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【連載詩集】No.14 思索の先にあるもの。

 思索の世界に入ると、

 深い森に飲み込まれ、

 ずいぶん長い間、

 ひとり、とぼとぼと、

 歩く(書く)ことになる。


 過去に置き去りにしてきた感情が、

 沼のように足元に広がり、

 何度も足を掬われそうになりながら、

 何とか、一歩一歩、歩く(書く)。


 すると、

 ある時、ふと頭上が開け、

 まばゆいばかりの光が差し込み、

 わたしの、これまでの歩みを、

 ほんの一瞬だけ、

 しかし確実に、

 誉れをもって照らし出す。


 嗚呼(ああ)

 わたしは

 このために

 ここまで

 歩いて(書いて)きたのだ。


 震えるほどの悦びと、

 歓喜の歌を持って、

 わたしは、

 わたしの歩みを、

 そして、これまでの、

 果てなき人生を讃える。


 そのようにして、

 天から恵まれた、

 瞬く誉れに感謝し、

 疲労しきった身体を横たえ、

 充実した想いに包まれ、

 泥のように眠る。




 そして翌日、

 ふと目がさめると、

 自分がまだ、

 暗い思索の森の、

 奥深くにいることに、

 はたと気づく。




 頭上を見上げても、

 そこには暗い森の、

 重い樹々が枝を広げている。



 光など、

 どこにもない。




 あの光——




 全能の神が、

 わたしに与えたかのように見えた、

 あの光は、

 いったい何だったのか。


 昨夜、確かに感じた、

 あの光の閃きはどこにもなく、

 世界は重く、

 そして暗く、

 道無き道は、

 どこまでも続いている。




 ——仕方がないな。




 わたしはまた、

 とぼとぼと、

 ひとり静かに、

 歩く(書く)。


 しかし、そこには、

 ほんの少しの変化がある。


 昨日よりは、

 少しだけ身体が軽い。


 昨日よりは、

 ほんの少しだけ、

 どこかに近づいている気がする。






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