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なずな の おうた

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noteに載せた詩をまとめたものです。 ピヨピヨな言葉たちですが、一文字一文字丁寧に書きました。
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2021年8月の記事一覧

【詩】すっぱい!

【詩】すっぱい!

焦る時
汗も つばも 空気も すっぱくなる

朝、目を開けて
時計、見て
遅刻、悟って

口の中に 味 広がる

すっぱい!

【詩】生か死か

【詩】生か死か

苦しい時こそ よく思う

――死んでしまいたい
と人はよく言うけれど

――生きてしまいたい
とはよく言わない

苦しい時こそ よく思う

【詩】下っ端天使の大きな疑問

【詩】下っ端天使の大きな疑問

いつからか

人間の皆さんは 僕らを仲介役にして

神様と会話するようになりました

なぜなんでしょうか

神様と

喧嘩でもしてるんでしょうか

【詩】アン・シャーリーにはなれないの。

【詩】アン・シャーリーにはなれないの。

空想が わたしを必要としているのではなくて

わたしが 空想を必要としているのだ

【詩】心臓が黒くなる

【詩】心臓が黒くなる

心臓が 黒くなる

自分から
黒くした部分もあるし

周囲の人に
物に
環境に
黒くされた部分もある

だからといって
人のせいには しませんよ

心臓が 黒くなる

どくどく どくん
どく どくん

脈打って

血液どんどん巡ってく

真っ黒な血が巡ってく

ここでようやく気がついた

心臓が 黒い のではなくて

血液が 黒く 濁ってしまった

それだけなんだ と

【詩】筋の通らない復讐

【詩】筋の通らない復讐

わたしの生き方は 月桂樹の葉に似ている

変わらないし 変われないのだ

わたしの生き方は 本当に 月桂樹の葉に似ていた

……だけど父は花を愛していた
椿の花 を 愛していた

――思い出す
――椿の花を見ていると幼い頃の日々を思い出す
――目を閉じるだけで あの日々を思い出す

……病で苦しんで細くなった体を折り畳みながら
父は細い声で わたしに語った
淡くなっていく体温が わたしの手を優しく

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【詩】鬼哭啾啾

【詩】鬼哭啾啾

あなたを殴る

その為の拳を

奪い取られてしまった

【詩】髪長姫の母は、ふたりいる。

【詩】髪長姫の母は、ふたりいる。

わたしには
お母さんがふたりいる

わたしを産んだお母さんと
わたしを育てるお母さん

それぞれに
それぞれの言い分が
あるらしい

***

わたしを産んだお母さんは遠くで語る

「あんたを産みたかったから
あれを食べなきゃならなかったんだよ」

「魔法使いの、あの畑の、あれを食べなければ
お前を産む 産んでやる力なんて
出なかったんだよ」

わたしを産んだお母さんは
妊婦さんの頃
隣に住む魔法

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【詩】灰かぶり

【詩】灰かぶり

午前零時になったら魔法がとける

とけるけれども

とけてしまってもいい

そう思った その理由は

「ただお洒落がしたかった」

それだけだったんです

白粉、口紅、髪飾り
リボンにドレスに、下ろし立ての靴

姉さんたちの真似をして

お洒落がしたかった

「ただお洒落がしたかった」

それだけだったんです

姉さんたちに

あんなことをさせる

そんなつもりは

爪の先から かかとの端まで

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【詩】白雪姫

【詩】白雪姫

むしろ

わたくしのことは

「林檎姫」と

お呼びくださいませ

林檎に魅せられ
林檎を咀嚼し
危うく林檎に殺されかけた

そんな わたくし

わたくしを

むしろ

「林檎姫」と

お呼びくださいませ

【詩】『人魚姫』

【詩】『人魚姫』

故郷に一生帰れなくなるんだったら
海を出なきゃよかった

それに

尾びれを捨てなきゃいけないのなら
海を出なきゃよかった

歌が歌えなくなるぐらいなら
海を出なきゃよかった

重たいナイフを握らなきゃだめなら
海を出なきゃよかった

出なきゃよかった

そうすれば

寝ているあなたの枕元で
こんなに泣かずに済んだのだし

わたしじゃない誰かを見つめる
見つめてしまう
そんなあなたを そういうあな

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【詩】『針』

【詩】『針』

頭から爪先まで
一本の針 になったよう

冷たくて、金属くさくて、
鋭いの

とんがっているから
誰にも相手にされないの

泣きたいな。泣きたいけど

でも

涙なんか流したら
体はさびちゃうだろうしさ
そもそも
この体じゃ
水滴なんて出ないかもしれないしさ

泣きたいけど 泣けないな。
泣けないけど

くるしい
くるしい
しんどいよ

頭から爪先まで
一本の針 になったよう

手あかのついた

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