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藍色の空と君と

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小説と詩の混合作。 ブルーアワーを撮る君に惹かれた僕は目を擦り空を仰いだ。綺麗な空が1日に何度も色を変える。 素敵な事実を教えてくれた君に僕は何かを届けたいと思い…
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#物語

注がれる輝き

不安がベッドに根付くから
未明に跨ぐ藍色の空を写真に収める

白昼の空に映る青は掴めない

藍色の滲み具合は
円形をなさない私の心に寄り添ってくれる

光が眩しいから
前髪を長くして

笑顔が苦しいから
耽美なものを好んで

そうした心地に慣れた頃

君は私の在り方を知ってか知らずしてか
光を届けてくれた

前髪が長い私を褒めてくれた
バッドエンドな映画を見て感想をくれた

私がこっそり撮る藍色の

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日の出が綺麗ね

空想の果て
手の届かない空を想う

君に伝えられない真意は
深夜に置いたまま

今は目の前を見つめよう
希望を胸に朝日を浴びるの

夜が明けるね
新しい年の始まりだよ

ここが私のお気に入りの場所
海が綺麗でさ 静かな波の音が好き

君にだけ打ち明けるの

水平線にオレンジが浮かび
空は滑らかな青に切り替わる

あと少し
あと少しで今年初めての朝

ああ
君の晴れやかな笑顔が昇って嬉しい

二人き

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プロローグを経て

どこかで誰かが号泣必死の映画を観て泣く

「今日から人に優しくしよう」とSNSで決意した誰かは数日後、クラスメイトに平気な顔して罵詈雑言を浴びせる

物語は届かないの?
言葉は届かないの?
思いは届かないの?

私はそっと目を閉じた
私は部屋に閉じ籠った
私は前髪をより伸ばした

現実から逃げたくて
私は藍色の空を撮り始めた

明日なんて来るな
金輪際、夜は空けるな

祈りが通じるはずもなくて

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騎月雨の詩

夜を彷徨う雨がしずかな時を奏でてくれる

未明にブルーアワーを撮る君も今日は天井を眺め朝を迎えるだろう

年を跨ぐ度 月を跨ぐ度 夜を跨ぐ度
胸に手を当てて鼓動に耳を澄ます

夜に交わすメッセージは
世界を潤す雨のように僕の心を君で満たす

雨は月を隠すね 月が隠れても露わになっても
この想いは不変で雲に覆われた方が君を考える時間は長い

月が変わっても月が変わる直前でも
雨の日は電波を通して君と

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ブルーアワーを撮り続けて

君が撮ったブルーアワーが
コンテストで大賞を受賞して
第三者に評価された それは喜ばしい

でも実際のところは

君の辛さや願いが込められた
その写真が誰かに届いたこと

君が早く起きて撮り納め
努力が報われたこと

その背景に僕は心打たれるんだ

君が切り取る世界は
白昼に空を仰ぐことを躊躇う人に
きっと届くだろうね

明るくない空でも
日が出づる前の空でも
夜明けを望む空は綺麗だって

想いは

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マジックアワーをお返しに送る

いつか君に聞いたカメラの機種

そのカメラを購入して空の色が移ろいゆく中

日の入り後に映える、柔らかな金色の空を収めたよ

君が日の出前の空を送るから
僕は日の入り後の空を送るとしよう

君と共有できる趣味
君と僕を繋ぐ空

季節も空も留まることを知らない
1日でさえ幾度も空は色を変える

確かなものなんてあるのだろうか

思考も習慣も想いも不確かで
不変は約束できない

だから僕は写真を撮る

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ブルーアワーを撮らない日

「今日はブルーアワーん撮る気分じゃない。」

夜明けを待つ時刻に君から届いたメッセージ。

「どうして?」
僕の返信にすかさず答えた。
「わずかな時間に空を占めるブルーアワーの色が好きだったみたい。」
「うん。」
「無理して早起きして仰ぐブルーアワーが好きだったみたい。」
「うん。」
「無理して早起きしてわずかな時間、集中して撮るより好きな習慣ができたみたい。」
「それは何?」

少しの間、と言っ

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