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発声について

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#ボイトレ

影響を及ぼし合う身体の仕組み

影響を及ぼし合う身体の仕組み

昨日の話ですが、朝オンラインで「足裏リセット体操」なるレッスンを受講しました。

最初に立ったり歩いたり屈伸したりして、身体の様々な部位の感覚を確認し、その後20分強の足裏マッサージや、足の指のストレッチ、足の骨の矯正を行い、終了後に、最初と同様立ったり歩いたり屈伸したりして感覚の違いを確認して終了です。

たったこれだけの事なのに、想像以上に明らかな変化があったことに驚いています。

まず私の場

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高度な技巧を要する曲について、歌手の視点から

高度な技巧を要する曲について、歌手の視点から

先日、府中の森芸術劇場ウィーンホールという素晴らしい音響を有する音楽ホールでモーツァルトのモテット<Exsultate, Jubilate 踊れ、喜べ、幸いなる魂よ>をオーケストラ伴奏で歌わせていただく機会がありました。

この曲はコロラトゥーラと呼ばれる、速いパッセージに細かい音が沢山並ぶ高度な技巧を要する部分が多くを占めています。

全3楽章を演奏会で歌ったのはこれで2度目。前回は弦楽合奏版で

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発音がこもる

発音がこもる

昨年は大晦日も、今年の元旦もレッスンをしていました。もちろん大勢は来なかったのでゆったりと。

そのうちのお一人が、以前から私も含め何人かの先生方に"発音がこもる"、"声がこもる"と言われがちな方で、その日も様々なアプローチをしている間に「ようやく気付いた」とおっしゃり「こもらないようにするために、あまり口の奥を開けずに浅く歌っていた」ことを話してくださいました。

口の奥や喉を開けるといっても千

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舌のはなし その3

舌のはなし その3

舌の話が多くなります。

以前「低位舌」の話題を書きました。私自身、ここ数か月で自分の変化に驚いているところです。自分は低位舌ではないと思っていたのが実は完全に正常ではなく低位舌の傾向があったかもしれないと気付いたのです。

3か月前から、一日30分はヨガ、ピラティス、エゴスキュー等の運動を少しハードめに取り入れるようにしました。2か月目あたりから、夜寝ている時(目覚めた瞬間)や日常でふとした瞬間

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指導者が何でもしてくれるわけではない

指導者が何でもしてくれるわけではない

声楽のレッスンでは目に見えない身体の内部の話も沢山していかなくてはなりません。なるべく伝わるように様々な表現を使いながら説明しています。あるべき声、その方向性で声を出せたとき「その声!」「それが近い!」と指導者に言われたら、自分の身体がどのような状態にあったか、鋭く落ち着いて感じ、それを自分の感覚に正しく置き換え、指導者がいなくても自分自身でその状態にどうやったらもっていけるのか正しく判断・実践し

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あと一歩の高音

あと一歩の高音

今日は、ギリギリ出しにくい高音を歌うときのワンポイントアドバイスです。お腹や背筋、また口の中の空間、頭部の支えなど、様々に気を付けて高音にチャレンジしても、あと一歩で完全に開放された高音が出そうなのに上手くいかない方、肩甲骨まわりをゆるめてみてください。高音を出す一瞬前にそれをしてから出してみましょう。

アリアでハイC周辺、あるいはそれ以上の音域で悩んでいる方にもおすすめです。不思議と上手くいっ

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全ては音程に現れる

全ては音程に現れる

レッスンでは音程も慎重に聴くようにしています。単に音程が合っているかという目的ではもちろんありません。

発声に難がある箇所は音程もおかしくなります。支えが抜けていると音程は上に不安定になり、身体のおかしなところに力が入っていると音程が上がりきらずつまることが多いです(様々な理由で逆になるパターンも)。音程ばかり気にしている歌手の音程は、全くはまった感じがしません。リズムが不自然だと音程も不自然に

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ザ・横隔膜

ザ・横隔膜

私は横隔膜の使い方を初学者の頃に習うチャンスがありませんでした。「お腹を使う」という表現は耳にしましたが、どのように使うかの説明を聞けるチャンスはなく、ほとんど理解していませんでした。勉強を続け、活動を続け、様々な方と出逢い、経験を重ねて、横隔膜がどのように働くことで歌を助けるのか、メカニズムがようやく分かり始めたのはほんの数年前です。今も歌の本質を掘り当てる作業を続けていますので、横隔膜について

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舌のはなし その2

舌のはなし その2

舌の話題が多くなります。舌がどれくらい重要か頻繁に痛感しているからです。

舌は繊細で、あるべき方向でない方向で定着させてしまうと恐ろしい結果になるので、うかつに手を出せない部分で本当に難しいです。しかしあと一歩の歌手が決め手は舌だった、ということが大いにあり得ると思っています。

舌でどんなことが出来るのかというと

1.喉が開く(咽頭腔の適切な状態の確保)

2.発音が適切に明瞭になる

3.

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白黒はっきり言えないこと

白黒はっきり言えないこと

歌や発声、音楽のことがよく分かっている指導者ほど、当然のこと以外に関しては白黒つけたような言い方をしないのだと時々感じます。

私も長い間そうでしたが、何か「これさえ知れば楽に歌える」といったメソッドを追い求めていました。楽をしたいと思っていなくても無我夢中で上手くなりたいと思えば、そんな方法が少しでもあるなら知りたいと思うのは自然なことでしょう。日本語だけでなく外国語で書かれたものも含め、沢山の

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発声器官の多くが不随意筋であるということ

発声器官の多くが不随意筋であるということ

声楽を始められたばかりの生徒ですが、大変熱心な方がいます。オンラインレッスンで先日こんな質問をされました。

「首に力を入れずに高音域を出すということがよく分かりません。声帯を細く伸ばしていくには輪状甲状筋を収縮させ、甲状軟骨を傾斜させる必要があると書いてありました。首に力を入れずにどうやってこの筋肉を収縮させるのでしょう?何かしらの刺激なしには収縮しないと思うのですが。」

気持ちは分かります。

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感覚的な言葉の大切さ

感覚的な言葉の大切さ

2つ前の「のど(喉)という曖昧な言葉」 という記事を読んだ方には矛盾を感じさせるタイトルですね。そんな方も最後まで読んでみてください。

レッスンでは良い声を出すために「フワッと」とか「まるで~のように」といった、非常に感覚的な言葉が使われたりします。他の楽器と違い、声は音を作る場所が身体の内部にあることから、指導者がその場所を生徒に見せてあげることができません。しかも発声に関係する器官のほとんど

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のど(喉)という曖昧な言葉

のど(喉)という曖昧な言葉

皆さんは「のど(喉)」という言葉をどんな時に使いますか?

レッスンで良く使われる表現・・・「喉が絞まる」「喉を開ける」

この場合の喉とはいったいどこを指すのでしょうか?

「のど(喉)」と一口に言っても、解剖学的には口腔、上咽頭、中咽頭、下咽頭、喉頭(声帯を含む)に分かれます。喉の天井部分、鼻の奥も喉であるし、食道と気管に分かれた後も喉と呼ばれてしまう、あまりに広範囲を指す言葉なのです。

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