑顔の日 #小さな幸せ #自分らしく生きる #至福のひととき
秋の空の色をそのまま映したような薄藍色の湖がある。スカイラインを縫ってたどりついた山の奥にひっそりとたたずむ湖。 由香里の目の奥にわななく光の色は、その湖の薄藍色に似ている。誰も寄せつけようとしない淋しげな色。由香里はその湖が好きで、悲しい気持ちになると私に連れて行ってとせがむ。 その湖の本当の名前を二人は知らない。数年前に由香里とスカイラインをドライブ中にわき道に迷い込んで、偶然見つけた湖だった。二人のあいだでは、その湖をエオリアンと呼んでいた。彼女がそう名づけ
部屋に青い蝶が飛んでいる。偶然に偶然が重なり、縁と縁が結ばれてたどりついた蝶たち。いつでも逃げて行けるように窓を開け放していていも、窓から外へ飛んでいく様子はなく、狭い部屋ながらも居心地良く過ごしてくれているようだ。部屋の隅に青いバラを挿して、白いお皿に砂糖水を吸わせた脱脂綿を置いている。青い蝶たちは時折、蜜を吸っている。結局のところ、私は誰かを幸せにしてあげられる人間ではなくて、気ままな詩人でふらりふらりと世間を渡り歩くだけの能しかない。そのことは十分ぐらい分かっていて、誰
風の強い日を選んで、私は旅立つ。蒲公英の種が花から離れて、冠毛を使って出来るだけ遠くへ飛ぶように。 低気圧が呼び寄せる上昇気流の風が舞い上げる。私は私を捨てて私になる。乱れることを恐れずにどこへ着地するのかも迷わずに飛んでいく。
友人からフラワーギフト券を頂いていたので、早速使って、妻に花束をプレゼントした。白と緑とピンクを基調にして少し薔薇の花を入れて、この値段で花を選んでくださいとお願いすると、とてもきれいに仕上げてくださった。玄関を開けて、妻にプレゼントすると、とても喜んでくれた。
何でもない風景に美を見出す君は 幸せそうに微笑む 季節の移ろいの中で美しくなる君は 他に代わりのない存在として溶け込む いつか私たちは全てを手放し 次の世界へ旅立つ いつか私たちは傷つく事から解放され 人の弱さを認められる いつか私たちは希望を見出し 絡まった糸から美しい布を紡ぐ
深い沼からひと筋の気泡が立ち昇っていた。魚がいるのかな?こんな汚れた沼にでも魚は棲んでいるんだと木こりは横目で通り過ぎようとしたが、気泡からは何かメッセージ性のようなものを感じた。居ても立っても居られなくなって、異臭すら漂う沼に飛び込んで深く潜った。服やズボンや靴やら全て水分を含み邪魔だったが、木こりの持ち込んだ気泡と立ち昇ってくる気泡が混ざらないように、慎重に潜った。かなり深くて息絶え絶えになりながら、底に着いた。ロープでぐるぐるに巻かれて、人の形をした重たそうな汚れた物体
古くから馴染みある曲を聴きながら、新しいことを考えている夜。キッチンの窓から見える景色が暮れていくのを長い間見つめている。 人を理解するよりも、ニコニコして穏やかに過ごして、否定も肯定もせず信じて寄り添うことが大事なのかもしれない。 いつのまにか日が暮れて、いつのまにか歳をとっている。そんなことがキラキラして貴重なことのように感じる。 僕にしかできないことってなんだろう? 僕は今していることこそ、僕にしかできないことで、特別な日々だと思っている。何かに恵まれている訳で
誤解されても、後ろ指さされても しくじっても、陰口叩かれていても 無視されても、それみたことかと言われても 貧乏でも、病気になっても うまくいかないことだらけでも ずっと自分を信じて 信じる道を進んできた ずっと自分に期待して コツコツ地道にやってきた 私は私を生きている 対話しながら、真正面からぶつかってきた 死と向き合う中で、自分を知った もうダメかもしれないと思う時、助けてもらった 格好いい姿も生き方もできない だらしないくたびれた背の役立たずがそこにいる
明け方、東の空に明るい星 難しい道のりを歩いてきた 身の回りの方たちに繋ぎ止めてもらった命 出会った方たちにかけてもらった言葉の 一つひとつが、私の財産 ひときわ輝く明るい星 苦しかったことも寂しかったことも 闇に包まれて行き先が分からない日々も いつか明けて、光さす
この世に終焉があるとしたら それは夏の終わり 魂に既視感あり 寂寞としていて、、躯に刻まれている
底なしという噂の沼があった。街外れの、薄暗い雑木林を抜け、湿地に足を取られながら進んだところ。鬱蒼と茂るミズアオイ、オニバスの向こう側に、鈍く光る沼が横たわっていた。その沼には体長2mを超える主の草魚がいるとされ、うっかり足を滑らせて落ちた時には、もがきながら沈み、二度と浮かび上がれないとされて、誰も近づこうとしなかった。 しかし、夕暮れ時に西の空に欠けた月が輝く数日だけ、その底なし沼に近づき、月が西の果てへ沈んでしまうまで、淵にたたずむ男がいた。 男には家族がいなかった
言葉にならない 想いがあるなんて なんて素敵なことでしょう 想いは旅して この胸に宿るとき わたしは新しい舞台で踊っている
見えない何かに守られて ここに存在する 見えない何かを守って ここに存在する それは過去現在未来 遠く及んで形づくる 何にもしてないようでも 私の風は誰かの風になり 誰かの風がまた誰かの風になる