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【62】最終話 ついに、約一年に渡る治療終了! 私は変われたのか?

あと三回、あと二回、あと一回……。

抗がん剤の残りの回数を、指折り数えて通院していた私。

術後から一年ちょっと、ついに長い長い治療の最終日がやってきました。


「今日で最後の抗がん剤ですね。おつかれさまでした」

主治医からそう告げられ、
「はい! ありがとうございます!」

私は元気いっぱいに返事をしていました。


抗がん剤が始まったばかりの頃、味方であるはずの医療が、一方で「私の身体を損なう敵」になってしまった時期がありました。

体調の悪さを複数の薬でカバーするという悪循環に陥った私は、医師の言葉ひとつ、看護師の対応ひとつに不信を抱き、不満を抱き、「こんなにつらい自分のことを、結局少しもわかってはもらえないんだな」と被害者意識を膨らませ、どこまでも沈み込んでいきました。

私は、なぜこんなにも不幸なのか。


親のガン闘病中に、自分もガンになったから?


……いや、違う。


私の不幸は、私が自ら作り出している。


そんなの、冗談じゃない。
私は、絶対に幸せに生きたい!
生きたい!
生きる!

誰にも治せない「私という病」


私は乳がん治療の傍らで、自身のメンタリティーを治療するべく、右も左も分からぬまま、自分自身の点検に挑みました。


前進して明るい道に出られたり、ぐねぐね道を曲がって、元に戻ってしまったり。つまずいたと思ったら、また新しい道を発見できたり。

そんな私の冒険は、まだ途上であり、これからも続きます。

私という人間の、全責任が、私にある



そんな風に、被害者意識から這い出たとき、どす黒く溜まっていた心の澱が押し流されてゆきました。

生まれてきて、よかった


ガンになる運命だったとしても、「この私」に生まれてきてよかった


ネガティブの塊だった私が、生まれて初めてそんな風に思えるようになりました。

カラダが生きているからこそ味わえる、痛み、苦しみ、悲しみ、怒り、そして喜びや心地よさ。

それらすべてを感じられる「私という意識」。
存分に、怖がって、悲しんで、泣き喚いたっていい。

私が、私の脳みそに、その許しを与えてやろう。
そうすれば、ふいに穴に落っこちても、きっとまた脱出できる。

以前の自分よりも、少しだけ強くなって。


主治医の診察の後、最後の抗がん剤を受けに化学療法室に行きました。

毎回、私の不安を受け止め、さまざまなアドバイスをしてくださった多くの看護師さん。世間話に付き合ってくれ、わがままなお願いにも対応してもらいました。
そして、血管のルートをとるための注射を、いつも一発でキメてくれた頼もしい医師の先生。

コロナが猛威を奮うなか、患者のために表に立ち続けてくれた医療関係者の方々には感謝してもしきれません。

終わって点滴を抜いた後の、なんとも言えぬ開放感。
スキップしたくなるような、この世界で一番の幸福者になった瞬間でした。

「ほんとーーーーに、お世話になりました」

看護師さんたちにお菓子とお手紙を渡して、病院を後にしました。

「ミソちゃん、ついに終わったぞ!」

「うん、長い治療によく耐えた!!」


晴れ晴れとした気持ち。
秋の紅葉の葉が、あまりにもキレイで、この自然と一体になったような心地で落ち葉を踏みしめ歩きます。


玄関を開けると、夫がニコニコしながら待っていてくれました。

私も思わず笑みがこぼれます。

「ありがとう」は、何度言っても言い足りないけれど、やっぱりただただ「ありがとう」。私と一緒に生きてくれて、ありがとう。

また日常が、始まります。

愛おしく、かけがえのない、今日という一日。

今日も、私はとにかく生きている


その奇跡を、いつもいつも思い出すこと。
ミソちゃん。
本日もよろしくお願いします。


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『脳みそジャーニー』は、これにておしまいです。
ここまでおつきあいくださり、本当にどうもありがとうございました。

この後、後日談を何話か。
後日談では、さっそく情けない私が登場しますが(笑)、どうかおつきあいのほどを!

後日談の後は、通常のブログを書いてゆく予定です。
主に「私が若い頃に知りたかったこと」を、シェアできたらと思っています。

生きる知恵や哲学のような原理原則。
私は、そうした良質な情報をなるべく早くに知って、それを自分の身体に浸み込ませたいと思って生きてきました。

単純にそうすることが、私の人生の満足度を上げることに貢献してくれることを確信しているからなのですが、おそらくそうしないでは生きている気がしないことや、私自身の生きることに不器用な資質も関係しているように思います。

この世界にある山ほどの情報の中から、なるべく本質的なことを誰にでも分かるように綴っていきたいと思います。恋愛や仕事や、パートナーを含めた人間関係の話などを交えながら、「若かりし頃の自分へ」教えてあげるつもりで書き進めたいと思っています。

あなたの価値感や指針と照らし合わせながら読んでもらえたら嬉しいです。
ご興味のある方は、ぜひまた遊びにきてください。
どうもありがとうございました。

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