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『雨のオカリナ』(篠原節子氏)を読む。

一冊中に、色々なテーマの連作が多かった。
概略だけでも
・お母さまの介護と看取り
・旅行
・日常
・相聞
など、幅広い。


その中から面白く感じた五首を紹介

とくとくと心臓打つてる雨蛙共鳴してるわたしの心臓
41ページ

雨蛙と人の「わたし」の「共鳴」が良い一首。
初句のオノマトペが一首全体の雰囲気と音を作っている。

仏像の表情読みとるAIが悲喜こもごもと断ずる阿修羅
96ページ

興福寺の阿修羅像だと読んだ。
その複雑な表情をAIが「悲喜こもごも」と判断するとは面白い。
AIのプログラマーの性格も透けて見える。

眠られぬ夜の続きて湧きいづる言葉の密度こころの密度
105ページ

下句の対句「言葉の」「心の」の部分と、
「密度」の繰り返し(リフレイン)。
対句とリフレインの二重の技が光る。

やはらかく伸びたる若葉あまだれに跳んだり跳ねたり笑つたり
111ページ

結句が二文字の字足らず。
「跳んだり跳ねたり」は八音。
よって下句が8・5となり、一首合計の音数は30。
トータルだと一音足りない。
その独特のリズム
(5・7・5・8・5)が
「あまだれ」の跳ね方に合っている。

ひつじぐさふかりふかりと漂へば亀の小鼻のふるふると浮く
112ページ

「ひつじぐさ」はスイレン科の水草。
※Wikipedia⇩


ひつじのイメージが「ふかりふかりと」と相性が良い。
亀の息継ぎの様子のオノマトペも「ふるふると浮く」も魅力的。
オノマトペが際立つ一首。


まとめ

キャリアの長さを感じさせる、安定した作風でありつつ、
AIから自然まで幅広い話題で短歌が詠まれている。
柔軟性を感じる、勉強になる一冊だった。


歌集 雨のオカリナ https://amzn.asia/d/4xB8MZt

最後までお読みいただきありがとうございました。 もっと面白い記事を書けるように日々頑張ります。 次回もお楽しみに!