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伝説のつるぎ 大熊健司
2020年11月29日 00:29
「皆さんお久しぶりです。夏休みは楽しかったですか?」 榎木田先生が好々爺らしい笑顔を浮かべながらそう尋ねてきた。「まずは夏休みの宿題を提出していただきましょう。後ろから回してください。」 俺は後ろから受け取ったノートの束に自分のノートを重ね、前の席に渡しながらふと夏休み前のことを思い出していた。「さっきいったところまでの白文、書き下し文、現代語訳、語句調べをノートにまとめてきて夏休み明け
2020年11月22日 00:27
「じゃあ改めて、俊作お帰り!」「ありがとう、母さん。」「大学の方は楽しくやってんのか?」「勇作さん、私が腕を振るったせっかくのご馳走が冷めちゃうわ。まずはいただきますしましょう?」「そうだね、亜寿美さん。」 結婚して二十年以上経っても仲がいいのはいいことだが、両親が手を取り合いながらそう言い合う光景は息子からしたらなかなか見たくはないものである。 久しぶりに兄貴が返ってくるということ
2020年11月15日 00:07
リビングのドアが開く。「ただいまー。」「お帰り、兄ちゃん。」「おお何だ、陽乃(はるの)ももう帰ってたんだ。」「うん、もうテスト前だからね。」「お、陽乃もか。俺もさっきまでまっつんと勉強してたんだ。」「またそうやって松野さんに迷惑かけるんだから。」「そんなことないって。」「なんで兄ちゃんが決めるのよ。」 兄ちゃんは悪い人じゃないんだけどこういう適当なところが多い。「大体なんだよ
2020年11月8日 09:37
「ゴリラって全部B型らしいね。」 おはよう、の後に続くとは到底思えないセリフを聞いてさっきまでの眠気はどこかへ行ったようだ。「昨日テレビでやってたの?」「そうそう、まっつんも見た?」「いや見てない。でもその話は聞いたことある。」「全員B型だと絶対に大変だと思うんだよ。」 陽介は悩ましげな表情を浮かべてそう言った。なぜそんなことを言うのか、なんとなくわかったが一応問うてみる。「なんで?
2020年11月1日 00:17
夏休みももう終盤、俺は陽介の家に遊びに来ていた。「まっつんはもう宿題終わった?」「あとちょっとってとこだな。陽介は?」「まだ結構残ってる。」 悲しそうな顔をしながら陽介はそうつぶやいた。「読書感想文がどうにも。」 陽介とは長い付き合いになるが、そういえばこいつが本を読んでいるところは見たことがない。「これから大学生とか社会人になったら色々本を読まなきゃいけないこともあるんだから、そ