【46】 不安のループにはまり込む日が再来。どうする、ミソちゃん!
ここのところ、脳みそのミソちゃんが機嫌よく調子をあげ、成長してゆく日々の中で、突然、私とミソちゃんは混乱に陥りました。
「なんか、腰が痛いんだよねぇ」
私がそう言ったとたんに、ミソちゃんが急に怯え始めました。
「えっ…………? なになに、それって……」
ガンになる前は、腰に痛みがあっても「歳かなぁ」くらいの気持ちで気にしていなかったのに、今はスルーできなくなりました。
「まさか、骨にガンが転移しているの?」などと考えてしまう。
「ガン患者あるある」なのですが、カラダに関するちょっとした不具合でも、「なにやら良からぬ事態になっているのでは?」と、不安になってしまうのです。
これを健康な人で例えるならば、「ちょっと咳がでる」場合に、これまでは「風邪かな」くらいに思えていたことが、「まさか、コロナウィルスに感染した?」と恐怖に陥るのとちょっと似ているかもしれません。
(今現在は、コロナも弱毒化しているようで死の恐怖は薄れましたが……)
「腰が痛いっす」
夫に不安を訴えると、夫が手招きをして「どういう風に痛いのか」などと、私の左右の腰を比べるように触り、そして「熱がないか」と私のおでこに手を当ててきます。
「とりあえず、熱はないみたいね。何日も治らないようなら考えよう」
「亡くなった彼女さんが、ガン再発の際に熱が出たこと」を経験している夫は、私に熱がないかどうかを、しょっちゅう確認してくるのです。
夫よ、ごめんなさい。再びこんなことをさせてしまって。
夫は夫で不安だろうに、不安になったまま沈んでしまう私とは違い、「気づいて、今できることをする。それから行動を考える」という冷静さがありました。
私はこういうとき、「腰痛」「ガン」「骨転移」「再発」などのワードでネット検索をしてしまい、ありとあらゆる記事を読みまくり、余計に不安を駆り立てられて、「どうしよう、やっぱり……」などと勝手な妄想を膨らませてゆくのが常なのでした。
今回も、迷わず検索をはじめようとする私とミソちゃん。
しかし。
「ちょっと、待ったー!」(ねるとん風に)
とミソちゃんに指令を出すことができました。
「思い出せ! ミソちゃん!」
「なにを??」
「何かの不安に駆られたときには、頭のスイッチを切り替える行動をするんだったでしょ! 検索なんかしたら、余計に不安になるでしょ!」
そう、私には切り替えのスキルが、圧倒的に足りていないのだった。
そのことに40代にしてようやく気づいて、心の底から「治したい」と思っていたはず。
「でも、検索しないと不安だから、とりあえず検索した方が!」
ミソちゃんが主張してきます。
「だーかーらー!! 検索しても不安が増すばかりなんだよ! 以前、切り替えの行動をリスト化したでしょ!」
「あーあれね。でも今、そんな気分じゃないのよ。検索の気分なのよ」
ミソちゃんの「できない」発言。
私はブチ切れました。
「アホ――――!! そんな気分じゃないときだからこそ、やるんでしょーが!! 気分が乗らないからって、そのままでいるから、気分が変わらないって、さんざん学んだでしょーが! 無理やり、行動するんだよっ! 気分が変わるのは、行動した後だよ!! やれ! ボケが!!」
ミソちゃんにムチを打って、私は立ち上がります。
「こわー! でもそんなに怒っても、ミソは検索しちゃうもんね」
ミソちゃんがニヤリと笑って、検索画面を開きます。
「アホ―――!! おまえはいったい、何度同じ失敗をするつもりなんだ!! ガタガタ言ってないで、ほら、ヨガをする!! いつもの動画を出して!」
こうやって頭の中の会話を言語化すると、心底バカみたいなのですよ。
はっきり言って恥ずかしいですよ、こんなことをブログに書いている自分がね。
それにしても、自分の考えや行動を変えるのって、まったくもって、どれだけ大変なことなんでしょうかね。
「人は変われる」なんてね、軽々しく言っちゃいかんのですよ……。
(でも、私は絶対に変わるけどね!)
そうして私は、ヨガの動画を再生して、しばらくカラダをストレッチしました。やりながら深呼吸もするので、ミソちゃんの不安も少しずつ落ち着くのがわかります。
そうして、あるポーズをとったときに、ズキンと腰に痛みが走りました。
「あれっ⁉」
「このポーズとると、腰が痛いけど……もしやこの腰痛は、ヨガのやりすぎなのでは?」
ミソちゃんと私は、少し不安が和らぎ、結局検索はせぬまま、しばらく様子を見ようということで落ち着きました。
その夜、私は自分を思いっきりほめてやりました。
自分にとってはものすごく大変だった「切り替え行動」を、無理やりにでもできたのです。
よくできました、私!
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