「コモン・センス」トーマス・ペイン(著)
・アメリカの原点
この本はアメリカの独立に最も影響を与えたと言っても過言ではない。当時のベストセラーとなった一冊だ。題名である「コモン・センス」は日本語にすると常識という意味でこの本を通して著者は今のアメリカの状況(イギリスの植民地としてのアメリカ)は本来の人間の常識的な環境ではないと批判して熱烈な感情を文章にぶつけている感はすごく読んでいて感じる。今から数百年前の本でここまで熱量を感じるというのは中々ない体験だと思う。
アメリカ独立の原点であるこの本はその後のアメリカの理念にも深く影響を与えていると考えられる。この本で行われている主張は政治的に「右」とされる人にとっても「左」とされる人にとってもそれぞれ共感できる部分がきっとあると思う。こういう本は極めて珍しいだろうし、だからこそ今読んでも学ぶところのある一冊なのだろう。
著者がこの本で強調していることは人間は「自由」を生まれながらにして持っているはずだという主張であり、政府はそれを簡単に抑圧するという現実だ。著者は当時のイギリスによる植民地政策に怒りを覚えているようで、「イギリス政府は個人の権利を尊重していない」「イギリス議会では民衆の代表の意見を国王の気分でどうにかできる」というような批判をしてこのような状態ではアメリカ国民の利益は享受できないと主張している。
この当時のイギリスの植民地政策として有名なのは「増税」だ。あの当時のイギリスは世界中で戦争を行っておりその戦費の回収に追われていた。そのしわ寄せが植民地にいっていたのだ。
アメリカの住人は自分ことを自分で決めなければいけないと強く主張し、不満を持っているだろう全てのアメリカ人に著者は立ち上がれと激を飛ばし鼓舞している。
この本は難しい学術書や思想書という風に捉えるのとは少し違うのだ。この本は私たちの声を聴かない「巨大な悪」に対して妥協することなく立ち上がれといった熱いメッセージが込められている。
細かく内容を見ると賛同できるとこできないとこと分かれるだろうが、現在のアメリカを建国時から貫く一線の思想がこの本からは余すことなく感じることができると思うのだ。
・誰かに助けてもらうのではなく自分で助かる
著者は「イギリスと一時的な妥協をしてもいずれ同じことになるから今この機会に絶対に立て」と強く何度も訴える。これは自分の力で今の逆境を打ち負かし人生を切り開けというメッセージだと感じる。
著書の中で何度も世襲の問題点と政府の行ってきた悪徳を批判し、被害者でいつまでもいるなと鼓舞する著者の姿勢はまさに「自由主義」「個人主義」の根本の思想と重なる。「人間は生まれながらにして自由であるからその自由を侵害するものとは戦え」この姿勢は今では忘れられているように感じる。私は最近の世の中どこか棚ぼたを狙う人が増えているような気がするのだ。
私の好きな小説「化物語」のキャラクターである忍野メメは「一人で勝手に助かっただけ」というセリフをいうのだが、私は著者の主張とこの私の好きなキャラの発言に深い類似点を感じる。私たちはきっと自分のことを最終的には自分で助ける他ないのだ。そういう人生の歩み方についても一石を投じてくるおもしろい一冊だった。
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