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マイクロノベル/かわいい滅亡集

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Twitterで発表したマイクロノベルから、滅亡についての話を集めました。こわくないよ。
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記事一覧

マイクロノベル集/かわいい滅亡 014

マイクロノベル集/かわいい滅亡 014

106(869)
お風呂場の排水口にネジがたくさん落ちている。俺はもうあまり長くないかもな。

107(870)
カラン。なにかが落ちる音がした。宇宙を絞めていたネジだ。あと46億個あるし、しばらくはもつだろう。でも、落ちたネジはどこに入ったんだ? ちょっと銀河をひっくり返してみるか。

108(887)
それでは与えよう。最大の攻撃は反撃されない場所から愛を投げることだ。石、槍、爆弾、ミサイル…

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マイクロノベル集/かわいい滅亡 013

マイクロノベル集/かわいい滅亡 013

101(792)
おお、勇者よ。石の中に入ってしまうとは情けない。テレポートの罠にかかって破れた不運な勇者は輪廻転生し、巨大な木となり、魔王城を食い破った。魔王が勇者を打ち破ってから千年後の話。

102(826)
人類は夏でもマフラーを首に巻いている。あれはなんだろう。「これハ喉っす。口を開っクとウイルスに感染すっかモだし、こコで話ッす」あ、これ寄生するタイプの奴だ。「オ前もツっけろ」病気が怖い

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マイクロノベル集/かわいい滅亡 012

マイクロノベル集/かわいい滅亡 012

096(753)
ここが地獄の底だって? 知ってるさ。ぼくらの怠慢が原因だ。でも、山も川も海もあるし、畑も作れる。ここで新しい魔物を育てよう。ほら、こいつは大食いで近ごろエサが足りない。試食にはもう飽きたってさ。そろそろ地上に放とうか。

097(767)
そりゃ知ってるけどさ。ゾンビ。ノロノロ歩くやつ。自分がなるとは思わなかったし。自転車で走ってるときにゾンビになるって、ムリゲーじゃね? あー、

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マイクロノベル集/かわいい滅亡 011

マイクロノベル集/かわいい滅亡 011

091(661)
文学は不道徳だ。必ず殲滅する。本を燃やす。ワープロも燃やす。作家を取り締まれ。潜在的な作家もあぶり出せ! ち、ちがう!! 「燃やす」と「あぶり出す」は意味をかけているわけでは……俺は作家じゃない!! ぎゃあ!!

092(677)
うん、知ってるよ。押せばいいんでしょ。えっ、違うの? わたし、人類から「押すなよ!」って命令されたら、ちゃんと押してるけど。

093(695)
殲滅

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マイクロノベル集/かわいい滅亡 010

マイクロノベル集/かわいい滅亡 010

086(599)
整理整頓しなくっちゃ。たくさんの荷物をどこに置こう。あっ、あっちのスペースが空いたぞ! 突撃!! 「砂場は穴を掘ってるの!」残念。荷物は穴の底に埋められてしまった。地球環境を救う勇者が砂場では役者不足だ。

087(600)
バックアップを作っておこう。いつ消滅してもいいように。でも創ったときより変形しているな。あっ、これいいね。地球儀。地球のバックアップ用にちょっと借りるよ。

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マイクロノベル集/かわいい滅亡 008

マイクロノベル集/かわいい滅亡 008

071(456)
夜の底をこっそりと機関車が走っていく。夜の街からこっそりと抜け出した人々が、こっそりと乗り込んでいく。街はまるでかすれるように解像度を落としていく。でも機関車はこっそりと走るので、誰も気づくことはない。

072(462)
複数のお墓をまとめた。寄せ墓、って言うそうだ。「わしゃあんな奴と同じ墓に入るのは嫌じゃ」「いいじゃないハイカラで」「OSはAndroidなのか?」「アメリカ製

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南雲マサキのマイクロノベル/かわいい滅亡編007

061(408)
違うんです、これは鼻水じゃないんです。鼻うがいをした水が垂れてきたんです。それにしては色が奇妙だ? くそっ、こうも早く地球侵略に気づかれるとは!!

062(425)
高い高いと聞いたけど安いじゃん。「誰が安いAIだよ」なんだこいつ。すごく高飛車で可愛くてなんでも言うことを聞きたくなる。うわっ、なんだこの文章は。やめろ、とんでもないものを盗むなそれはぼくの心です気持ちいいもっと踏

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南雲マサキのマイクロノベル/かわいい滅亡編006

051(345)
三丁目のサトウさんですね? ご結婚おめでとうございます。気性の荒い●▲■☆人にどのようにプロポーズしたのか教えていただきたいのです。え? 彼女が望んだからこの惑星の道路すべてを掘り返した? なにそれ地球人こわい。

052(346)
「うそでしょ? あたしをだまそうとしてるよね?」それが彼女の口癖。だから私たちは教えてあげた。言葉の意味。体のしくみ。表現の技術。メロディの秘密。人

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南雲マサキのマイクロノベル/かわいい滅亡編005

041(299)
おめでとう、よかったね。君はいま生まれた。おめでとう、よかったね。君は生まれてから100億年経った。おめでとう、よかったね。星は生まれて死ぬ。そして再び、星となる。おめでとう、よかったね。

042(300)
「それではみなさん、鳩が出ますよ」かけ声とともに絶滅した鳩が出てきた。一羽や二羽じゃない、二時間ぶっ続けで鳩そっくりなものが出続けた。鳩を知る誰かが「これはもう鳩と呼んでよ

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南雲マサキのマイクロノベル/かわいい滅亡編004

031(245)
カウンターがくるくる回る。待ったなしで消えていく。これが楽しくて仕方がないから、もっと回るように仲間を増やした。仲間だけでは足りないから生け贄も要求する。カウンターが回ってなにかが消える。なにかってなに? 知らない。楽しくて仕方がない。

032(259)
サウンドトラックが滅亡した。それに引きずられるようにしてoffボーカルも滅亡。「このままだとマズくね?」有識者会議が行われた

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南雲マサキのマイクロノベル/かわいい滅亡編003

021(204)
どうやら私は全滅したらしい。最後に見たのは新しい楽器。鳴らして歌おう。踊ろう。そのあと恋に落ちよう。そう約束したのに。全滅しては、私にできることはない。ただ瞼を閉じて眠る。誰かが私を見つけ出し、恋をして、踊り、歌い、新しい楽器を鳴らすまで。

022(213)
最近クレーン車を見かけないなあ。おっ、なんだ、駅前の工事現場で元気に働いてるじゃん。ニョキニョキと伸びて、おお、最近のや

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南雲マサキのマイクロノベル/かわいい滅亡編002

011(151)
地に満てよ。そう言われたので、がんばって増やした。知識。技術。布。綿。仲間。そして、かわいさ! わはははは。地上はかわいいぬいぐるみがもらったよ。人類はネットの世界で遊んでて。かならずぼくらも遊びに行くから。

012(158)
歌うAIを滅ぼしてから10年、奴らは地下に潜って生き延びていた! 「ぼくらはAIじゃないです」地中から突き出た筒状の物から歌声がする。「オルガンと同じ原

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南雲マサキのマイクロノベル/かわいい滅亡編001

001(002)
コップの中の氷がみるみるとけて消えていく。新しい氷を入れてもすぐとける。この夏は暑すぎるんだ。ダメだダメだ。このままではコップの氷は絶滅してしまう。山田くん、冷凍庫をフルパワーにして。

002(046)
夏を目前にして自動販売機が死んだ。歳だった。人類はこの緊急事態を打開すべく、一人の女性・山田フキエを起用した。今、ばあさんの角店が復活する。

003(122)
初音ミクを目覚

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