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実はもうすでに本当の自分ではないのかも… 小説「燃え尽きた地図」安部公房 ★3,5

「失踪した男の調査を依頼された興信所員は、追跡を進めるうちに、手がかりとなるものを次々と失い、大都会という他人だけの砂漠の中で次第に自分を見失っていく。追う者が、追われる者となり……。」
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1967年「燃えつきた地図安部公房
(解説ドナルド・キーン)

~だいたいの話の流れ~
失踪人(根室洋)を探す依頼、依頼人(失踪人の妻・根室波留)のもとへ、コーヒー店「つばき」(失踪人が持ってたマッチ)、有料駐車場で自称弟(根室波留の弟)に出会う、大燃商事(失踪人がいた会社)の常務と田代君から聞き取り、興信所の主任の話、M議員の住むF町へ行き接触試みる、M燃料店で自称弟にまた出会う、後日弟と河原のマイクロバス屋台の所へ、謎の襲撃から逃れ、根室波留のもとへ、「つばき」で弟死亡の知らせ、駐車場で管理人と話し、失踪人の車の売却相手・富山と話し、別居中の妻と話し、弟の葬式、波留と話し、田代君と話し、嘘?、田代君自殺、ぼく辞表出す、「つばき」内偵に、襲われる、波留のもとへ、記憶喪失。

探偵が、ある失踪人を探す依頼を受けて、調査を始めるのだが、誰の話からも、特に際立った手掛かりを得られず、むしろ、話を聞けば聞くほどに混迷していくかのよう。

なんだかずっと煙に巻かれる感じで話は進んでいく。はっきりとした問題の糸口すら見えてこず、話が進めば進むほど、はっきりしないもやもやした空気間が世界を包んでいく。

読みながら、不思議と、探偵(ぼく)と同じような感覚を共有するかのように、なんとも不安定な世界の不安定な存在となり、奇妙な不安感を感じたり、感じなかったり笑。

「彼」の地図を辿っているつもりで、自分自身の地図を辿り、「彼」の跡を追っているつもりで、自分の跡を追い、ふと、立ち尽くしたまま、凍りつき……いや、寒さのせいばかりではない……酔いのせいだけでもない……疚しさのせいばかりでもない……困惑が不安に変わり、不安が恐れに変わり……~。

最後のあたりは、幻覚・幻想のような世界観になっていて戸惑うけど、結局、探偵は暴行受けた後だから、それで記憶喪失になって、街をふらついてる感じだったのかな。

でもどうやら、探偵が自分の家だと思ってる場所が、探偵の家ではなく、失踪人の家の場所になっているようで、これをどう捉えればいいのか、困惑させられる。

探偵が失踪人と重なってしまう。探す人が探される人に。「追う者が、追われる者となり……。」探偵の世界と、失踪人の世界を隔てる壁が、不確かになり、一体化してしまったかのよう。

よくわからないけど、何かを追い求め過ぎると、自分を見失ってしまうかもしれない。その見失った自分はどこへ行ったのか?自分を失った殻の中には何が入るのか?実は、もうすでに本当の自分ではないのかもしれない…。

あとは、ちょっとした登場人物がけっこうクセ強めのキャラが多かった印象。ゴキブリ食うやつとか。中でも、田代君なんかは非常にヤバめ。まともかと思いきや、嘘ついて、自殺して。まあ誰にでも悩みはあるんだろうね。

「失踪」三部作↓
「砂の女」(1962)、「他人の顔」(1964)、「燃え尽きた地図」(1967)
今、「他人の顔」持ってないな~。
読みたいけどー…買うかー。

楽しかったです!(^_-)-☆





★\(^^)/☆


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