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「かみかさ」

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小説「かみかさ」 傘を美容院に忘れてしまうところから始まる、恋愛未満小説。
運営しているクリエイター

#傘職人

「かみかさ」あとがき

「かみかさ」あとがき

最後まで読んで下さった方、少しでも読んで下さった方、ありがとうございました。嬉しかったのは、「かみかさ」をキッカケにフォローして下さった方、作品に魅力があると云うのは何より嬉しいです。Twitterでもいいねフォローを頂きありがとうございました。

掲載しながらの反省点は、ストーリーが、わかって読んでもらってるなと云う事です。創作大賞運営側の求める、何が起こるか分からないエンターテイメントではない

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「かみかさ」最終話

「かみかさ」最終話

いのりは、燈郎に髪を切ってもらって1ヶ月経った。
美容院に電話して予約を取ろうとした。
「ありがとうございます。BeLu美容室青葉店です。」
「予約をお願いしたいです。零宮いのりといいます。」
「いつもありがとうございます。」
店長になった横井が電話に出た。
「皆川が長期休暇に入っておりますので、
担当を色々模索してみましょうか。」
心遣いがあった。
「若尾さんでお願いします。」
「すみません。若

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「かみかさ」第11話

「かみかさ」第11話

本当に傘が送られてきた。
饒舌だったし、その場限りの話かもと思っていた。
おじさんの話は、本当だったのだ。

高級傘を家族分4本も。
母は晴雨兼用の黒の傘。縁取り10cm程に黒の上品なレースが重なっている。
父には焦茶で合皮の持ち手の傘。
弟には濃紺の傘。
私のは縦糸に抹茶色、横糸に山吹色の傘。布製なのに決して重くない、16本針の一番上等な傘。

それは花束でも届けられたように梱包されて贈られてき

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「かみかさ」第10話

「かみかさ」第10話

再び部屋に入ると話は賑やかに変わっていた。

たぶん初めて会うおじさんに傘職人さんがいた。
「あの傘の持ち主だ。」と思った。
老舗の傘職人で、一時は低迷していたが、高級ブランドからの注文が入るようになって、経営は持ち直した。高級ブランドからの発注であっても、すべて手縫いでしっかりした作りだった。おじさんは誇りに思っていた。

「あの傘立てにあったの見ました。鶯茶色と京紫の傘がおじさんとおばさんので

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「かみかさ」第9話

「かみかさ」第9話

いのり、大学3年生の晩秋、雨の日。
おじいちゃんのお葬式が終わった。
おじいちゃんは父のお父さんで離れて暮らしてた。

骨上げを待つ間に親戚だけで、別室で食事をしていた。
親戚と言っても、いのりの知らない人がいた。
遠い親戚という人、どのように遠いのか話を聞いても、わからなかった。
お葬式はそういう事も、よくあるだろう。

皆、悲しむ事もなく穏やかに、食事をしながら話していた。
いのりは、変わらず

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「かみかさ」第1話

「かみかさ」第1話

[あらすじ]
いのりと燈郎が、憧れる美容室の店長の皆川ひかりが、体調不良によりお休みとなる。
髪を触られるのが苦手ないのりが、代わりに燈郎にカットしてもらった。いのりは動揺し美容院に傘を忘れてしまう事から始まる話。

その傘は遠い親戚の傘職人おじさんからもらった大事な傘。

二人は、すれ違がう事によって惹かれていってしまう。
燈郎はいのりの髪に傘をさしかける事ができるのか。

私は詩人なので、1話

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