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短歌・歌集

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歌集・短歌・短歌に関係ある日記など。
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2023年4月の記事一覧

エイプリル・フールの度に困っちゃう程よい嘘のレパートリーに

短歌を「読む」ことについての仮説。

短歌を「読む」ことについての仮説。

色々な歌集の紹介文を書いて
気付いた事がある。

それは
歌集を読む時に自分の経験と照らし合わせて、分かる短歌を紹介しがち!
ということだ。

分からない短歌を紹介して
分からん!以上!
では文章にならない。

よって仮説。
読みの幅を広げるには経験の幅を広げると良いのではないか。

以上、雑談終わり。

↓関係ない写真。

短歌集『閑日月』を読む。−重厚感とユーモア−

短歌集『閑日月』を読む。−重厚感とユーモア−

樋口忠夫氏の歌集『閑日月』。

短歌歴の長さや人生経験により内容に
重厚感がある歌集だと思う。

五首選で紹介。

携帯電話やパソコンなどのパスワードを間違えて、ログイン出来ないことがある。

それを「門前払い」としたおかしさに惹かれた一首。

やりたい事は多くても時間に限りがある。

文語で詠むと、日常のふとした考えも重みのある一首になる。

犬と作者自身を比べるクールなユーモアがある。

この

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『サウンドスケープに飛び乗って』を読む。ー想像力のひかりー

『サウンドスケープに飛び乗って』を読む。ー想像力のひかりー

ポップで明るい、
不思議なイラストの表紙に惹かれて
購入。

『サウンドスケープに飛び乗って』
久石ソナ氏の歌集。

五首選で紹介。

月が剝がせそうという
・月に手が届く感。
・月を剝がしたらどうなるのか。
など面白いポイントが多い一首。

朝の月の色の薄さが際立つ。

俳句を読み短歌を詠む者としては、
こういう一首に惹かれる。

俳句だと季語を二個使うと季重なりだが、短歌なら大丈夫。

季節の

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中澤系歌集『uta0001.txt』を読む。

中澤系歌集『uta0001.txt』を読む。

黒い装丁の
中澤系歌集『uta0001.txt』。

雁書館刊行の銀色の装丁の歌集は
プレミアが付いていたり、
所持している古本屋と都合がつかず買えなかった。

そうして銀色の装丁の歌集を買えずにまごまごしていたら、
黒い装丁の歌集が皓星社から刊行された。

そんな入手に思い出のある歌集から
五首紹介。

食べるという行為は、食べ物に触れることでもあるのかもしれない。

ティッシュ配りの短歌は身近

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『蝶は地下鉄をぬけて』を読む。ー魅力的な日常ー

『蝶は地下鉄をぬけて』を読む。ー魅力的な日常ー

『蝶は地下鉄をぬけて』は、
小野田光さんの第一歌集。

好きな五首を紹介したいと思う。

下句の「いつまでも歓びは選べる」が良い。
その理由として「たてがみをそよがせている馬」が例なのも良い。

博物館で化石を見る時に、新しい視点が得られる一首。
確かに、同時にその場で化石になっただけで、本当はすれ違いとかかもしれない。

赤と黒のコントラストが気になった一首。

コンタクトで目が疲れて赤くなった

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『雨のオカリナ』(篠原節子氏)を読む。

『雨のオカリナ』(篠原節子氏)を読む。

一冊中に、色々なテーマの連作が多かった。
概略だけでも
・お母さまの介護と看取り
・旅行
・日常
・相聞
など、幅広い。

その中から面白く感じた五首を紹介。

雨蛙と人の「わたし」の「共鳴」が良い一首。
初句のオノマトペが一首全体の雰囲気と音を作っている。

興福寺の阿修羅像だと読んだ。
その複雑な表情をAIが「悲喜こもごも」と判断するとは面白い。
AIのプログラマーの性格も透けて見える。

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水とディストピア『サトゥルヌス菓子店』を読む。

水とディストピア『サトゥルヌス菓子店』を読む。

安井高志氏の歌集『サトゥルヌス菓子店』。

この歌集は一筋縄ではいかない。
難解だが透明感がある。
イメージ詠で詩寄りの世界観の短歌も多い。
「水に沈んだ町」という連作も収録されており、
本の装丁の水色を思わせる。

好きで付箋を付けた短歌から、
水に関するものを一部紹介する。
※海、雨など水を連想させる言葉がある短歌。
※収録順。

ディストピアのような危うさと、水のような透明感が魅力で、
美し

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