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世界は僕らの名前を知らない

その映画とはじめて出会ったのはいつのことだったろう。

京都シネマの壁に貼られたポスターを見た時?

桃のシーンの動画がTwitterで流れてきた時?

当時の私は「ありきたりな青春映画かな」と感じて観るに至らなかった。

それから数年が経ち、いざ観てみたらどうだろう。

ぐずぐずになりながら2回観て、最後の20分をもう一度観て、さらに2回BGMとして流すほど、心に馴染んだ。

ありきたりってなんだ。

まともってなんだ。

ふつうってなんだ。

最近よく、そんなことを思う。

僕らはみんな微妙に違う遺伝子を持って、多様な環境に生まれ、十人十色の視線で体験する。

そんなバラバラな人々の言葉が、目に見える場所で無数に飛び交う今だ。

画面をスクロールすれば、ポジティブな言葉もネガティブな言葉も溢れて、いちいち真面に取り合っていられない。

刺激の多さに耐えかねて、ともすれば心の感度が鈍くなりそうになる。

私の〈普通〉と、あなたの〈普通〉は、違う。

自他を尊重するために、そんな割り切りが必要不可欠で、ただただ目の前を通り過ぎていく情報が大多数。

それでも、在り来りな言葉や仕草に心底感動できるシーンが誰の人生にも必ずある。

そういった瞬間の、内側から熱くなる感覚を呼び起こすような作品だった。

『君の名前で僕を呼んで』

この世に生まれ落ちた時、自分という存在と与えられた名前は不可分ではない。

ただ一つの心と体を持って生まれたこの自分と、偶然結びついた名前が、愛する人と呼び合ううちに、特別なものになる。

至上の一体感を捉えた映画。

スマホの電源を落として、Amazonの配送予定もずらして、30年前の北イタリアの避暑地に意識を溶かしてみてほしい。

130分間のどこかで、忘れていた大切な感覚の「ただいま」が聞けるかもしれない。

このただ一度の人生で、出会えてよかったと思えた誰かや何かと、できるだけいっしょに過ごそう。

だから明日も生きていよう。

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