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作品のようなもの。

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ちょっとした短編小説のような作品を集めてみました。
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#ショートショート

温もりを感じて。

温もりを感じて。

空から舞い降りた一縷の光。泉。温もり。

白馬を連れた一人の少年に見守られながら、
小さな身体で大きな声を上げる。

周りに響き渡る、太鼓の音、手のひらを合わせる音、草履を引きずって懸命に歩く子どもの足音。
それら全てをかき消すかのように。

小さくも大きな声は、一本の木に届いていた。
空へと真っ直ぐに佇む一本の木。
風に揺られながら、淡くも力強い色を放って。

甘く温かな香り。握りしめる小さな手

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こ・と・ば

こ・と・ば

ある日のこと。
突然、少年は言葉を話せなくなった。いや、話さなくなったという方が正しいのかもしれない。

今まで、少年は言葉によって自分のことを守り続けてきたのだ。相手を傷つけないように、傷つけないように....と。

けれど、相手を傷つけないようにするというのは表向きの理由であって、本当はただ自分が傷つきたくないからだった。

僕なんか言葉を話せなければいい。
そうやって生きていた方が、周りにも

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冷たさと愛と。

冷たさと愛と。

僕はずっと自分のことを冷たい人間だと思っていた。人に近づこうともしない。近づかれても上辺だけの会話で終わってしまう。なのに、心のどこかで、いつも誰かを、居場所を、求めていた。そんな自分が嫌で嫌で仕方なかった。

誰かを傷つけること。誰かに傷つけられること。なんでこんな些細なことを気にしてしまうのだろうか。なんで..なんで..。考えれば考えるほど、自分の心の塊が大きくなるばかり。心の塊が爆発してしま

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言葉と心と色と。

言葉と心と色と。

言葉には色がある。心にも色がある。

一昨日の夜の心は淡いピンク色。
昨日の心は淡いオレンジ色。やがて紺色へ。

今日はどんな色が待っているだろうか。

心の色は言葉の雫によって絶えず変化する。

言葉って不思議だ。

お母さんのお腹の中にいるような、
何かに包まれた暖かい言葉。

息を吹きかけたら一瞬にして散ってしまう言葉。

纏っている炎があまりにも強すぎて、
誰にも受け取ってもらえない言葉。

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越えられない壁。

越えられない壁。

僕は何もできない。
心に傷を負っている人がいるというのに...。

彼女は感情と行動が伴っていないことを当たり前だと言う。感情に従って生きれる程、この世の中は甘くないと...。我慢して、我慢して、、その中での楽しいと思える瞬間を味わうのだと...。長く生きてれば、それが普通であると...。

そして、僕が幸せであれば、それで良い..と..。

僕は、彼女に自分の人生を生きて欲しいと願う。

僕は僕

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透明な光へ。

透明な光へ。

僕は大丈夫。大丈夫だから。
これだけ自分と向き合ってきたのだから。
大丈夫。
.
.
でも、大丈夫だと、ただただ自分に言い聞かせていただけだった。

根本は何も変わっていなかった。

どこか俯きがちで、誰にも見られないように..見られないように..って。

でも気づいてもらいたくて。

矛盾している自分が嫌で。受け入れられなくて。

だから、どれだけ素敵で温かい言葉をもらっても、心のどこかで拒否し

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眠りに耳を傾けて。

眠りに耳を傾けて。

どれだけ心の声に耳を傾けても。
わからなくて。
それが時に苦しくなって。

周りから何を言われようと。
僕の心が完全に癒されることはない。

本当は泣きたくて。でも泣けなくて。
涙も心の中に入り込んできて。
もうどうにもできなくて。

僕は複雑な家庭環境に置かれているわけでもない。
過去に深いトラウマを抱えているわけでもない。

でも、じゃあ、なんで。。
なんで、心の中にいつもいるの。。
それがな

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