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その顔は、素顔なのか仮面なのか…どっちが本物の自分なのだろうか…… 小説「他人の顔」★4,5

顔面をやけどし顔を失った男が、「他人の顔」を作り、妻へのある計画を実行する。「失踪三部作」の2作目。

1964年 安部公房

~テキトーな流れ~
おまえ、隠れ家にたどり着き、手紙とノートを読み始める。
<黒いノート>
ぼくの日記、顔の事、過去の事、仮面の計画、K氏の研究所へ、模造の指、顔をめぐる自問自答、高校時代の友人・古生物学者のもとへ、試行錯誤の仮面作り、顔探し、型取る、男去り寂寞感。
<白いノート>
おまえ(妻)との記憶、映画館の話とか。仮面作り、完成「他人の顔」、虚脱感。書き出しのS荘の隠れ家に到着、皺をなじませる作業。仮面付けて外出、弟と偽る、朝鮮人の店、ヨーヨー少女と内緒ごっこ、玩具売り場、空気拳銃購入、仮面との問答。
<灰色のノート>
久しぶりの電車、妄想、仮面に外の経験、おまえ(妻)のところへ、拳銃つきつける、嫉妬、愛していた、久しぶりのアルコール、不法行為について、仮面が一般的になった時の問題、Barで娘、銭湯で入れ墨男、おまえ(妻)を待ち伏せ、誘惑、三角関係、ヨーヨー少女にばれてる?、おまえ(妻)との二度目の逢引後にこの手記を書き始める。
<灰色のノート、最後の余白に逆に書かれた自分だけの記録>
待ち続けたがおまえ(妻)来ず、出向くことに、おまえ(妻)の手紙、とある映画の断片、「行為」、女の靴音が聞こえてくる…。

以前読んだ時よりハマったなー。けっこうこの仮面男に共感しちゃう部分があって、思いのほか楽しめた。こんな話だったか……やっぱ、テキトーに読んだだけでは、覚えてないもんだなー。

怪物の顔が、孤独を呼び、その孤独が、怪物の心をつくり出す。

この男に共感しちゃうって、ちょっと今の精神状態ヤバいかなー、と思いきや、思い返せば、この男の心理は結局、多くの人間が潜在的に秘めているものなんだろうなー、という感じもする。

そもそも、だいぶ悲劇ってるんだよなーこの男。顔を火傷し、周りからは奇怪だから避けられる。(確か、自分の子供も亡くしてる)心がねじれるのも当然か。そして、妻への歪んだ想い。悲惨、同情、共感。

顔を失うということが、どれだけ大きいことか。普段あまり考えることもないけど、読んでたら、確かになーと納得。人間って、けっこう微妙な顔の変化を認識しゃうから、こんな大きな変化はとんでもないだろうな。

人間の魂は皮膚にある……、~傷ついた兵士、何よりもまず外見が元通りになるかが関心事。外傷、特に顔面の傷の深さは、まるで写し絵みたいに、そっくり精神の傷になって残る。

そういえば昔、ひどい蕁麻疹が全身にでたことがあったのを思い出す。その時、顔にまででてしまって、心身共につらかった。ほんの数日、あれくらいのことで、けっこう精神的にくるものがあった。

いつもと違う、気持ち悪い肌、姿。めちゃくちゃ気分はダウナーな感じ。(蕁麻疹だから痒みというストレスも大きいけど)見た目と心の関係は、どうやら根深いつながりがあるんだろうな。

結局、見た目って重要なんだよなー。いくら心の目で見るといっても、なかなか……。実際の目に映るものの影響を無視することは難しい。修行不足か笑 盲目になるより他ないのか。

素顔も、仮面もない、暗黒の中で、もう一度よくお互いを確かめあってみたい。

素顔……なにが自分の本当の顔なのか、真偽の程が怪しくなってくる。その素顔はホンモノか。自分も、仮面をつけているのかいないのか。そう思うと、世界は仮面だらけに見えてくる。

この奇妙な揺さぶりが良かったなー。仮面への興味沸くー。また、そこからの「覆面男の能面見物」とか、「一人二役の三角関係」とか面白い!安部さん的な奇妙な世界への誘いの楽しさよ。

三角関係面白いと思ったけど、声は変わってないと思うので、絶対奥さんにバレてると思った笑 実際バレてたんだけど。でも声については一切?記述がなかったような気がするが、どうだったかな。

(おまえ=妻)
愛というものは、互いに仮面を剝がしっこすることで、そのためにも、愛する者のために、仮面をかぶる努力をしなければならないのだと。仮面がなければ、それを剥がすたのしみもないわけですからね。お分かりでしょうか、この意味が。
分からないはずはないでしょう。あなただって、最後には、自分が仮面だと思っていたものが、じつは素顔で、素顔だと思っていたものが、じつは仮面だったのかもしれないと、疑っていらっしゃるではありませんか。

ラストは、女の靴音が聞こえてきてたけど、あれは……その後何かはあったんだろうが、なにがあったか。帰ってきたのかどうか……まあ、読者の想像にお任せか。想像によって、感じ方が変わるなー。

あと、クレーの「偽りの顔」の話があったので、てっきり表紙の絵がそうなのかなって思ったけど、どうやら違う? でも表紙の絵もけっこう、この作品にぴったりな感じで好きだなー。(カバー、安部真知て書いてあった)

安部公房の中でも、けっこう好きレベル高めの作品になったなー。それ程読みにくくもなく単純に楽しめたし、メモる量も多かったし、好きだったんだろうなー。以前読んだときはそう思わなかったと思うんだが。

それにしても、一体なにをそれほど、怖がらなければならないというのだろう?べつに、誰から咎められたというわけでもないのに、まるで罪人になったみたいに、あらぬ疚しさにすくみ返ってしまっている。

良きでした!


失踪三部作、1「砂の女」、2「他人の顔」、3「燃え尽きた地図」。

映画(1966年)

★\(^^)/☆


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