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COCO『今日の早川さん 4』 : 本キチの自慢話

書評;COCO『今日の早川さん 4』(早川書房)

本書60ページの二つ目のエピソード「単数にして複数の存在」に、早川量子と富士見延流の次のようなやりとりがある。

延流『古本屋さんで可哀相とか言って毎回同じ本を救出するのをやめれば、(部屋が)もっとすっきりすると思いますよ』
量子『いいんだよ。別個に存在している以上、それはもう別の本なんだから。『サターン・デッド・ヒート』なんて8冊もあるよ』

量子の「別個に存在している以上、それはもう別の本なんだから」という理屈は、私自身もオリジナル理論としても長年愛用してきたものだが、他にも使っている人がいたのを初めて確認できた。

しかし、この会話で気になる点もいくつかある。
例えば「古本屋さんで」という場所の限定は、必ずしも正確なものではない。つまり、量子さんなら「新刊屋さん」でも似たようなことをしているはずだし、場合によっては「友人宅で」も同じことをやっているかもしれない。曰く、「私、この本持ってない」「えっ?持ってるでしょう?」「いいえ、その本は持ってない。欲しいなあ…」。

また「8冊もあるよ」なんてのも、たぶん誤摩化しで、真相は「80冊」かも知れないし、「1箱」かもしれない。

似たような言葉としては「私、この本を世界一たくさん持ってるよ」とか「この作家に関しては、世界一たくさん持ってるはず」などがある。

しかし、そこまで多いと、処分にも苦労するので、最後は「燃やして稀購本にする」ということも考えないでもない。一一と想像される。

他にも、ヤフオクで古本を落札すると、送られてきた封筒に記されていた出品者名が知り合いだったとか、知る人ぞ知る著述家やその家族だったりする等という、純文学的に心にしみるエピソードなどもあるはずだ。

初出:2019年1月29日「Amazonレビュー」
  (2022年8月1日、閉鎖により閲覧不能)

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