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【詩】筋の通らない復讐

わたしの生き方は 月桂樹の葉に似ている

変わらないし 変われないのだ

わたしの生き方は 本当に 月桂樹の葉に似ていた

……だけど父は花を愛していた
椿の花 を 愛していた

――思い出す
――椿の花を見ていると幼い頃の日々を思い出す
――目を閉じるだけで あの日々を思い出す

……病で苦しんで細くなった体を折り畳みながら
父は細い声で わたしに語った
淡くなっていく体温が わたしの手を優しく握った

母は来なかった

父の最期に

母は来なかった
来なかった

母は来なかった

あの女が何をしていたかは あえて言わないけれども
あの女が誰といたのかは あえて言わないけれども
あの女は あの女の あの女を
すべて あえて言わないけれども

ただ わたしは 月桂樹の葉だから

月桂樹の葉の生き方しか できないから

その先の行動は
変えられないし
変わらない

わたしの生き方は 月桂樹の葉に似ている

変わらないし 変われないのだ

だけど 椿
父は 椿の花 を愛していたから

椿の真っ赤な花びらを
五枚
忍ばせて

その花びらに
月桂樹の葉を添えながら

ここから先を生きていこうと

死んでいこうと

決めたのだ

そうです
すべてが あべこべで
筋など通っていないのです

それで構わないのです

さあ

はじめないといけません

筋の通らない復讐を終えないといけません





【花言葉】
月桂樹の葉:「私は死ぬまで変わりません」
椿(赤):「控えめな素晴らしさ」「気取らない優美さ」「謙虚な美徳」

*山本周五郎『五瓣の椿』をイメージして書いた詩になります。

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