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単発集

54
シリーズじゃないやつ。主にエッセイ、たまに創作が混ざります。
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どうか、奪わないで

どうか、奪わないで

 ひさしぶりに、文字と向かう。ここ1か月ほど、文字を読み書きすることが「出来なく」なっていた。これを書いている今もまだ、原因不明の涙をぬぐい、動悸を感じながら、文字を打っては消してを繰り返している。自分の書いた文章でさえ、読み返しても意味が理解できない。伝えたい内容が書かれているのか、筋は通っているのか、今の私には判別がつかない。

こんな状態でもずいぶんとマシになったほうで、もう少し前には、パソ

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私って、アセクシャルなの?

私って、アセクシャルなの?

「もときって、アセクシャルなの?」

 あるとき友人との会話の流れで、こう聞かれて、私はひどく答えに困った。
決して、「アセクシャル」の意味が分からなかったから、ではない。ただ念のため、以下に言葉の意味を記しておこう。

 ついでに言えばこのとき、セクシャルについて問われたことに対する不快感もなかった。それはあくまでも友人と私の関係性があるからこそで、時と場合によっては、驚いたり不快に思うこともあ

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「文字」という表現を選ぶ理由と、こだわりについて

「文字」という表現を選ぶ理由と、こだわりについて

 先日、友人に誘ってもらって、雑誌『IWAKAN Magazine』の個展に遊びに行った。この雑誌については、次を読んでほしい。

 私自身、この雑誌の存在を以前から知っていたわけではない。そもそもの誘ってくれた友人が、前日にカフェで偶然知り合って意気投合したばかりという……まぁ要は、個人的にめちゃくちゃ短期間に情報を一気に詰め込まれた個展だったわけだ。

 今回の個展は、最新号である『IWAKA

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「話せない」の正体?

「話せない」の正体?

 自分で言うのもなんだが、私は「協調性が高い」「コミュ力おばけ」だ。とくに高校2年ごろから周りにそう言われ始めて、会社の入社試験で受けた「適正診断」で突出していると数値でも明らかになった。
そして社会人になって以降も、周囲からのその評価が変わったことはない。

 だったら私は、さぞ友だちも多くて、たくさんのコミュニティに属しているんだろう……と、多くの人は考えている、と思う。

 ところがどっこい

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なぜか職場で、話せない

なぜか職場で、話せない

 先週末の4月21日をもって、心身の回復のために休養期間をもらうことになった。とりあえず1ヶ月程度を目処にということだが、早くも1週間近くが過ぎている。

 今さらだが、職場自体が休暇期間ということもあって、自分だけが仕事をしていないという罪悪感や焦りはない。今のところは。

それに、仕事に向き合おうとすることが若干億劫だという気持ちもある。身体も休み休みでなければ動かせないし、今の私には休養時間

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心が壊れて、「カムイ」が遊びに来た

心が壊れて、「カムイ」が遊びに来た

 メンタルが壊れた。高層ビルが巨大怪獣になぎ倒されるみたいに、派手な壊れかたをした。自覚するかぎり、人生で初めての経験だ。

 涙があとからあとから溢れてきて、そのうちどうして泣きはじめたのか分からなくなっても、止まる気配すらない。泣き慣れていないから、過呼吸になるんじゃないかというぐらい何度も何度も大きくしゃくり上げて、安物の手触りの良くないティッシュで目や鼻を擦りまくる(おかげで目や鼻周りがす

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選ぶことの楽しさと、選びかたを知った日

選ぶことの楽しさと、選びかたを知った日

 先日、同じWEB記者のかたがたと3人で、仕事終わりに池袋へ赴いた。私以外の2人が一度訪れたことがあるというパスタ屋さんで、夕飯がてらおしゃべりしようと。

 時刻は午後6時過ぎ。ちょうど夕飯時の店内は埋まっていて、「しばらくお待ちいただきますが…」と、店員さんが申し訳なさそうに告げる。ただまぁ、3人ともそこまでお腹が空いているというわけでもないし、時間にも余裕はあったので、店の外で並ぶことになっ

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芸能人に会いたい、ってどんな感覚なんだ(*編集、追記有)

芸能人に会いたい、ってどんな感覚なんだ(*編集、追記有)

「誰か会いたい人とかいないの?芸能人とか」

 東京に来てから、たびたびこの質問をされる。まぁ一応、そういうことが出来ないこともない職種だからだ。

 そんで聞かれた私は、毎回返答に困る。いやぁ本当に、いないのだ。会いたいと思うような人が。

 というかそもそも、芸能人に会いたい、ってどんな感覚なんだ。相手はただ人前に出ることが仕事という人間なだけで、他の社会人と一体何が違うんだ。顔の造形、歌唱力

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2022年が終わる

2022年が終わる

 去年末にもこんなタイトルで書いた。あっという間に一年が終わる。年々、時の流れが早く感じる気がする、というのは、きっと誰しもが思っていること。

 年始早々、神戸の家を引き払ってひとつ年上の姉の家に転がり込んだ。印刷会社で制作ADを続けるつもりで、ちょっとお金を貯めて大阪に引っ越してやろうと。

 ところがどっこい、すぐに心が折れた(というか昨年末からすでに折れかけていた)。そのとき担当していた制

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引っ越し備忘録

引っ越し備忘録

 約3年ぶりに、遠距離の引っ越しをした。ので、うまくいったこと、やらかしたことを今後のために残しておく。

引っ越し概要

関西→東京(23区内)
部屋探し時期:10月下旬〜11月上旬
入居日:12月16日
荷物の搬出→搬入:12月15日→12月18日
鍵の受け渡し:管理会社(東京)へ訪問
内見や事前の訪問:ナシ、完全リモート

備考1)
入居〜搬入まで荷物がない状態で過ごしたよ!搬入直前に入居に

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人生26年目「もっと歳を重ねたい」

人生26年目「もっと歳を重ねたい」

 2022年12月10日をもって、私は26歳になる。現代において「無事に歳を重ねることができて良かったね」と祝う人は少ないだろうし、私もそこまで感慨深く受け取っているわけではない。

 そもそも私は、生まれた日が年の終わりに近いこともあって、自身の年齢は数え年で認識している。つまり年が明けて2023年になった瞬間から、私は年齢を聞かれると「今年で27になる歳です」と言うのだ。
この2022年中もず

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ウチに来るのは「サンタ」じゃない

ウチに来るのは「サンタ」じゃない

 15年以上も前の幼少期、ほとんどの子どもがそうであったように、私もサンタクロースという存在を信じていた。

 毎年、クリスマスイブの夜になると母親は「早く寝ないとサンタさんが来ないよ」と言う。その言葉はあくまでも儀礼的なもので、年が明けたら「あけましておめでとう」と言うのと同じようなものだと、幼心に思っていた。なぜなら、言われずとも姉と私はいつも、夜10時になる頃には寝る体制を整えているのが常だ

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将来について悩み悩んだ末の決着のつけかた

将来について悩み悩んだ末の決着のつけかた

  2022年8月上旬、東京で文章を書くことを仕事としている知人から、突然こんな風に声をかけてもらった。

「実は今、うちの職場で原稿を書く人が足りていなくて…もときさん、もし良ければ…」

 知人とは私の大学時代から、およそ5年ほど付き合いがある。出会った当初、すでに私たちはプライベートでエッセイや詩を書いており、互いがどんな文章を書くのかを知っていた。(実は私の過去の文章にはたびたびこの知人が

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金縛りの代償

金縛りの代償

 「金縛り」、まさかこれを自分が体験するとは思いもよらなかった。

 とある木曜日の夕方。いつもより疲れを感じながら早めの帰宅。着替えて夕食を作ろう、お風呂に入ったら洗濯して…と考えながら、着替え終えたところで気づく。多分、私の頭と身体は限界を超えている、と。

正直、疲れで空腹どころではないし、今寝れば早朝には目が覚める。洗濯は朝にしようか…そう思って、夜7時の時点で電気を消した。

 目が覚め

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