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100文字散文

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100文字で作る散文です。
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記事一覧

竜胆

竜胆

竜胆には色気がある。悲しみに暮れながらも、凜と生きようとする美しさがある。草陰から這い出て咲く花のしなやかな茎には、野性の力がある。自らの癒しの力を信じてやまない紫紺の花は空への憧れが秘められている。

梅雨明け散歩

梅雨明け散歩

梅雨明けのカラッとした風の吹き抜ける中、妻と一緒に散歩した。稲の花が咲いていたり、コガネムシが百日紅で交尾していたり、向日葵が咲いていたり、畦道に尻尾の生えたままの蛙がいたり、季節感感じる散歩でした。

夏越祭

夏越祭

夕方、妻と二人で、神社の夏越祭に行った。階段の端には、灯籠に蝋燭の火が点り、参拝に来た人の列に並んで、輪越しをした。何を願うでもなく、ただ祈る。雑踏の音もしんとなり、ヒグラシの鳴き声だけが響いていた。

無意識との語らい

無意識との語らい

詩を詠んでいる時間は無意識との語らうひと時。自分を一番解放できる。死と生の狭間に溝がある。そこが私の居場所で、闘い、安らぎ、癒される。思ったより一生は短いから、ひたむきに向き合い、精力的に作品を創る。

虹🌈

虹🌈

自転車置き場で虹を見つけた。美しく輝いて、私の心を鷲掴みにした。誰も見てない事に気を払い、虹を盗んだ。自転車を漕ぐと、虹は薄くなったり濃くなったりを繰り返し、遂に消えた。お天気雨の心はクリアに晴れた。

鬼ユリ

鬼ユリ

自転車の前カゴに鬼ユリを差して帰った。蕾やらムカゴやら落下しないように、段差に気をつけながら、そっと運転した。もうすぐ梅雨明けして、本格的な夏がやって来る。自宅の妻の笑顔を想像しながら、太陽の光差す。

鞄の中身

鞄の中身

鞄の中身を並べて見せ合った。私の鞄には、ヨーグルトキャラメル、薔薇のコサージュ、ところてん、妻の鞄には、トミカのフェアレディZ、絆創膏、ニンニクが。互いに何入ってるんだろうねと顔見合わせて笑い合った。

ねむの木

ねむの木

ねむの木の下に居座り、四方に伸びる枝葉から垣間見える花の数を数えたい。妻を膝枕して、首元から頭の凝りを探りマッサージしながら、花の蜜を集める揚羽蝶を追う。寝ても醒めても落ちる花房から、甘い香りが漂う。

くだらない奴ですが

くだらない奴ですが

私はくだらない奴ですが、よろしくお願いします。いやいや、私の方がくだらなくて愚かな奴です。どうぞよろしくお願いします。くだらなさは競い合うことではありませんね。でも、なんだか気が合いそうですね、私達。

熟れた果実

熟れた果実

もうすぐ陽に染まる季節になる。熟れた果実の皮を剥いで、炭酸水に落として飲み干した。空に透かした孤独を草いきれにかき消し、すくっと立ち上がった。なぜ私は生きる?それは影を知り、弱さに向き合ってきたから。

狂人

狂人

裸を曝け出して、狂人の如く振る舞う。誰も寄り付かなくなって、出会ったのが妻だった。愚かな私は夜になると眠くなる闇の帝王で、妻は奇声を発しながら連れ去られるお姫様。幽閉して毎食手料理を作り、身体を洗う。

ぼんやりと光る

ぼんやりと光る

自分が死ぬ夢を見た朝、目覚めると上空には月がぶら下がっていた。1年に3センチずつ離れている月と、死に向かってひたすら走っている自分は、似ている気がした。ぼんやりと光ったまま、日々を積み重ねていきたい。

宙の底

宙の底

宙の底にいる僕たちは、青に染まり、水を讃えている。誰のものでもない星で、自由に生きることができる。愚かな僕たちは、間違った選択をして見失いがちだが、宙に心を解き放つことで、自由を取り戻すことができる。