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宮沢賢治

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独自の世界観を構築し、実践の中で展開した宮沢賢治から、世界の見方や生き方のヒントを探ります。
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新たなパラダイムを構想するためのブックリスト「新しい文化を導く北極星」

新たなパラダイムを構想するためのブックリスト「新しい文化を導く北極星」

工業社会から知識社会へ、成長社会から成熟社会へ。時代が変化する中、どんな生き方、働き方をすればいいのか?

私は、それを考える鍵は作家・思想家、宮沢賢治が握っていると考え、探究してきました。2023年11月、代官山 蔦屋書店で探究の成果をブックリストとして発表しました。この記事では、そのリストに加筆したものを公開します。

これからどこに向かえばよいのか、その航路を照らすため、本と本を星座のように

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宮沢賢治が鉱物に映す宇宙

宮沢賢治が鉱物に映す宇宙

代官山 蔦屋書店の自然科学の小部屋では、2023年3月27日まで、宮沢賢治と鉱物の関係にフォーカスするフェア「鉱物に映る宇宙」を開催しています。セレクトは広島の鉱物標本店 PEANTUS MINERALSさんです。

今回のフェアを企画するにあたり、コンシェルジュとしてどんなことを考えていたのか、書いていきます。

宮沢賢治は今年没後90周年を迎えます。賢治の作品をあらためて読み返していると、鉱物

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生活の芸術家になるために ASEEDONCLÖUDの家と宮沢賢治の農民芸術論

生活の芸術家になるために ASEEDONCLÖUDの家と宮沢賢治の農民芸術論

先月、横浜市青葉区のたまプラーザで家を建てた。

家といっても、本物の家ではなく、小さな手作りの模型だ。朝からワークショップに参加して、久しぶりに糊や絵具を使って作業した。

ASEEDONCLÖUDの物語私は、ASEEDONCLÖUD(アシードンクラウド)というブランドの服をよく着ている。

毎年、春と秋になると、「架空の職業」をモチーフにした物語性の強いコレクションが発表される。例えば、旅をし

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道玄坂 イーハトーヴへと続く坂

道玄坂 イーハトーヴへと続く坂

「保阪嘉内、道玄坂に泊まってたんだね」

ある夜、リビングで本を読むパートナーがつぶやいた。手元には、宮沢賢治の書簡集がある。

先月、宮沢賢治の足跡をたどるため岩手県の花巻と盛岡を旅してから、あらためて賢治の生活に興味を持ったようだ。私は、締め切りの近い書評を書くために読み返していた哲学書から目を離し、思わず聞き返した。

「道玄坂?」

なぜ驚いたかというと、ちょうどその日、たった数時間前に二

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光の交錯の場 宮沢賢治の「イギリス海岸」

光の交錯の場 宮沢賢治の「イギリス海岸」

岩手県花巻市に「イギリス海岸」と呼ばれる川岸がある。宮沢賢治ゆかりの場所だ。

この場所について『季刊 アンソロジスト 2022年夏季号』でエッセイを書いたが、そのときには訪れたことがなく、賢治のエッセイや詩歌など、文章を通して触れたものに基づいていた。

先日念願叶って、この場所を訪れることができた。

イギリス海岸は、岩手県花巻市にある北上川流域の泥岩層が露出している部分のことで、花巻駅の東方

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言葉の音、音の言葉 宮沢賢治のオノマトペ

言葉の音、音の言葉 宮沢賢治のオノマトペ

「イーハトーヴ」というプロジェクト思索の秋。私は宮沢賢治に夢中になっている。童話、詩、散文、書簡。賢治の残した文章にはたくさんの形があり、鉱物、天体、植物、動物、修羅や菩薩など作品の中に登場するモチーフは、私たちそれぞれの関心とどこか結びつく。そんな中で、私自身が彼に惹かれるポイントを振り返ってみた。するとやっぱり、一番は「イーハトーヴ」という場所を生み出したことだと思う。

賢治は、その生涯のほ

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