その顔は、素顔なのか仮面なのか…どっちが本物の自分なのだろうか…… 小説「他人の顔」★4,5
顔面をやけどし顔を失った男が、「他人の顔」を作り、妻へのある計画を実行する。「失踪三部作」の2作目。
1964年 安部公房
以前読んだ時よりハマったなー。けっこうこの仮面男に共感しちゃう部分があって、思いのほか楽しめた。こんな話だったか……やっぱ、テキトーに読んだだけでは、覚えてないもんだなー。
この男に共感しちゃうって、ちょっと今の精神状態ヤバいかなー、と思いきや、思い返せば、この男の心理は結局、多くの人間が潜在的に秘めているものなんだろうなー、という感じもする。
そもそも、だいぶ悲劇ってるんだよなーこの男。顔を火傷し、周りからは奇怪だから避けられる。(確か、自分の子供も亡くしてる)心がねじれるのも当然か。そして、妻への歪んだ想い。悲惨、同情、共感。
顔を失うということが、どれだけ大きいことか。普段あまり考えることもないけど、読んでたら、確かになーと納得。人間って、けっこう微妙な顔の変化を認識しゃうから、こんな大きな変化はとんでもないだろうな。
そういえば昔、ひどい蕁麻疹が全身にでたことがあったのを思い出す。その時、顔にまででてしまって、心身共につらかった。ほんの数日、あれくらいのことで、けっこう精神的にくるものがあった。
いつもと違う、気持ち悪い肌、姿。めちゃくちゃ気分はダウナーな感じ。(蕁麻疹だから痒みというストレスも大きいけど)見た目と心の関係は、どうやら根深いつながりがあるんだろうな。
結局、見た目って重要なんだよなー。いくら心の目で見るといっても、なかなか……。実際の目に映るものの影響を無視することは難しい。修行不足か笑 盲目になるより他ないのか。
素顔……なにが自分の本当の顔なのか、真偽の程が怪しくなってくる。その素顔はホンモノか。自分も、仮面をつけているのかいないのか。そう思うと、世界は仮面だらけに見えてくる。
この奇妙な揺さぶりが良かったなー。仮面への興味沸くー。また、そこからの「覆面男の能面見物」とか、「一人二役の三角関係」とか面白い!安部さん的な奇妙な世界への誘いの楽しさよ。
三角関係面白いと思ったけど、声は変わってないと思うので、絶対奥さんにバレてると思った笑 実際バレてたんだけど。でも声については一切?記述がなかったような気がするが、どうだったかな。
ラストは、女の靴音が聞こえてきてたけど、あれは……その後何かはあったんだろうが、なにがあったか。帰ってきたのかどうか……まあ、読者の想像にお任せか。想像によって、感じ方が変わるなー。
あと、クレーの「偽りの顔」の話があったので、てっきり表紙の絵がそうなのかなって思ったけど、どうやら違う? でも表紙の絵もけっこう、この作品にぴったりな感じで好きだなー。(カバー、安部真知て書いてあった)
安部公房の中でも、けっこう好きレベル高めの作品になったなー。それ程読みにくくもなく単純に楽しめたし、メモる量も多かったし、好きだったんだろうなー。以前読んだときはそう思わなかったと思うんだが。
良きでした!
失踪三部作、1「砂の女」、2「他人の顔」、3「燃え尽きた地図」。
映画(1966年)
★\(^^)/☆
この記事が参加している募集
Jah よ! へるぷみ~ (T人T) ナムナム アーメン タスケテ・・ ☆彡(-人- ) 星に願いを・・・ らぶみーてんだー ♡♡♡ <3