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むこねーさん
2024年1月15日 22:15
Get back 35years 3月になったのでカレンダーを捲ると、すでに予定が書き込まれていた。よく見ると、破いた2月にも週1〜2回、予定が入っている。そういえば、母はここ3年くらいでずいぶん外出するようになった。今もいそいそと、出かける支度をしている母の元へ行くと、 「今日ジャズ聞きにいってくるから。」 と首元に小花柄のストールを巻きながら、母は言う。 「ジャズって、いつも
2023年6月5日 21:14
不適切「飲むのすごい久しぶりじゃない?」「お互い環境変わったからなぁ。ま、そんなもんだろ。」差し出されたグラスにグラスを合わせ、カチンと鳴らす。同期入社の清野(きよの)と2人での飲み会は何年かぶりだった。清野は3年前に、私は去年結婚をし、清野の言う「環境の変化」から、2人でという場面はすっかりなくなっていた。入社1年目の頃でこそ私は清野に強く惹かれていて、お酒の勢いで男女の関係にもなっ
2023年6月21日 21:13
あいつの隣仕事帰り、独り寂しく牛丼チェーンで腹を満たしているところに連絡を寄越したのは、幼馴染の陽介だ。LINEによると、知らない間に彼女が出来たらしい。その彼女を連れて久しぶりに家で飲まないかという誘いが来ていた。陽介はクラスの中心人物、とまではいかないが明るくて人当たりの良い奴で、いつもヘラヘラとその場を誤魔化すクセがある俺にとって眩しい存在だった。社会人になった今でも仲が良いのはこいつく
2023年7月26日 20:49
エイミーこの町では宇宙工学が盛んで、多くの人がそれを学び技術を身に着け生計を立てていた。僕はその中でも協調性のないはみ出し者、一人山奥にラボを設け、静かにロボットや宇宙飛行船を開発している。そんなある日、突如大きな物音と地鳴りが起きる。恐るおそるラボを出ると、目の前にさほど大きくない宇宙船が地面の上に横たわっていた。この辺では見かけない形をしているその宇宙船を観察していると、後ろから声がした。
2023年8月30日 18:58
No.nまたしばらく連絡が取れなくなった。何度もしつこく電話することも出来ず、ただ未読のまま放ったらかしにされた自分のメッセージを見返す。最後にあったのは先々週の土曜日、会うときは決まって彼はひどく酔っていて、お酒と煙草と知らない香水を混ぜた匂いを纏わせている。きっと私の部屋は終電後の宿泊先としてちょうどいいんだろう。私のことどう思ってるの?なんて聞けず、ただちょっとでも彼の心の中を占める割合
2023年8月31日 20:40
Under the moon私にはどうやら恋愛は向いていないらしい。2年越しの大失恋。好きだった部活の先輩に憧れた勢いのままサッカー部のマネージャーになり、なんとか視界に入ろうと頑張ってきた。大きな大会が終わり、先輩も引退というこのタイミングで想いを告げたが見事玉砕。家に帰る気分にもなれず、誰もいない教室の窓側で席に座り、ぼんやりと暗くなった外を眺める。そういえば今日は満月だったっけ。空には雲
2023年9月28日 20:48
不適切 sideM「今日夕飯いらないから。」ネクタイを締めながら夫が言う。目を合わさないこういうときは、大体後ろめたいことがあるときだ。「飲み会?」「そう。久しぶりに同僚とね。遅くなるかも知れないから先寝てて。」結婚して3年。至って順調、なんの問題もない私たちだけど、全ては明かしあっていない。夫には夫の、私には私の秘密がある。「飲んで遅くなる」は、私にとっては朗報。夫がマンショ
2024年2月2日 12:10
青色のおまじない「ねぇ、リボンこれにしようよ!青色ってちょっとセンス良くない?」「おそろいにするの?せっかく交換するのに?」「このリボンがいい!ね?だめ?」このときの私は半ば強引だったかも知れません。それでも、どうしても彼女に青色のリボンを選ばせたかったのです。彼女の名前は佳乃(よしの)と言います。高校に入学し、私の一つ前の席に座っていた女の子です。私の目に佳乃は、外見も中身も
2024年2月16日 22:05
境界心中彼はごく一般的な常識を持った真人間だった。それと同時にどうしようもない屑でもあった。「皐月くん、もう私頑張れないよ…。今日まじで怖かったんだから…。」「ごめんな、俺が遅すぎた。今度は絶対まりんのこと助けに行くから。だから一緒に頑張ろう?」何度も何度も同じように宥められ、彼は優しく私の頭を撫でた。私はお金のために汚い親父どもの「案件」に出向かう頻度が増えたが、心を保つための薬
2024年2月18日 00:15
かみともにいまして母と逃げるように越してきたこの町には、真新しい教会があった。近所の人は訝しがって近づかないほうがいいと新参者の私たちに告げていたが、ある時郵便受けに入っていた子ども会の知らせに、私は小学生ながら興味を持った。母はそこに行くことを許してはくれなくて、でもどうしても行ってみたくて、母が仕事で留守にしている隙に教会へ向かった。まだ木の匂いがするその教会にいたのは、背の大きな神父さん