OKOCROSSING が運営する、香りにまつわる「わたしの物語」を編み集めるプロジェクトです。https://oko-crossing.net/okolife
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#エッセイ
オープン・フェア・スロー──お香と社会の3つの「隙間」
こんにちは、お香の交差点OKOCROSSINGを運営している麻布 香雅堂代表の山田です。
お香をはじめとする和のかおりの専門店・香雅堂を手伝い始めておよそ10年が経ちました。思うところがあって初めてこのような文章を書くに至っています。みなさまにあまり馴染みのないと思われるお香業界の今をさまざまな観点で紹介しながら、お香の未来について考えていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
香木・香
桜が咲いても、春の香りを感じない。
春が来て、桜が咲きました。暖かくなり、日が長くなりました。でも、まだ春の兆しを感じません。
あたりを見渡すと、みんなマスクをしています。僕もマスクをしています。そうです。僕たちは、香りを失ったのです。
僕は昔、春があまり好きではありませんでした。雑木林などから漂うあの独特な匂いに耐えられなかったからです。小学生のころ、学校に通うまでの間、あの匂いに出会うと小さな手で鼻を押さえ息を止め、小走りで
ものを作る家族と、喪失の香り
編集部より:シンガーソングライターのしずくだうみさんにエッセイを寄稿いただきました。もの作りの家に育ち、やがて表現活動へと導かれていったしずくださん。お香のかおりは、そんな家族を喪う記憶とともにありました。お香にふたたび出会い、自身のもの作りと家族の関係を振り返った記録。
お香の匂いが苦手だった。
私が産まれた時、曽祖母二人が生きていた。どちらも父方で、頻繁に顔を合わせるわけではなかったが、曽