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移住先で出逢った、第二のお母さん。

古希。

今日は、移住先で知り合った
大好きな女性の70歳のお誕生日。

私にとっては、
第二のお母さんのような存在だ。
(名前を仮に美子さんと呼びます)

誕生日の中でも
10の区切りは、少し特別なもの。
特にこの10年で
旦那さんとの卒婚や
私と同じくこの町へ移住した、美子さん。
人生の岐路を大きく変えた美子さんにとって
手放したもの、
手に入れたものも含め、 
いろんな気持ちになる
節目の70歳かなと思った。

数日前から少しずつ準備をして、
昨夜あーでもない、
こーでもないと言いながら、
袋を開けた時にパッと嬉しくなるように 
家にあるもので古希っぽい包装を考えた。

本当に心ばかりのプレゼント。
メインは、写真。
毎日のように一緒に散歩してる日常の中で、
二人が笑顔になった景色やお花たち。
それに詩を重ねて、印刷した。

お祝いカードには、
美子さんがいつか行きたいと言っていた
富士の芝桜で撮った写真を使った。
富士山と芝桜、桜と空がばっちり入った一枚。
先日、旦那さんと
富士の芝桜まつりに行ったのは
このためでもある。

ちょうどそこで、
富士山のモチーフの可愛い羊羹を発見。
古希のイメージ色をした紫色があり、
「これは可愛いし縁起がいい!」と買った。

あとはおまけに、家にあった
味の良いコーヒーパックと写真立て。


凝り性の私は
だいたいいつもプレゼントづくりに
予定以上の時間がかかる。

お金を出せばポンと、モノは買える。
クリック1つでポンと、モノは送れる。
包装までキレイにしてくれる。
楽である。

分かってはいるけど、
私はたった一人のことを想い、
プレゼントを考え、つくり、
準備するその時間が好きだ。

昔のようにお金の自由度がない分
時間はたっぷりあるので、
「想いを送る」というほうに
よりシフトしたのかもしれない。

もちろん、上げたいモノが
「これ!」と決まる時もある。
やっぱり楽だなと思う。 
買ったモノでもつくったモノでも
想いの大きさは変わりはしない。
「プレゼントをしたい人」がいる、
そのことが幸せだったりする。

移住する前は
そんな気持ちになれる70歳と出逢うなんて
思いもしなかった。


そんなこんなで、
夜完成したプレゼントを持って
いつもの公園へ。

今日くるかなぁ~と、ドキドキ。

最近は体操をする前に
みんなへの挨拶を心がけている。 
けど今日は
美子さんのことで頭がいっぱいで、
先に踊る定置にスタンバイ。

すると、80代のおばあちゃんが
私の春用の体操着や体型を褒めてくれたり、
近づいて身長比べをしたり、
楽しそうに話しかけてくれた。

実はちょっと苦手だった、 
「ヒトには負けない」という
意地が強いおばあちゃん。

だけど、最近挨拶を心がけてたら
向こうの心の距離が近づいたというか、
壁がスッとなくなった感じで、
笑顔でお話してくれることが増えた。

今日はなぜか、
会話の中に見え隠れするネガティブな発言も
すんなり受け入れられてる自分がいて、
驚いた。

プレゼントをつくって
私の心が洗われたのだろうか。

「私、頑張り屋だからね。
でも私の頑張り屋は人と違うから」
という言葉も、
❝たしかに意地と根性の鎧を着てるもんなぁ。
でも自分でも分かって
そうしているところが
なんかもう可愛いなぁ~。
もっと楽な生き方があると思うけど、
そうやって生きて得るものが
もう、おばあちゃんの生きがいや
笑顔になってるのかもしれない❝
と思った。 

「この人はこういう人」という
冷たい他別的な受け入れ方ではなく、
「その人の生き方をありのまま
受け止めて、尊重する」というような
今までとは違った感覚だった。

すると、後ろに美子さんの姿が。

ホッ。よかった。
「おはよう~!」
「おはようございます!」
今日はお化粧してる。
いつも以上にキレイだなと思った。

体操が終わり、
「美子さん、今日一緒に散歩いきましょ〜」
と声をかける。
すると、物知りおばちゃんが
小さな声で私に
「今日ね、美子さん、70歳のお誕生日なの」
と耳打ちしてきた。
「そうなんです!知ってますぅ!」
思わず大きな声が出てしまう。
美子さんが
「何々、どしたの」
と寄ってきて、そこで
「70歳おめでとう~」という雰囲気になり、
近場にいた人たちと
お祝いの言葉をかけた。

プレゼントを渡すタイミングが
よく分からなくなってしまったけど、
散歩の時に渡そう。

すると80歳のおばちゃんが
せっかくの美子さんの誕生日に
「年をとること」についての
ネガティブな話を
紙芝居のようにしゃべるから、
ちょっと離れた。
距離感、大事。

そして、ラジオ体操が終わり
おじちゃん、美子さん、私。
いつもの三人でお散歩。

今日はおじちゃんが見つけた
いろんなお花が咲いているスポットへ。
またいくつか花の名前を覚えた。

連休中の話を聞かれたけど、
プレゼントのことがあるので
本当は一番話したい富士の芝桜の感動を抑え、
静岡の山でひたすら
バードウォッチングをした話を
クローズアップした。

歩いていると美子さんのお知り合いに
よく、会う。

畑にいた猫大好きおばちゃんからは、
スナップエンドウをもらう。
美子さんはスナップえんどうが
とっても好きらしく、喜んでいた。
「美子さん、誕生日プレゼントですねっ」
と言うと
「あら、今日誕生日なの、おめでと~」
と猫好きおばちゃんが
豆をさらに2つプレゼントしていた。
そのやりとりも可愛かった。

のんびり歩いてると
「節目の70歳、やっぱり違いますか」
という話に。
一番最初に出てきた美子さんの言葉は
「やっぱり体に支障が出だしたね~」
だった。
「でも、もう無理はやめようと思って。
GW中も体操も休んでたのよ。」と。

へ~美子さんがお休みなんて珍しい。

頑張り屋で真面目な美子さん。
朝、体操とお散歩をしないと
1日がもったいなく感じてしまって、
体がキツい時も
つい無理して来てしまうと言っていた。

そんな美子さんと
この頃は「無理をしないこと」について
話すことが増えた。

それを深く考えるきっかけになったのは
ある日、美子さんが
歩き過ぎて足を痛めてしまったから。

美子さんはずっとフルギアで
慌ただしい人生を過ごしてきた。  
“頑張って生きる”ことが当たり前で、
我慢に強い。
だから今も頑張りすぎる自分を
なかなかセーブできない、と話していた。

私も頑張り屋で、
無理に気づかず身心を追いつめる人生を
送ってきたので、  
その気持ちがよく分かる。

足の痛みは神様からの
「少しやすみなさい」という
メッセージかもしれない。

頑張らないためには
どうしたらいいか一緒に考えた。

≪でも、美子さん自分から
お休みできるようになったんだ、すごい!≫
と思った。

きっと今、美子さんは
無理をしない生き方を歩む
旅の途中なのかもしれない。
もっともっと楽になりますように、と願った。

おじちゃんとバイバイし、二人で歩く。
私との話が楽しいから
もうちょっと歩こう!となった。

互いに旦那さんとの馴れ初め話をする。

美子さんは
「経験が少なくて、舞い上がってたのよ。
大恋愛したかと思ったら
大家族の家にポンと一人やられてね、
選ぶ人を間違ったのよ」と
卒婚した旦那さんとの話していた。

「どうなんですかね~」
私にはそれが
間違っていたのかは、分からなくて。
もう一つの道を選んだら
もっと大変だったかもしれないし、
やっぱりそれは分からなくて。

1つ分かっているのは、
今、美子さんが
ここに居てくれてることは
私にとって
幸せだということ。

今日はおしゃべりの途中で
「はなちゃんは本当素直で
旦那さんが
ずーっと好きだったのも分かる。
うちの娘より、本当いい子よ。」と
言ってくれた。
お世辞と分かっていながらも
嬉しくなった。

なぜだか
美子さんといると素直になれる。
素直な言葉が言えるし、
それを美子さんは
素直に受け取ってくれる。
だから私はもっと素直になれるし、
美子さんの言葉も
素直に受け止められる。

そして、
そんなありのままの素直な私を
好きだと言ってくれる美子さんが
好きだ。

私たちは価値観と距離感が
とても合うんだと思う。

そして、
バイバイする分かれ道の手間で
「今日はもう、これでよい日だ」
そう穏やかな顔で
空を眺めていた。

美子さん、
お花も見れて友達にも会えて、
スナップえんどうももらえてよかったね。
変わりない日常だけど、
いつもの挨拶、
人との出逢いやふれあいに
美子さんは
感謝してるんじゃないかなと思った。

最後に
(荷物持ってたからバレてただろうけど)、
「これ、美子さんに」と
プレゼントを渡す。

「え、これ用意してくれたの?
なになに」

「家帰って見てくださ~い。
包装がしっかりしてるんですが、
本当たいしたものじゃないんです。
包装はイメージを大事にしたので」

「もう気持ちが嬉しいのよ。
本当はなちゃんはステキな子ね。
ありがとう~」

「いえいえ。
(照れ臭くなり)では、
今日はステキな一日を過ごしてくださいね。
お誕生日おめでとうございます」

「ありがとう!また明日ね」

バイバイ!

早朝、足の違和感で
テンション低めだった美子さんが、
帰る頃にはいつもの笑顔に戻っていた。

あなたが元気になってくれてよかった。

私も元気をもらって帰った。

70歳もどうか、元気でいてください。

実は、
美子さんの誕生日プレゼントと一緒に、
今週の母の日のプレゼントもつくっていた。
でも込める想いは、一緒だった。

本当にお母さんみたい。
大切な人。

美子さんの誕生日と母の日が近いことも
何か意味があるような気がした。

うん。
やっぱり美子さんは
第二のお母さんなんじゃないかと思う、
今日この頃です。

あさのはな

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