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ザ・横隔膜

私は横隔膜の使い方を初学者の頃に習うチャンスがありませんでした。「お腹を使う」という表現は耳にしましたが、どのように使うかの説明を聞けるチャンスはなく、ほとんど理解していませんでした。勉強を続け、活動を続け、様々な方と出逢い、経験を重ねて、横隔膜がどのように働くことで歌を助けるのか、メカニズムがようやく分かり始めたのはほんの数年前です。今も歌の本質を掘り当てる作業を続けていますので、横隔膜についても日々新しい発見があり、実践に取り入れています。

よく「声と身体が繋がる」だとか「身体と繋がった声」などと言われますが、私は「横隔膜を介しての発声である」こととほぼ同義語だと思っています。ろっ骨を開き、横隔膜をしなやかに広げ、声の支えのために横隔膜はどんな時も使われなければなりません。

横隔膜を介さない声は響きませんし、表現の幅も無いに等しい状態です。横隔膜を使わないと子音が上手く発音できませんし、子音を聞き取ってもらえません(子音が強調されるドイツ語はもちろんのことイタリア語の適度なバランスで入れる子音でも適切に聞こえることは必要)。横隔膜でなく喉を使ったリズムは、本来の姿ではないので不自然で雑な印象を与えます。下っ腹は入れるように使いますが、ろっ骨の最下位あたりの腹回りは外に向かって広げます。後ろの部分は多裂筋も関係してきますので、しっかり張り出します、ただし硬直は禁物。細かい音になればまた違った繊細なやり方で横隔膜を扱うことになります。

横隔膜の使い方や全身バランスが実感できるようになるまでには、適切に真面目に取り組んでも半年はかかり、身体が健康である限り、そこから更なる高みへと一生をかけて上昇し続けていくものだと思っています。

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