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【詩集】少女の日常

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私の思い描くある少女のお話。 しあわせな詩もあれば、かなしい詩もあります。 *随時更新
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記事一覧

詩 | ソメイヨシノ

詩 | ソメイヨシノ

春の梢を左手に
小さな温みを右手に

ただいたずらに歩く

仄かな匂いを口に含んで
カラカラと冷たい水を飲む

離した手を服で拭ったのには
じつは別の理由があるの

ソメイヨシノがくすくす揺れる

私の頬は淡く色づき
そこに芽吹くは二輪の花

詩 |  らるらりら

詩 | らるらりら

可愛い鈴蘭の刺繍(ししゅう)

お気に入りなのは
きみが褒めてくれたから

らるらりら

カバン片手に家を飛び出す
鮮やかな世界の機微
今なら風より速いわ

らるらりら

下手なリズムで土を鳴らす

 詩 | 天使の夢

詩 | 天使の夢

昨夜見た
カルカソンヌの景色

窓の外見て
はだけるネグリジェに
反射する光

天国を想う
お姫様の様相

となりの王子は
誰だったのかしら

夢見るアンジュ

詩 | お似合い

詩 | お似合い

夕日が落ちる

茜色の横顔と
よく似合うビロードのワンピース

君がくれた髪飾りは
季節外れな気がして

反対のポッケにしまった

詩 | 歩幅と声色

詩 | 歩幅と声色

川の流れに
置いていかれる

クランベリーの酸味

アスファルトの高温

背中を押す南風

この歩幅も 
この声色も

ずっと同じで
いてくれたら

詩 | 涙を吸って

詩 | 涙を吸って

夢にも思わなかった

君がもう
ここにいないこと

大きな楠に腰かけて

読みもせずに
パラパラとめくる

ちひろの詩

出でては消える
わざとらしいオノマトペ

例えるなら
この涙のよう

詩 | そこにもきっと…

詩 | そこにもきっと…

丘から見下ろすネオン街
ビルの爆弾と人々の導線

あれを見てみて

彼らが向かうのは
多分、宇宙のもっと先

絶望と安寧を探してる

当ててあげるわ
君のしあわせの在り処

少なくとも
ここではない

この柵を越えて
君とふたりで
飛んで行きたい

そこにもきっと

詩 | 冷たい幸福のものさし

詩 | 冷たい幸福のものさし

声をかければ
返ってくる

二人の間を通る赤いひもで
幸福を測るセリグマン

二人を隔てる
狭間の谷

歩いてみれば分かるのに
確かめてもみない

ゼロ距離の破裂音

背中合わせの思いやり

天気予報士が
氷点下を下回ると
言っていた気がする

詩 | へその緒に託す

詩 | へその緒に託す

脳裏に浮かぶ
母親の笑顔

へその緒が切れた
痛みを思い出して笑う

こんなに綺麗に
点滅する過去

忘却曲線と反比例して

ルサンチマンが増幅する

詩 | 黄昏の悪夢 

詩 | 黄昏の悪夢 

私の代わりに誰がが追われている

「なんで私が。」そう聞こえる

防風林を這うように走ると 木々が私の残像と共鳴する
きっとそれを頼りにしているのだ
逃げるのを止めなければ きっと追手は止まらない

三歩先にはビルが乱立している
足を滑らせクレバスに落ちるが 標識の矢印はそこを向いている

もううまく走れない 光を求め沈んでいく
水位がちょうど鼻の上まで上がる

苦しい 死ぬ 死ぬ

目を開けたら

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