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タイガの読書日記

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ラノベ・小説・学術書など様々な本を読んできたタイガが本棚の整理ついでに本の感想を書いていくマガジン。 割と最近は真面目な本を読むことが多いですが一応多種多様な本やたまに論文を紹… もっと読む
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2021年6月の記事一覧

「コモン・センス」トーマス・ペイン(著)

「コモン・センス」トーマス・ペイン(著)

・アメリカの原点
 この本はアメリカの独立に最も影響を与えたと言っても過言ではない。当時のベストセラーとなった一冊だ。題名である「コモン・センス」は日本語にすると常識という意味でこの本を通して著者は今のアメリカの状況(イギリスの植民地としてのアメリカ)は本来の人間の常識的な環境ではないと批判して熱烈な感情を文章にぶつけている感はすごく読んでいて感じる。今から数百年前の本でここまで熱量を感じるという

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「人間の建設」小林秀雄・岡潔(著)

「人間の建設」小林秀雄・岡潔(著)

 この本は私にとってある意味で精神調整を行ってくれる一冊だと思う。年に一回必ず読むことで自分を戒めている。これを読めば「知」において慢心に至ることはない。まだまだ勉強が足りないないなと私に語り掛けてくれるような貴重な一冊である。

これは対談本としてはかつてないほど多くのことを読者に語り掛けてくる本のように感じる。対談している二人は当時の日本を代表する最高峰の知識人であることは間違いない。文系の小

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「保守とネトウヨの近現代史」倉山満(著)

「保守とネトウヨの近現代史」倉山満(著)

 政治の話というのは日本では敬遠されがちな印象だが、この本を読むとその理由もわからなくはないと思える。この本は昭和から現在にかけて「保守」や「右側」に属する言論人たちの総体的な動向について著述している一種の小説、ノンフィクションの類いとして読める一冊だ。

時代風潮から居場所がなかった時代から居場所を経て、現在に至る程度の影響力を持つまでにその内実はどのようなものだったのか。著者もその歴史の生き証

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「税をむさぼる人々」森口朗(著)

「税をむさぼる人々」森口朗(著)

 社会保障は定期的に政治の話題にあがるが、実際のところどのような制度として運用されているかということは専門家などしか知らないものだ。私もただ漫然と書類が役所からくるからなんとなく社会保険料を払い、年金を払うなんてことをしている。会社勤めの人はあらかじめ給料から天引きされているからそれを実感することもないと思う。

だがこの本を読むと知らないということのおそろしさを痛感する。私たちは知らない間に損を

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「枝野ビジョン」枝野幸男(著)

「枝野ビジョン」枝野幸男(著)

 選挙が近づくと各政党の議員が自らの印象付けのために書籍を出版するというのは世界各国よく見る光景だと思う。今年は衆議院選挙という国政選挙があるため、立憲民主党党首として枝野氏がこの本を出版したのは支持者や有権者にとってはいい事だろう。私は立憲民主党の支持者ではないが、悪趣味な興味半分で手にとり読了した。

 感想としてまず感じたのは著者が抱えていると推測される「アレルギー反応」だ。何に対するアレル

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「立憲君主制の現在」君塚直隆(著)

「立憲君主制の現在」君塚直隆(著)

 SF小説の父であるH.G.ウェルスによる君主制批判の一節から始まるこの本は現在も存在する立憲君主制の歴史とその政治的重要性について論じた皇室を持つ日本においても大変興味深い一冊である。カール・レーヴェンシュタインの「君主制」とウォルター・バジョットの「イギリス憲政論」を引用しながら、立憲君主制の持つ特筆すべき点とその制度的な価値を様々な立憲君主を例にして紹介しており大変勉強になった。

 「君主

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