【連載詩集】No.17 光と影
静かな、夏の日の午後。
真っ暗な部屋の中で、
しずかに目を閉じる。
日々、パソコンに向かう、わたし。
過去の様々な記憶が、
目を閉じるわたしの脳裏を、
走馬灯のように駆けていく。
「——わたしすら、ほんとうのわたしを知らない」
と、静かに思う。
家族も、恋人も、友達も、
誰ひとり、ほんとうのわたしを知らない。
だって、わたしだって、
わたし自身のことが、
よくわからないのだ。
だから、こうして、
日々、パソコンに向かっている。
光に包まれ、輝いていたころ。
影に呑まれ、暗く沈んでいたころ。
わたしは、わたしなりに、
必死にその瞬間を生きた。
走って、走って、とにかく走って、
倒れて、起きて、また倒れて、
生きて、生きて、なんとか生きて——
わたしは目を開ける。
暗い部屋には、
クーラーの音だけが、
しずかに響いている。
わたしは今、暗い部屋にいる。
しかし、わたしはもう、
影の奴隷ではない。
ひとすじの光を捉えるために、
影すらも味方につけてみせる。
わたしは暗い部屋の隅を睨む。
そこには、真っ暗な影が佇んでいる。
そこにいる、目に見えない何か。
それすらも、わたしは描き切る。
——光を描くために、影を描くのだ。
それが、いまのわたしだ。
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