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日本の源流を訪ねて|第1話 心揺さぶる唄

日本には、ある特定の感情や事柄を表現する言葉が数多く存在します。

例えば、「数が多い」ことを表す言葉も、
「たくさん」「いっぱい」「かなり」「いくつも」「あまた」など、調べたらきっと数えきれない程の種類が存在します。

そんな繊細な日本語だからこそ、常に自分の感覚を最も的確に表す言葉が見つかるでしょう。

それだけ想いや、言葉の持つ力「言霊(ことだま)」を大事にしてきたからこそ、あまたの美しい言葉を生み出すことが出来たのだと思います。

そんな素晴らしい言葉を生み出した先人たちの想いに感謝をしながら、出来るだけ丁寧に、「愛」を持って日本語を使うということが、現代に生きる日本人の一つの「使命」ではないかと僕は考えます。

そう、僕はとにかく日本語が好きです。

こんなに美しい日本語を「母国語」として使えるなんて、なんて幸せなんだろうと常々思っています。それは本当に日本人として生まれてきて良かったと、心から思うことが出来る理由の一つです。

今から15年程前、上京して間もない頃に、妻が僕にこう言いました。

「今まで習い事をして来なかったんだったら、せっかくこっち(東京)に来たんだし、何かやってみたら?」

そうか、確かに「新生活」を機に何かを始めてみるのもいいかもしれない。

そこで僕は生まれて始めて習い事に通ってみることにしました。

そうして決めた習い事はズバリ
「日本語を勉強すること」でした。

「日本人なのに日本語を勉強するってどういうこと?」

と、思われた方もいるかもしれませんが、とにかく僕は昔から「美しい日本語」に触れている時間が好きだったのです。

当時、それが本当のことかどうかは分かりませんでしたが、

「どうやら奄美に古くから伝わる言葉が最古の日本語らしい」

という噂を耳にして、それは是非とも勉強してみたいと思ったのです。

そういう事が勉強出来る場所はあるのかと早速調べてみると、何と家からそれほど遠くない場所で、まさにそれが学べる場所がありました。

それが、奄美の歌い手「朝崎郁恵先生」が主催する「十五夜会」でした。




「十五夜会」は、奄美に伝わる「八月踊り」と「シマ唄(八月唄)」を伝えていくために発足された会です。

唄の歌詞の発音や意味などの勉強をしながら、ティディン(太鼓)に合わせて「八月踊り」と「シマ唄(八月唄)」の練習を行います。

会は基本的に「奄美出身・都内在住」の方を中心に構成されており、メンバー内の有志が先生を務め、朝崎先生は特別なイベントの際にいらっしゃいました。

かくして、南国「奄美」出身者の輪の中に現れた北国「秋田」の謎の男。

しかし、

「真逆の地域で生まれ育った方が、私たちの地域の文化を学びに来てくれて嬉しい!」

と、朝崎先生はとても喜んで受け入れて下さいました。


こうして僕の「日本を学ぶ旅」が始まったのです。


ちなみに「八月踊り」とは、鹿児島県と沖縄県で旧暦の八月に行われる伝統的な踊りです。

「五穀豊穣」を祈って神々に感謝を捧げると共に、集落のみんなで、お互いを祝福し合う為に行われました。

日程や様式は集落によって異なりますが、数日をかけて、時には「夜通し」で集落内の「全戸」を順に回りながら行われたそうです。しかし、現在は簡略化されて、集落内の広場での踊りとする事が多くなっている様です。

集落の全員が一人一人の家を訪れて「福を呼び込む踊り」を踊る。

そこには、「何か困ったことがあったら、集落のみんなが助けますよ」というメッセージが込められている。

自分がそんな風にしてもらったら、どんなに心強くて有難いでしょうか。
そこには、現代社会で生きる僕たちが忘れてしまった「美しい日本人の心」が在る気がしてなりません。


そしてこちらが実際に八月踊りを踊る「十五夜会」のパフォーマンス動画になります。


十五夜会 その一 2009年9月13日 @ 代官山・晴れたら空に豆まいて

十五夜会 その二 2009年9月13日 @ 代官山・晴れたら空に豆まいて

なんだか、日本の原風景を見る様ではありませんか?

この様な伝統文化が保存され、現代に受け継がれていることは、本当に素晴らしいことだと思います。温かくて、美しくて、人間らしい。僕が大好きな世界です。

老若男女が入り混じって、一緒に仲良く歌って踊る。もちろんみんなの性格はバラバラで、気の合う人ばかりではないかもしれない。しかしこの時ばかりは何もかも忘れて、その「ひととき」を全力で楽しむ。そうやって地域の「全員の心の一致」を果たしていく。誰一人仲間外れにせず、置いてけぼりにせず、みんなで笑う。それがみんなの「明日を生きる大きな活力」になる。

「祭り」や「盆踊り」は、そんな魔法の様なことが出来る「素晴らしいシステム」であり、地域の、ひいては日本文化の「最重要装置」だと僕は思います。この美しい日本の伝統文化を、いつの時代までも保存し、繋げていきたいものです。

そんな美しい日本の文化「盆踊り」の「伝道師」が僕が住む湘南の地にもいます。

彼女ら(彼ら)のことを語り出すと話が止まらなくなりそうなので、今回は簡単に名前だけご紹介させて頂きます。

それが、「イマジン盆踊り部」の皆さんです。

イマジン盆踊り部(写真はイマジン盆踊り部公式facebookページより)
Instagram → https://www.instagram.com/imagine_bonbu/



「イマジン盆踊り部」は2012年に鎌倉で結成された会で、その活動を7年間追って制作されたドキュメンタリー映画「発酵する民」も、本当に素晴らしい内容でした。「盆踊り」を追っていたはずがいつの間にか「宇宙」に辿り着いている・・・その様な不思議な魅力いっぱいの映画です。

気になった方は是非「イマジン盆踊り部」に触れて、実際に盆踊りを踊りに行ってみて下さいね!きっとワクワク笑顔になってしまう世界が広がっていると思います。


さて、話は戻りますが、結局「十五夜会」での僕の活動は、家の引越しやその他諸々の事情があって長く続けることは出来ませんでした。しかし、ここで得た学びが、さらに「日本」を愛する糧となったことは言うまでもありません。


改めまして、温かく受け入れて下さった十五夜会のみなさんと朝崎郁恵先生に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。



朝崎郁恵 / おぼくり・ええうみ


こちらは「十五夜会」で学ばせて頂いた唄の中でも、特に僕が思い入れのある「おぼくり・ええうみ」という唄です。

後にゲームにもなり、大ヒットした日本のアニメ「サムライチャンプルー」に挿入歌として使用されたことで、世界的にも知られる一曲となりました。

歌詞の意味を読んで頂けると分かるのですが、当時生きた人の暮らしぶりが歌われており、それが独特な「音」と「言霊」によって、深く心に響いて来ます。

僕はこの歌詞の意味を知った時に涙が止まらなくなりました。そして自分の在り方を省みるきっかけにもなりました。

是非唄を聴いて頂き、この時代を生きた人たちの心に想いを馳せてみて下さい。

人間が本当に大切にしなければならない「美しさ」とは何なのか、「豊かさ」とは何なのか。そこには、現代人が忘れてしまっている「美しさ」が在る様に思います。

いつの時代までも残したい、心揺さぶる日本の唄です。



つづく


UA with 朝崎郁恵 / 太陽ぬ落てぃまぐれ節


こちらのコラボレーションも素敵です。
是非聴いてみてくださいね😊


📖奄美大島(Wikipediaより)
奄美大島を含む奄美群島は、大東諸島を除く沖縄県と共に琉球文化圏を構成する。奄美語は琉球語の一部であり、基本的語彙や表現などの共通点も多い。日本語話者との意思疎通が困難なため、これらは国際的には独立した言語とみなされることが多いが、同系の語彙、祖語と標準語を持つ事などから、日本語の方言とする研究者もいる。


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