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詩・散文

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#自由詩

詩・散文「日本海」

詩・散文「日本海」

日本海

東尋坊から身投げした青白い流線形は
透きとうて脆く
手にすれば血の熱にさえ姿を失い
失いてそんなにも脆弱な薄氷は
それでも時たまにその脆さが故に

切る事だってあるのだ
その時私は
ほんの少しだけ私は
紅く身を染めて血の熱に己を溶かしながらも
東尋坊から身投げした青白い柳葉が
一瞬月光に煌めいて
きらきらと海に溶け込んでいったのを
きらきらと
ほんの少しだけ
頭の裏に掠めみる

200

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詩・散文 「雨」

詩・散文 「雨」



雨が降る
音もなく降っている
ひた濡れたTシャツが背中にぴったりと張り付いているよなこの部屋に
果たせなかった約束が声もなく
私の耳元で囁きながら
そうして力なく漂っているのを感じながら過ごす一時は
何故だろう
悪い気分ではない
しっとりと静かな午後の
重い大気の
銀灰色の雲の下で重力を肌身に感じるほどに繊細に
一杯の珈琲の香る
その立ち昇る蒸気の不思議を見つめる午後は
悪くはない
果たせな

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詩・散文 「くらげ」

詩・散文 「くらげ」

くらげ

空のような海のような なかで 漂っている

くらげ

空のような海にそまって
いったいおまえのどこが生きているっていうのか
そんな命のおおきな謎を 透けた体にいっぱいに満たして
空のような宇宙にそまって
宇宙のような海にそまって
海の底を日々の寝ぐらにしている

くらげ

晴れた真夏の昼時などに
たまには海面に浮かんできては空にあそび
星降る春の真夜中には 宇宙を旅する夢を見る

くらげ

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詩・散文 「幽霊はいるの?」

詩・散文 「幽霊はいるの?」

幽霊はいるの?

♠♥幽霊って本当にいるの?

♥今日テレビでマジックショーをやってたよ。お金が、手を開く度に増えていくのは不思議ね。
♠テレビが映るのも不思議だね。自動車だって。一体どういう仕組みなんだろう?
♥ほら、飛行機!飛行機雲を出してるよ!飛行機が空を飛ぶのも不思議だね。飛行機雲も。一体どうしてできるの?飛行機雲は、ほんとに雲なの?

♠・・・煙突から立ち昇る煙は、雲になる事もなく青い空

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詩・散文 「大きな贈り物」

詩・散文 「大きな贈り物」

大きな贈り物

もう大人になってしまった                      世界中の子供達が着古した服をパッチワークにして           大きなゾウをつくってみませんか?                  春の千切れ雲と夏の入道雲と                     秋の鰯雲を集めるのは大変だけれども                 どんより重たい冬の雲            

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詩・散文 「幻想花」

詩・散文 「幻想花」

幻想花                               

炎のような花のような鳥のような 花が                

花開いて羽ばたいて燃え上って空が青い

海のように青い 空のように青い 青い空に              

炎のような炎のような虹のような 花が

鳥のように羽ばたいて燃え上って揺らめいて

やがて

蜃気楼のように

消えていく

         

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詩・散文 「宇宙からやってきた」

詩・散文 「宇宙からやってきた」

宇宙からやってきた

今日 畑に行ったら
ねぎぼうず ねぎぼうず
ねぎぼうずって ぼうずじゃない
ぼうずじゃないって ポーズをとってる
王様みたいに冠のせて
俺が一番えらいんだって
天に向かって背のびをしてる 一列まっぐならんでる
威張ってるよで仲良しで
仲が良くって行儀がいい
ねぎぼうずねぎぼうず
ねぎぼうずって
ねぎじゃない

2010年7月 岡村正敏

哲学・日記・メモ 「世界を終わらせる問い」

哲学・日記・メモ 「世界を終わらせる問い」

満たされて、満たされて尚問う「問い」があるとしたら、それはこの世界とこの私の終わり(と同時に始まり)についての問いなのだろう。終焉にまつわる問い(そもそもの始まりと終わりに関する問い)と言っても良い、それは、子や孫に、次世代に、そしてさらに言えば人類の永続性に委ねるべき問いではなくて、私一代で完結させねばならない、世界を完全に終わらせる問いなのだ。それは満たされて、満たされることで初めて知る絶望を

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詩・散文 「鬼と翁童」

詩・散文 「鬼と翁童」

『鬼と翁童』
おにあーそぼ
川崎洋編『子供の詩』(文春新書)に収録されている一編の詩である。子供らしい直截な表現が魅力だが、これは子供の詩だからこそ魅力なのだと思う。大人の作であれば、ひねった感にいやらしさを覚えきっと私は冷めてしまうだろう。では90余歳のご老人の作であったらどうか?あかぬけた粋な表現として、それなりにしっくりしたものとして納得するのではないだろうか?子供と老人にはぴったりなのだ。

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