【56】 結局、私は「だれ」なんだ?
脳みそのミソちゃんの中に、「アタマちゃん」と「ココロちゃん」が同居している。そうして、ココロちゃんは、カラダちゃんととても仲良し。
困っていた「不眠」に関しても、なるほど、「アタマちゃん」が「眠ろう眠ろう」と考えているから、眠れない。
ココロちゃんに身をゆだね、自然ななりゆきに任せれば、カラダが自然と反応してくれる。
私は動物なんだから眠れないはずはないではないか。
それを、アタマちゃんが制御してしまっている状態なのだ。
(……と、頭で考える私)
「頭でっかちなんだよね」
そんな風に、ミソちゃんが話しかけてきます。
「……だよね……ところで、そこでそうやって私に話しかけてくるミソちゃん。あなたは、どちらのミソちゃんなの? アタマちゃんなの、ココロちゃんなの? 二人一緒なの?」
「……そういうのを、ごちゃごちゃ考えてること自体が、頭でっかちなんじゃないの? 考えすぎだよ」
「……そうかもしれないけど……そりゃ、不思議に思ってもおかしくないでしょう?」
「まあね。でも、ミソは分かったんだよ! 分からないってことが、分かったんだよ」
そう言って、ミソちゃんが胸を張りました。
「……は?」
「ミソは、気づけないんだよ。ココロとか、アタマとか、どっちが、どうとか」
ミソちゃんが煙に巻くようなことを言ってきました。
「要するに、ミソは、ミソなんだ」
ミソちゃんがまた胸を張ります。
「は? 何それ……」
「だーかーらー、私は、私! なの!」
「そう言われても……要するに、もう考えることに疲れたから、アタマもココロも全部まとめてひとつってことで、おしまいってこと?」
「ちょっとー。私のこと、舐めないでよ!」
ミソちゃんが、鼻息荒く睨んできました。
「じゃあ、何よ。ややこしいこと言って混乱させないでよ」
「だーかーらー。ミソの中に、アタマちゃんとココロちゃんがいる。そのことに、気づけているのが、わ・た・し、なの! というか、それこそが、あ・な・た、なの!」
「…………は?」
「ミソの中にある、アタマちゃんと、ココロちゃんと、ついでに五感を味わっているカラダちゃん。これらを、毎日味わったり、感じたり、考えたりしていることに、『ぜんぶ、気づいているのが私』なの!」
「………へ? 気づいている……?」
「まだ分からないの? ……まったく頭が悪いね……ってこれはブーメランになってかえってくるヤツか……ったくもー、気づけ!!」
「気づいているのが、私……て……えーっと……ミソちゃんと私って、一心同体なんじゃないの? 私=脳みそのミソちゃん でしょ??」
「そりゃあ、いつも一緒だし運命共同体ってところはあるよ。でも一心同体じゃないんじゃない?」
「…………どういうこと」
「……だって、一心同体なら、どうやって私に『ミソちゃん』なんて名前つけて、話しかけてくるのさ。一心同体だったら、そんなことできっこないじゃん」
「……そうだけど……」
「ミソのこと、外側から見てるじゃん!」
「え……てことは、ミソちゃんやカラダちゃんを、見つめているこの私が、私ってこと……?」
「そうそう。考えてみれば、最初から、ずっとそうだったよね」
「えーーーーやっぱり、よくわからない」
「つまり……私は、意識、なの!」
「は??」
あまりにも聞きなれた、でもどこにあるのかよく分からない、近くて遠い言葉でした。
「あなたは、『意識さん』です」
「え、え、えーーーー」
あまりにも当たり前すぎるような、でも突拍子もないことのような。
「私に起こる、ありとあらゆる感情の、感覚の、思考の、記憶の、ぜーんぶを知っている、気づいているのが、私。私という意識」
「……えーーーっと……」
あまりのことに、「私の意識」は、いったん休憩が必要でした。
なんか、すごく当たり前のこと……。
でも、とてつもなく衝撃的なことのような気が……。
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